軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6話 エリオへのお仕事依頼

とある村、朝。

訓練所の側にある井戸で、剣と盾の練習を終えた村の若者達が汗を流す。

「はぁー、冷たくて気持ちいいな」

「そうですね、エリオさん!」

「痛ててて……。汗が流せるのは気持ちいいっすけど。できればもう少し手加減して欲しいっすよ」

太陽が昇り始めた早朝に起き出し、村人達は畑の世話をする。

畑の世話を終えると、村の若者達が集まって元冒険者であるエリオの指導の下、剣と盾の基本的な扱い方を教わっていた。

別に村の若者達は冒険者や兵士、騎士を目指して訓練している訳では無い。

少しでもエリオから技術を学び、モンスター(メインはゴブリンなど)との戦闘で、怪我をしたり、死なないようにするのが狙いだ。

エリオは村を出てダンジョンで冒険者として活動していたこともあり、村で一番の戦闘技能を持っている。

故に教師役として抜擢されたのだ。

だが別にエリオも何かしらの剣術を修めた訳では無い。

ドワーフ街のダンジョンで知り合ったゴールドから、基礎的な教えを受けただけである。

それでも村の若者達が複数相手でも負けないほどの技量は持つ。

モンスターが跋扈する地上だけあり、戦闘能力を持つ男性は、一目置かれる傾向があった。

当然、異性からも注目される。

エリオが訓練をしている若者の一人が、水で濡らしたタオルで汗を拭いながら話を振る。

「そういえばミヤちゃんが、公国魔術学園に行っちゃって、入れ替わりに薬師ばあちゃんの孫が帰ってきたじゃないですか。その娘とエリオさんって付き合っているんですか?」

「いや、別に付き合っていないよ。ていうか、どうしてそんな話になるのさ」

「違うんですか? 最近、よく薬師ばあちゃんの家に出入りしているから、婿入りか、嫁入りが決まったってもっぱらの噂ですよ」

「あー、その噂、自分も聞いたっすわ。でも、エリオさん家の三軒隣の長女が諦めきれなくて、近々エリオさん争奪戦に参戦するとか」

「おれが聞いた話じゃ、村長の孫娘も参戦するって聞いたぞ」

「マジかよ! エリオさん、モテモテだな! さすが俺達の隊長だぜ!」

エリオが教えている若者達が半裸で、楽しげに騒ぎ出す。

当事者のエリオは心底げんなりした表情を作り、肩を落とした。

「全部、出鱈目な噂話だよ。薬師様にはミヤがお世話になっていたから、男手が必要な時に力を貸しているだけで、他の娘達からアピールなんてされたこと無いよ。ただの噂話だって」

「でもエリオ隊長マジ強いですから。彼女達ももしかしたらマジかもしれないですよ」

小さな村で、まともにモンスターと戦った経験もない村の若者達が相手だ。

元冒険者とはいえ、エリオは一時期はダンジョンに潜ってモンスターと戦い、日々の糧を得ていたプロである。

ゴールドに教わった技術を愚直に守って努力し続けてきたこともあり、技量は前に比べて上がっているが……。

彼は恋愛話以上に真面目な表情で否定する。

「俺なんて全然強くないよ。剣術の師匠であるゴールドさんと比べるのもおこがましいし、ダークさんになんて手も足も出ないよ」

これが嘘偽りないエリオの本音だ。

訓練して以前より強くなっているつもりだが、ゴールドやダークには触れることすらも出来ないだろうと簡単に想像できる。

もちろんゴールドがレベル5000、ダークはレベル9999なんて馬鹿げたレベルだということをエリオは知らない。

ただ僅かな時間しか接していないが、『自分は到底彼らに勝てない』と無意識に思ってしまうほどゴールド達の強さを肌身で感じているのだ。

とはいえ、村の若者達を圧倒する強さのエリオが、『手も足も出ない』なんて口にしたら、『その彼にも勝てない自分達はどれだけ弱いんだ』と思ってしまうかもしれない。

そのため、エリオは彼らをフォローするように言う。

「だから皆も努力すれば俺ぐらいにはすぐ強くなれるさ。そしたら村の娘達にも注目されるようになるんじゃないか」

「!? なるほど、さすがエリオさん!」

「お、おれ、隊長に一生ついて行きますよ!」

「自分が頑張ってエリオ隊長ぐらい強くなれば、み、ミヤちゃんとワンチャン……」

「ミヤが嫁に欲しかったら、ガチの戦闘で俺を倒してからにしろよ?」

実妹ミヤに恋慕する若者にエリオが、声を低くする。

訓練に熱を入れてもらうため、士気が上がりそうなことくらいは言うが、実妹ミヤとお近づきになりたいと願うなら話は別だ。

とはいえ声に力を込めている訳では無いため、皆、冗談だと分かっている。兄馬鹿なエリオの態度に、若者達は笑い声をあげた。

「エリオくん! こっちにいたのかい」

声に振り返ると、村に行商に来るヨールムが顔を出す。

ヨールムは小太りで中年の如何にも『商人』という出で立ちをしている。

「ヨールムさん、今日は行商に来る日でしたっけ?」

エリオが歩き寄ってくる顔見知りの行商人に首を傾げながら指摘する。

ヨールムは苦笑しながら否定した。

「いや、本来は時期的にまだ早いんだけど……。ちょっとエリオくんにお願いがあって……」

「お願いですか?」

「エリオくんは、『人種王国の女王就任式典』が開かれることを知っているかい?」

「はい、耳にはしていました」

リリス女王が大々的に『自分こそ人種王国の女王です』と宣伝するため、国をあげて開かれる式典のことだ。

当然、村々にも話を広めていた。

ヨールムが続ける。

「『人種王国女王就任式典』が開催する際、人種王国首都で大々的にお祭りが開催されるから、荷物運びの依頼と、自分も一儲けしようと首都へ向かうことになったんだけど……。ここまでは近くて安全度が高い街道だったから良いけど、さすがにここから首都まで自分一人だと厳しくて。よかったらまた護衛仕事をしてもらえないかな?」

(護衛、人種王国のお祭りか……)

エリオ的には『人種王国女王就任式典』なんて名目はどうでもよかった。

所詮、お偉い人達が自分達の目的で動いているだけだ。

だが、それに付随するお祭りには興味がある。

何より、

(ヨールムさんの仕事は払いが良いし、公国で頑張っているミヤへ少しは仕送りしてやることが出来るな)

時折、ミヤから手紙が届く。

公国魔術学園の授業料は奨学金でまかない、生活費は目をかけてくれる 先生(ドマス) から斡旋される写本や雑用、また冒険者として復帰し公国周辺で攻撃魔術の練習も兼ねて活動し稼いでいるとか。

生活は充実しているが、同室のミヤを『聖女』に祭り上げようとするクオーネに振り回され、大変だと愚痴&気安い友人が側に居る安堵感が混ざった手紙が送られてきていた。

そんな頑張っている妹に、少しでも楽をさせたいと兄エリオは考える。

故に答えは決まっていた。

「ヨールムさん、是非、お願いします」

こうしてエリオの『人種王国女王就任式典』参加が決定する。