軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9話 顔合わせ

外部から僕達を見守り護衛するメンバーにスズ、メラ(少女バージョン)が正式に加わった。

他、地上の任務に参加するメンバーとも顔合わせをするため、時間を作った。

『奈落』最下層執務室に、当日、ユメの護衛に参加するメンバーを集める。

僕、メイ、ナズナ、ネムム、ゴールドが、ユメの側に直接つき、祭りを一緒に見て回りながら周囲を警戒する予定だ。

スズ、メラ(少女バージョン)は僕達から距離を取り、護衛につくメンバーだ。

普段、身長が2mあるメラが、ユメ達と変わらない見た目年齢になった少女姿はインパクトがあるらしく、ゴールド、ネムムが驚きの表情を作っていた。

「これは驚きだな……。確かにメラ殿はキメラ故、自身の姿形を自由に作れると頭で理解はしているが、主に紹介をされていなければすぐに気付くことが出来ないぞ」

「自分も同じ感想です。ゴールドの指摘通り、どうしても普段のイメージが付いて周りますので……」

「けけけけけ! 当日はこの姿で声をかけることもあるだろうから、よろしく頼むぜ。ネムムおねえちゃん、ゴールドおじさま」

メラが悪戯が成功した少女のように笑う。

「ネムムおねえちゃん……」

「いや、我輩、『おじさま』と呼ばれるほど歳はとっておらぬのだが……」

ネムムは普段、威圧感があってレベル差があり、苦手意識のある相手が可愛らしい少女姿で『おねえちゃん』と呼ばれて、喜びより、戸惑いの方が大きいらしい。

混乱系の魔術攻撃でも受けたように片手で額を押さえ、目の前で起きている事象との摺り合わせをおこなおうとする。

ゴールドはゴールドで、メラ(少女バージョン)から『おじさま』呼ばわりされたのを気にして、抗議の声を上げ出す。

(ゴールドって『おじさま』と呼ばれたの気にしているけど、実際、年齢はいくつなんだろう?)

僕は胸中で疑問を抱き首を傾げる。

ゴールドは盾役というのもあるが、普段から落ち着いて視野が広い。

その言動のせいか、年齢が高いイメージがあった。

とはいえ、別にそれはたいした問題ではない。

問題は……スズ、メラ(少女バージョン)の護衛参戦に一人納得していない者がいた。

ナズナである。

彼女は不満そうに頬を膨らませて抗議の声をあげてくる。

「別にスズやメラが護衛に付かなくても、あたい一人でご主人様、妹様、全員守ってあげられるのに! プロメテウスで5人に分裂して、スズ達の役割を代わってもいいし!」

ナズナ的には、スズとメラの護衛参戦は、『自分の護衛能力を信用していない』と言外に指摘されていると思っているようだ。

結果、彼女は不満そうに頬を膨らませているのである。

ナズナにメイが冷静な声で釘を刺す。

「あくまでスズとメラの護衛は保険。別にナズナの力を軽視している訳ではありませんよ。むしろ、ナズナは『ユメ様の最後の盾』ぐらいの気概でいるように。貴女は力を極力抑えることを考えなさい」

「どうしてだよ、メイ! あたい、めっちゃ強いぞ! なのにどうしてご主人様や妹様に手を出そうとする悪い奴らを倒しちゃいけないんだよ!」

「貴女が強すぎるからです」

メイがきっぱりと断言する。

「ナズナは強すぎて、街中で貴女が下手に戦ったら、周囲に被害が出過ぎます。最悪、首都そのものが吹き飛ぶ可能性があるではないですか。もう少し手加減を覚えてください」

「うううぅ~ご主人様~、メイが~」

「ライト様に泣きついても、自身が精進しなければ意味がありませんよ。それと街中で5人に分裂しないように。目立って護衛には不向きですから」

メイが正論で次々に釘を刺す。

ナズナも自覚があるため反論できず、涙目で僕に訴えて来た。

メイが積極的にナズナの悪い点を指摘する。

僕だとどうしても彼女を甘やかしてしまうため、彼女の態度は頼もしくもあった。

僕は微苦笑を浮かべつつ、ナズナに声をかける。

「ナズナが強いのは僕達が一番理解しているよ。でも今回の目的はユメの護衛ではなく、お祭りを一緒に楽しむことだから。あくまで護衛云々は、本当にいざという時の保険の意味でしかないんだよ。もちろん危険が訪れたら、ナズナに頼ることもあるから、その時はお願いね?」

「……確かにご主人様の言う通り、妹様と一緒にお祭りを回るのが目的だった。ならまずはお祭りを一緒に楽しまないと駄目だな!」

ナズナは本来の目的を思い出したのか、涙目だった表情を一転、楽しげにニコニコ笑顔を作る。

彼女の気持ちの切り替えには本当に感心してしまう。

とりあえずナズナが納得した所で改めて、護衛についての話をする。

「護衛はこのメンバーでおこなうつもりだ。一応、地上に出る前に『奈落』最下層で、ユメも一緒に護衛の練習をするから。妖精メイド達にも協力してもらって、『どのような問題が起きたら、どのように動くのか』を実際にやってみようと考えている」

戦闘はともかく、護衛に関して経験が無い。

なので訓練は必須だろう。

僕は他にも細かい事柄を伝える。

全ては地上で安全にユメが行動し、お祭りを楽しむためである。

☆ ☆ ☆

――余談。

メラがライト達、護衛者と顔合わせをした夜。

アイスヒートは食堂の片隅で、落ち込み、暗い雰囲気を周囲にまき散らす。

「またご主人様のお役に立てない……。きっとアイスヒートの存在意義なんてないんだ……そうなんだ……」

「けけけけけ、そんなことないだろう。能力、外見的に護衛には向かなかっただけで、ご主人さまは別にそんなこと考えてないって」

周囲が見た目になれるためにも、今回の一件が終わるまでメラは『少女バージョン』の姿でいるつもりだ。

そのため事情を知らない第三者からすれば、年端もいかない少女にアイスヒートが慰められているように見えた。

もしくは……外見こそ似ていないが、駄目姉を慰める妹の構図だろうか。

メラの言葉にアイスヒートがよりダウナーになる。

「そうだ。アイスヒートの外見が悪いんだ。いっそ、目立つこの髪の毛を染めるか? でも、折角、ご主人様に顕現して頂いた外見を弄るなど不敬ではないか? いや、しかし……」

「けけけけけ! 落ち着け、アイスヒート、難しく考え込み過ぎだ。そのうち絶対にまたご主人さまのお役に立てる時がくるって」

「……本当にそう思うか? こんなダメダメなアイスヒートでもご主人様のお役に立てる日が再び来ると」

「けけけけ! 大丈夫、絶対に来る。だから、あんまり深く考えるな、な?」

メラは落ち込むアイスヒートを根気よく慰め続けた。

二人のやりとりは深夜遅くまで続いてしまうのだった。