軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10話 クロー派閥

「ヒソミさん、僕様ちゃん、欲しいマジックアイテムがあるんだぁ~」

「…………」

竜人帝国所属のマスター達が集まる部屋。

竜人帝国所属『マスター』の一人、セスタが、同じくヒソミと顔を合わせると、上目遣いでおねだりしてくる。

セスタは顔立ちこそ美少女だが、実際はちゃんとした男性だ。

そんなセスタは自身が『一見すると美少女』という容姿を理解して、それを武器として使ってくる。

故にヒソミに対して媚を売るように潤んだ瞳、甘えた声、上目遣いでお願いをしているのだ。

――ただし手の内をしっているヒソミに効果があるかどうかは話は別である。

ヒソミは細目をさらに細めて、

「……マジックアイテムが欲しいのは分かりましたから、その態度は止めて下さい。それで、どのようなマジックアイテムが欲しいのですか?」

「これなんだけど」

「ふむ……特別希少なマジックアイテムというわけではないのですね。ですが、中途半端な性能の上、必要な数も多いので逆に集めにくいですね。こんな物を何に使うつもりですか?」

「このマジックアイテムに僕様ちゃんの力で爆弾を付与。それを人種王国首都にばらまいて、『人種王国女王就任式典』でタイミングを計って爆発させようと思っているんだ」

セスタが無邪気に使用方法を答える。

無差別に爆破させればどれだけの人種が死ぬかなど彼は一切気にせず、何か愉快な悪戯をする気軽さすらあった。

一方、ヒソミ自身、どれだけ人種に犠牲が出るかなどこちらも気にせず、むしろ金銭と手間について面倒そうに唸る。

「ふむ、やりたいことは理解しましたが……。どうせ最終的に爆発させるならもっと集めやすく、値段の安い物にしては駄目ですかね?」

「別にそれでもいいよ。『人種王国女王就任式典』中に爆破させて、首都を混乱させるのが目的だもの。品物なんてばらまきやすい物なら、極論ゴミでも良いわけだし」

「ならよかった。それならこちらで適当な代物を準備しておきますね」

「それから、その他にも欲しいモノがあるんだけどなぁ~」

セスタが再度、上目遣いでヒソミを見上げる。

いい加減、ヒソミはげんなりした表情を作った。

いくら顔だけは美少女でも、相手が実際は男で内面や性格の悪さを知る相手に可愛子ぶられても色々キツイだけだ。

「分かりましたから。できるだけ準備はしますから……。それで何が欲しいのですか?」

「ちょっと人種が大勢、欲しいんだ」

「人種ですか? 今、『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義』宣言が出されたせいで、奴隷が出回らず高騰しているのですが……。どれぐらいの人数を集めればよろしいですかね?」

「最低でも50人以上、できれば100人は欲しいかな」

「それだけの人種をどうするつもりですか……」

ヒソミの指摘にセスタが笑顔で答える。

「万が一に備えた保険だよ、保険。場合によっては『巨塔の魔女』と直接やり合うかもしれないでしょ? だから一応準備はしておこうと思って。あっ、でももしそうなった場合、『巨塔の魔女』は爆殺してもいいんだよね?」

「もちろんです。我々の計画に『巨塔の魔女』は必要ありませんから」

この返答にセスタが笑顔で返答した。

「ならよかった。それじゃ荷物と人種をお願いね、ヒソミさん!」

彼はお願いをすませると、上機嫌で鼻歌交じりでさっさと部屋を出て行ってしまう。

残されたヒソミは頭が痛そうに片手で押さえる。

「やれやれ……久しぶりに自由気ままに振る舞えるからといって、浮かれていますね。別に彼の生死などわたくしには本来なら関係ないのですが、まだ我々の計画に必要な存在。一応、手を回しておいたほうがいいかもしれませんね」

セスタの浮かれ具合を見て、『足をすくわれそうだな』と感じたヒソミは、そのための保険として頼まれた商品・人種集めの他に、とある根回しをする計画をヒソミは考え始めたのだった。

☆ ☆ ☆

セスタはヒソミに予定通り、爆発物化させる荷物の手配を依頼する。

次に彼が向かったのは人種王国首都から離れた子爵領だ。

この子爵領のとある人物に、監禁されている人種王国第一王子クローから預かった手紙を渡した。手紙を渡した功績によって、セスタは反リリス派貴族達の名誉協力者としての地位を手に入れたのだ。

早い話が反体制派の仲間に加えてもらえたのである。

今日は再度、子爵側からクローへ渡す手紙の預かりと、事前にセスタが提案した『第一王子クロー救出作戦』の進捗についての報告に向かう。

約束の日時に従い勝手に子爵屋敷の執務室へと入り込む。

執務室にはソファーに座った男性2名が待ち構えていた。

セスタが気楽な声で挨拶をする。

「お待たせ、ゴドー子爵、ファイト子爵。もしかして待たせちゃった? だったらごめんねぇ」

「……いや、時間通りだセスタ殿。ただ予告通り、こちらの警備に一切引っかからず姿を現す貴殿に、部下の愚かさを嘆くべきか、貴殿のその手腕を讃えるべきか迷ってしまっただけだ」

ソファーに一人座り、酒を口にしていた金髪の若者が答える。

「ゴドーの言わんとすることも分からなく無いが……。まぁ大事の前の小事。気にしては始まらんと思うぞ」

金髪の向かい側ソファーに座り、同じく酒を口にしていた体格の良い若者が気持ちを切り替えるように指摘してきた。

どちらもクローと同年代の若者達で、彼の元側近だ。

リリスが女王に就任し、クローが『隔離塔』に監禁されているため、彼らは現在出世街道から外れてしまっている。

仮にクローがそのまま国王として即位していれば、彼らは国王の側近として栄達していたはずだった。

故に自分達の出世を妨害するリリスを敵視している派閥代表である。

「それでセスタ殿。貴殿が提案した作戦準備はどのようになっているのかな?」

金髪のゴドーが、セスタに席も勧めず進捗状況を尋ねた。

ゴドーは細身で絹を生地に使った貴族らしい豪華な衣服を身にまとっている。顔、体格も全体的に細く、鋭い瞳が印象的な若者だ。

側近時代、彼はクローの参謀役に収まっていた。クローが次期国王筆頭候補だった当時、ゴドーの家格は子爵と低いが、彼の下で実績を積み『次期宰相』の地位を狙っていたほどの野心家である。

クローが次期国王候補から強引に引きずり下ろされ、『隔離塔』に監禁された時は、自分の出世街道が閉ざされたことに強いショックを受けた。

しかし、現在は『ここで自分がクローを救い出せば、さらに大きな出世の足がかりになる』と前向きに考えるようになる。

この程度で抑えられるほどゴドーの出世欲は弱くない。

無事にクローを『隔離塔』から助け出し、人種王国国王の座につかせることが出来ればの話だが。

セスタは彼の問いに笑顔で答える。

「こちらの準備は無事に終わりそうだよ。そっちはどうなの?」

「うむ、まだ我々は嫡子でしかないが、兵士達への根回しは順調に進んでおる。民達の徴兵はさすがに時期尚早。作戦開始のギリギリまで堪え、売国売女リリスを油断させ、のちに徴兵。一気呵成に攻めるべきだろうな」

身長は約2mもあり、筋肉も付いて体格が良いため、貴族服よりも鎧を身にまとい馬に跨がって突撃する方が似合っている――そんな若者ファイトが告げる。

ちなみにゴドー、ファイト、どちらもセスタから『子爵』と呼ばれているが、正確にはその嫡男だ。

まだ子爵領を正式に継承している訳では無いが、長男のため時期が来れば当主になるのは確実だ。

故に自領兵士達も、無下には出来ずに居た。

ファイトが拳を握りしめ、怒りをあらわにする。

「できればすぐにでもクロー殿下をお救いしに向かいたいが……ッ!」

「ファイト」

「分かっているゴドー。勝手に突撃などせぬ。単独で突撃し、殿下をお救い出来ると考えるほど自惚れてはおらぬ」

今にも飛び出しそうな元同側近に、ゴドーが釘を刺すと、ファイトは拳の力を緩めず、怒りを吐き出すように息を荒く吐き出す。

ファイトはクローの護衛をしていた元側近だ。

将来的にクローが国王になった際は、人種王国軍事トップ、またはそれに近い地位に立つ可能性があった人物である。

見た目の体格通り、猪突猛進的性格をしており、『なんとかしてクロー殿下をお救いしなければ』と政治的流れも読めず、動いている人物だ。

仮にゴドーと手を組んでいなければ、自領の兵士をまとめてクローを救い出すため『隔離塔』へと既に突撃していただろう。

だが結果として意見を同じくする元側近同士、2人は手を組んでいるため今はファイトも表立って行動を起こしていない。故にリリスも処罰したくても表立っては手を出せずにいた。

そんな彼らの下にセスタが『隔離塔』のクローから手紙を預かり、ゴドー達と接触。

手紙の文字が見慣れたクローのモノだと一目で理解し、セスタと協力して『クロー第一王子救出作戦』を話し合い、手を結びあったのだ。

ゴドーが満足そうにうなずく。

「ではセスタ殿のお話を伺いつつ、『クロー第一王子救出作戦』の詳細を詰めましょうぞ」