軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無限ガチャコミックス1巻発売を記念して、連続更新の番外編1

if番外編――もしライト以外が 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』を押すことが出来たら、どのようなカードが出るのか?

☆ ☆ ☆

とある日、僕は自身の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』を自分以外に押させる実験をしてみた。

普段は『UR 2つ目の影(ダブル・シャドー) 』で作り出した僕が、コアのすぐ側でボタンを押し続けているが、他の者達がやった場合、どのような変化があるのか? もし僕が押す以上に良いカードが出るようなら、その者の『UR 2つ目の影(ダブル・シャドー) 』を作りだし、押させるという計画である。

「それじゃメイ、早速、押してみて」

「畏まりました。我がメイド道に懸けて全身全霊を持って押させて頂きます」

メイは恭しく、神聖な儀式をおこなうかのようにかなり気合いが入った返答をしてきた。

(あくまで実験のため、別にそこまで気負わなくてもいいのだけど……)

彼女のやる気を阻害する意味も無いため、僕は黙って成り行きを見守る。

メイは気合いを入れて『無限ガチャ』のボタンを押す。

部屋の床に魔方陣が浮かび上がる。

光が収束し、1枚のカードを生み出す。

メイは生み出されたカードを手に取った。

「SSRの茶器セットですね」

『SSR 高級茶器セット(魔術処理済み)』――この茶器でお茶を飲むと、魔術処理の力で飲む者を健康にする力を持つ。毒物に反応し、一部無毒化させることも出来る。

以上だ。

メイは一発目で、割とレア度が高いカードを引いた。

続いてアオユキが引く。

「にゃー!」

彼女も気合いを入れて、『無限ガチャ』のボタンを押した。

魔方陣が広がり、一枚のカードを生み出す。

アオユキがカードを手に取ると、嬉しそうに見せてくる。

「にゃ~」

「『R 猫人形』。アオユキにぴったりのカードだね」

『R 猫人形』――魔術的処理が施された猫の人形。洗濯をしなくても常に魔術の力で綺麗な状態を保っている。

レア度は高くないが、アオユキの趣味は猫グッズを集めること。

本人の希望がそのままカードになったような結果だ。

メイの『SSR 高級茶器セット(魔術処理済み)』もだが、本人達の適性、趣味に合致するカードのため、そのまま二人に進呈することになる。

メイとアオユキの二人ともに嬉しそうにカードを手にした。

続いてエリーがチャレンジする。

「では早速押させて頂きますわね」

エリーが押すと、魔方陣が出現。

1枚のカードを作り出す。

「『SSR トマト』?」

『?』

エリーがカード名を読み上げる。

レア度はメイと同じだが……。

僕はカードを受け取り、内容を確認するが。

「『トマト』ってしか書かれていないね……」

『SSR トマト』――トマト。

以上だ。

普通何かしら、詳しい説明文がかかれているはずなのだが……。

近い事例として『SSR 祈りのミサンガ』がある。

ガチャランクは高いが、『強い願いによって小さな奇跡を起こすアイテム』と言うやや抽象的な効果を持つマジックアイテムである。

ミヤに渡して使用されたが、文字通り『死に瀕する状況で祈って』初めて、『小さな奇跡』を起こした。

しかし、『SSR トマト』は『SSR 祈りのミサンガ』以上に意味不明だ。

「あのライト 神様(しんさま) ……いかがいたしましょうか……」

『奈落』最下層の頭脳であるエリーも、さすがに困惑して尋ねてくる。

僕は暫し考えて……。

「皆、このカードは見なかったことにしよう」

実際、顕現させたらどのようになるのか気になる所だが、意味不明過ぎて危険なのか、どうなのかも分からない。

『奈落』最下層を預かる主として、皆を危険にさらすようなマネは出来ない。

このカードは見なかったことにして管理倉庫を任せているトントンに厳重に封印してもらおう。

さて気を取り直して、ナズナへと向き直る。

「またせてごめんね、それじゃナズナも押してみて」

「待ってたぜ! あたい、ご主人様が押しているのを見て、ずっと押してみたかったんだ!」

ナズナは嬉しそうに声を上げながら『無限ガチャ』のボタンを押す。

今まで見ない大きな魔方陣が浮かび上がる。

「おおっ! なんか凄そうだぞ!?」

ナズナは自分が押したガチャが、良さげなことを理解し、興奮気味に声をあげた。

収束し1枚のカードが出現する。

『UR お菓子のお城』――お菓子のお城が出てくる。食用可。ただし食べ過ぎに注意されたし。

ナズナは嬉しそうにカード説明を読み上げる。

「すげぇ! お菓子のお城だって。それにURってあたいが一番良いカードが出たな!」

「おめでとうナズナ。でも、今ここで解放しちゃ駄目だよ?」

「分かっているぜ、ご主人様!」

さすがにないと思うが、狭い部屋(とはいえ、十分な広さと気品があり、家具なども選別して置かれている広間だが)で解放されたら、それだけで部屋が埋まりそうだ。

死ぬことは無いだろうが、多数のお菓子で潰されるのは正直避けたい。

メイ達のガチャ結果はこのような形になった。

☆ ☆ ☆

続いて、後日、また別の者達に『無限ガチャ』を引いてもらうことになった。

ネムムとゴールドだ。

以前、メイ達とガチャを引いた広間に二人を呼び出す。

ネムムが幸せそうな笑みを浮かべて、お礼を告げてきた。

「まさかライト様の『無限ガチャ』を自分が引ける時が来るとは……ッ! 誠に光栄の至りですよ!」

「むしろ僕の実験に付き合ってくれてありがとうね。それじゃ早速、無限ガチャを引いてみようか」

「はい、よろしくお願いいたします!」

ネムムは気合いを入れて、無限ガチャのボタンを押す。

魔方陣が床に姿を現し、一枚のカードを作り出した。

『SR マジック痺れ薬』――魔術的処理が施された高級痺れ薬。刃に塗っても良し、相手に飲ませても良し、人型だけではなく、動物やモンスターにも効果あり。長期保存も可能。

暗殺者のネムムらしいガチャカードが出てきた。

「さすがライト様の無限ガチャ! これほど便利な痺れ薬が出てくるとは!」

「これってそんなに凄い物なの?」

ネムムの手放しの賛辞に僕は首をかしげてしまう。

「はい。痺れ薬だけではなく、基本薬は動物には動物、モンスターにはモンスターにと調整が必要ですし、刃に塗ったり、飲ませたりもまた別の物を準備しないといけませんから。もちろん例外はありますが、そういうのを除くとこの薬は本当に便利だと思います。顕現後も長期保存可能と書かれてありますので」

暗殺者らしくネムムは毒薬に造詣が深い。

自身で毒物を調合したりもする。

そんな彼女が手放しで褒めるのなら、良いカードなのだろう。

続いてゴールドが無限ガチャを押す。

「実は我輩も押してみたいと思っておったのだ。さてどんなカードが出るか楽しみだな!」

ゴールドはフルフェイス越しでも分かるほどウキウキした態度で、無限ガチャのボタンを押す。

魔方陣が出現し、ネムムのように1枚のカードを作り出した。

ゴールドはカードを手に取り内容を読み上げる。

『SSR 黄金酒』――同量の黄金と同等の価値を持つお酒。味、香り、健康にも良いが、子供は飲酒不可。

「おおぉ! ネムムよりレア度が高いぞ! さすが我輩! しかも『黄金酒』とは。我輩にふさわしい酒だな」

ゴールドは心底満足そうにカードを手に何度もうなずく。

そんな彼にネムムは反論する。

「確かに自分のカードのレア度はSRと低いが、無限ガチャから出てくるカードは全てライト様の 恩恵(ギフト) から与えられる物! レア度の差はあっても優劣なんてあるはずないでしょ」

「確かにSRを出したネムムの言葉通り、レア度の差はあっても優劣の差は無いな。我輩はSSRを出したがな!」

「だから優劣はないって言っているでしょ!」

ゴールドの言葉に、ネムムが怒り出す。

彼女は彼のすねをガンガン蹴り出すが、ゴールドは高笑いを止めなかった。

(本当に二人は仲が良いな)

僕は思わず微笑ましい目で二人のやりとりを見守ってしまったのだった。

☆ ☆ ☆

最後にメラ、スズ、アイスヒートに無限ガチャを引いてもらうことになった。

三人が揃って大広間に姿を現す。

事前に説明を受けているため、わくわくと楽しげに顔を出す。

「ケケケケケケ! ご主人さまの無限ガチャを引かせて頂けるとのこと! 今日は楽しみにしておりました!」

「楽しみにしてくれて嬉しいよ。それじゃ早速メラから『無限ガチャ』を押してみようか」

「ケケケケケケ! では、ありがたく」

身長が約2mもあるメラが、袖で隠れた手で『無限ガチャ』のボタンを押す。

彼女が押すと、魔方陣が広がり、1枚のカードを生み出す。

メラがカードを手に取り、読み上げる。

『SR 大ウサギ』――全長が約2mの温厚なウサギ。性格もおとなしく、繁殖力も高く、肉質も良い。ペット、家畜どちらでも非常に優れている。

「ケケケケ! こりゃ美味そうなのが当たったな!」

「へぇ、随分可愛いカードが出てきたね」

メラの説明を聞いて、僕と彼女がほぼ同時にカードの印象を答えた。

互いに顔を見合わせて首を傾け合う。

確かに『SR 大ウサギ』は、ペット、家畜、どちらでも問題ないようだが……。

メラは一見すると身長が高い絶世の美女だが、姿形を自在に変えられるキメラの集合体である。

たとえば肉などを食べて欠損したキメラ部分を補うため、『SR 大ウサギ』に関して可愛いという感情より、食欲が優先されたのだろう。

種族的立ち位置の違いでここまで最初の感想に違いが出るのは面白いと思った。

次はスズだ。

『相方ガドンナかーどヲ引クカ楽シミダゼ』

「…………」

『相方モ、自分ガドノヨウナかーどヲ引クカ楽シミダソウデス』

スズの小声を彼女が手にしているロックが拾って僕へと伝えてくる。

僕は笑顔で返答する。

「僕もスズがどんなカードを引くか楽しみだよ。それじゃ、早速、押してみようか」

「(コク)」

彼女がうなずくと、『無限ガチャ』のボタンを押す。

魔方陣が床に姿を現し、1枚のカードを生み出した。

そのカードをスズが手に取ると――。

「!?」

「す、スズ?」

彼女はカードを目にした瞬間、爆発したのかと疑うほど耳の先まで真っ赤にする。

そのままカードを胸に押さえつけ、座り込んでしまった。

いったいどうしたというんだ?

「アー……らいと様、ドウモ相方ハ少々扇情的ナかーどヲ引イテシマッタヨウデ。ソレデ照レテ、ウズクマッテシマッタンデスヨ」

「!?」

スズが隠す前にロックも確認したらしく、あっさりと彼女がうずくまった理由を説明してくれた。

相方の裏切りにスズは顔を真っ赤にして『何で言うの!?』と言いたげな表情を作る。

そんなスズに対してロックも『いや、説明しないわけにもいかないだろう』と無言の雰囲気を漏らしていた。

僕は微苦笑しながら、スズを促す。

「スズが照れる気持ちも分かるけど、僕も昔はガチャを何度も押してその手のアイテムを何度も目にしているから。僕に気を遣わなくてもいいよ」

僕はスズに近づき、カードを受け取ろうと手を伸ばす。

スズは真っ赤な顔のまま、カードを差し出してきた。

『SSR 魅惑の下着』――女性が身につける扇情的な下着。この下着を身につけ意中の相手に迫れば、その扇情的魅力にあらがえず押し倒されること間違いなし。サイズは内包された魔術によって自在に変化する。

と、書かれてあった。

恥ずかしがり屋のスズにはちょっと辛いカードが出てしまったようだ。

僕は微苦笑を漏らしつつ、カードを『UR カードホルダー』へとしまう。

最後はアイスヒートだ。

場の空気を変えるため、大げさに振り返り、声をかける。

「最後はアイスヒートだね。どんなカードが出るか楽しみだよ」

「ありがとうございます。アイスヒートも、ご主人様の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』を引くことが出来る栄誉を賜り恐悦至極に存じます。この恩恵に恥じないカードを引けるよう身を引き締めて望む所存です」

アイスヒートも僕の意図を察して、やや過剰な返答を口にした。

「それじゃアイスヒート、早速、『無限ガチャ』を押してみようか」

「はい、よろしくお願いいたします」

地上ではないため、ごついガントレットを身に着けてはおらず、細い指でボタンを押す。

魔方陣が出現し、1枚のカードを――出さず霧散する。

『?』

その場にいる皆が首をかしげた。

いや、よく見るとカードではないが、一枚の紙切れが床に落ちていた。

僕が気付き拾う。

「『E はずれ』だって……」

「…………」

どうやらこれがアイスヒートの『無限ガチャ』結果らしい。

まさか『奈落』最下層にいながら エラー(E) を引くとは……。

というか、カードではなく紙切れが出るなんて初めて見たよ!

望まない扇情的なカードを引いて、羞恥心からその場に座り込んでしまったスズですらアイスヒートの結果を聞いて、同情的な視線を向けてしまう。

普段、楽しげに『ケケケケケ』と笑っているメラですら、いたたまれず笑い声をあげるどころか押し黙ってしまう。

アイスヒートはというと……。

正直、今は彼女の顔を見ることが出来ない。

ただ気配から、目の前の結果に固まってしまっているようだ。

とりあえずこうして、無事に皆が僕の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』を引いた場合の実験を終えることが出来たのだった。