軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編1 ヴァンパイア?

『奈落』最下層は、基本的に日の光が届かない。

なので僕の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードから出た魔術道具等で、廊下、部屋、訓練場などを真昼のように照らし出している。

だが長い間日の光を浴びないと体に悪いため、当時、まだ弱い頃の僕は、『無限ガチャ』カードから出た擬似的に日光を発するマジックアイテムを使用していた。

現在、ユメもそのマジックアイテムを使って、日光を浴びる時間を取っている。

その際、妖精メイド達の手を借りて、ユメはわざわざ『無限ガチャ』カードから出た日焼け止めをしっかりと塗ってから、疑似日光を浴びていた。

どれぐらいしっかりと塗っているかというと……耳の先、裏側、うなじは当然として指の先まで漏らさずだ。

思わず僕は指摘してしまう。

「別に1日中日光を浴びる訳じゃないんだから、そこまで念入りに塗らなくてもいいんじゃないか?」

この僕の疑問にユメは心底呆れた視線を向け、

「にーちゃん、女の子にそんなデリカシーがないことを言っていたら嫌われちゃうよ?」

「ご、ごめんなさい……」

妹に本気のトーンで指摘を受ける。

僕は思わず謝罪を口にしてしまう。

まだ僕の中ではユメは日焼け止めなど塗らず外で元気よく遊び回る子供のイメージだったが、実際はもう違うようだ。

意識を改めるのと、以後下手なことは言わないように気をつけようと僕は胸中で誓う。

そんなユメと今日は、『奈落』最下層の一室で疑似日光を浴びながらお茶会を開くことになった。

僕の方で時間が取れたのと、運良くユメとナズナの自由時間が重なったからだ。

『ならせっかくだから、疑似日光を浴びつつ、お茶会でも』という流れになったのである。

大部屋に茶会の席が妖精メイド達の手によって準備され、僕とユメ、ナズナが席に座りのんびりとお茶を楽しみつつ、互いに会話を楽しむ。

ユメは彼女が趣味でやっている植物園の話や魔術の勉強、礼儀作法など『奈落』最下層での生活を楽しく話してくれた。

ユメには色々苦労をかけたので、『奈落』最下層での生活を楽しんでくれているなら本当に嬉しい。

そんな彼女の生活を彩る友達としてナズナの功績も大きかった。

見た目の年齢が近く、気軽に話し合える存在としてユメとしてもナズナを慕っているようだ。

妖精メイドの中にも、ユメと外見年齢が近い少女はいるが……あくまで彼女たちの意識はメイドである。

主である僕の実妹と友情を育むのはなかなか難しいのだろう。

その点、ナズナは細かいことを気にしないのと、人懐っこい性格をしているためユメとはすぐに友達として仲良くなってくれた。

本当にありがたい存在である――が、ナズナについて不思議な点がいくつかあった。

別にたいした内容ではない。

素朴な疑問程度なのだが……。

僕はふと思わず、今回のお茶会の席でナズナに尋ねてしまう。

「ふと、思ったんだけど……ナズナってヴァンパイアなのに日光を浴びて良いの?」

「?」

お茶菓子のクッキーを両手に持ってむしゃむしゃ食べていたナズナが、僕の質問に首を捻る。

彼女は頭上に『?』を浮かべていた。

お茶を礼儀正しく飲んでいたユメが僕の言葉を補足してくれる。

「確かヴァンパイアって、ユメが読んだ本とかだと日光を浴びちゃ駄目だったはずだけど……。にーちゃんもそれが気になったんだよね?」

「うん、そうそう。ユメの言う通り」

「? あたい、日光を浴びちゃ駄目なの? むしろ健康にいいって聞いたけど……」

口の中にあったお茶菓子を飲み込んだ後、ナズナが返答した。

ヴァンパイアなのに健康を気にするのか……。

実際彼女は『SUR 真祖ヴァンパイア 騎士(ナイト) ナズナ レベル9999』という規格外な存在だ。

そんなナズナにとって日光など既に克服して、何の問題もないということなのだろう。

僕は興味を抱き、せっかくなのでナズナに尋ねる。

「ちなみにナズナって血を飲んだりするの?」

「ご主人様、血は飲み物じゃないぞ。まだ牛乳の方が美味しいぞ」

血は飲まないらしい。

牛乳は真っ白だが、成分的には血に近いと聞いたことがある。

質問を続ける。

「ニンニクは嫌いなの?」

「ニンニクっていうあのちょっと臭い野菜は、肉とか食べるときに少しあるとお腹が減る匂いがするから、むしろ好きだぞ。むしろ苦いピーマンの方が勘弁して欲しいかな」

ニンニクよりピーマンの方が嫌いらしい。

ナズナはピーマンの味を思い出し、『うげぇ』と吐くように口を開き、舌を出す。

エリーがこの光景を見たら『行儀が悪いですわ』と叱られていただろう。

今回お付きの妖精メイドもナズナの態度に一瞬眉をひそめた。

さらに質問を続ける。

「ならヴァンパイアに効果が高い神聖属性の攻撃魔術とかはやっぱり苦手なの?」

「神聖属性の攻撃魔術? あたい、無敵だから効かないぜ!」

ナズナは大きな胸を張り、自慢気に断言した。

ユメが無邪気に褒め称え拍手する。

「ナズナちゃん、すごい」

「ご主人様も、妹様も、他『奈落』のみんなも、あたいが守ってやるから安心するといいぞ!」

ユメに褒められたのが嬉しかったのか、自慢気に張った胸をさらに張って力強く断言する。

そんなナズナに対してユメは純粋に褒め称え、二人は楽しげに会話を重ねた。

一方、僕はというと……。

(ナズナはレベル9999で、規格外だからヴァンパイアの弱点を克服しているってことなのかな?)

彼女の発言に首を捻りつつ、自分なりに考察した答えを出したのだった。

☆ ☆ ☆

後日、エリーと話をする機会があり、流れで彼女にも似たような質問をした。

エリーは笑顔で答える。

「血は魔術の媒体として非常に優秀なので、わたくしとしては好きですわよ」

エリーが頬に手を当て、困ったように眉根を寄せた。

「日光を浴びるのはあまり得意ではありませんわ。わたくし、肌があまり強くないのですぐに焼けてしまうので……。あとニンニクのような香りが強い食材も苦手ですわ。食べた後もずっと匂い続けるのがちょっと……」

この話を聞いて、僕は『ナズナではなく、エリーこそがヴァンパイアっぽいのでは?』とつい考えてしまったのだった。