軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編2 ゴウの行方

現在『奈落』内に捕らえている、元魔人国側『ますたー』ミキの拘束は厳重だ。

『SSSR 呪いの首輪』を身につけさせてレベルダウン、魔力・身体能力低下、所持している 恩恵(ギフト) の制限など、様々な面で弱体化させられている。

この首輪は自身で外すことは不可能で、第三者の手によってでしか取り外せない。

さらに牢屋に入れられて、外に出るためにはまずレベル5000の攻撃に特化したゴーレムが24時間休むこと無く警戒している。

ゴーレム故に疲労することもないため、見張りには適していた。

また足止め役、場合によっては殺害も命じている。

次に牢屋の前にある扉の先には、妖精メイド×2を歩哨に立たせていた。

彼女達は適時交代している。

歩哨に立つ妖精メイド達には武装させて、『無限ガチャ』から出た『念話』、『閃光』、『粘着』カードを持たせていた。

『閃光』と『粘着』カードで足止めし、その間に『念話』で通報するというシステムである。

本当ならもっと強力なカードを持たせて彼女達の身の安全を図りたいが……。

万が一脱獄された場合は相手がカードを手にする可能性があるため、強力なカードを持たせることが出来ない。

さらに、妖精メイド達がそれでも逃亡者に殺害されそうになった場合、危機が通報されるマジックアイテムを手にしていた。

これでもかなり厳重だが、それでも警戒して『奈落』最下層には必ず一人レベル9999が残るように心がけている。

全ては『奈落』最下層にいる皆の安全のためだ。

☆ ☆ ☆

「デュフフフフ……」

「…………」

『ウワ、キッツ……』

『奈落』最下層一室。

この部屋に僕、スズ、ロック、本来地下牢に入れられているミキが一緒の席に座ってお茶会を開いていた。

今日はミキに対するお礼の茶会である。

前回、偽『C』の情報の提供をミキから受けた。

その情報提供に対して、ミキに『しっかりとお礼をする』と明言。しかし、ミキは『そこまでたいした情報提供ではないから大げさなお礼はいいから、 スズ(愛しい人) の趣味などを知りたい』と要求してきた。

ミキが遠慮したとはいえ、彼女から情報を得られた。

要求通り、スズの趣味等を教えて『はい、おしまい』では申し訳ない。

結果、地下牢から一時出してスズとのお茶会をセッティングしたのである。

本来なら妖精メイド達に給仕を頼むが、いざという時の安全を考えて、メイ、アイスヒートに代わりを頼む。

仮にミキが暴れたとしても、僕も居るため取り押さえるのは難しくない。

もちろんお礼だけで、彼女を牢屋から出して、お茶会の席に座らせた訳ではないが……。

ミキが『デュフフフフ……』と奇妙な笑い声をあげ、正面に座るスズを凝視する。

スズは蛇に睨まれた蛙のごとく、青い顔で視線を反らし、相方であるロックが彼女に変わってツッコミを入れていた。

ミキが蕩けた顔でスズに猫撫で声で話しかける。

「スズちゃんの趣味ってお人形さんを作ることなんだぁ。もう本当に可愛いよぉ! スズちゃんのような可愛い 娘(こ) にはぴったりの趣味だねぇ☆」

「…………」

『普通ニ褒メテイルハズナノニ、相方ニ鳥肌を立タセルノモ凄イヨナ……』

どうやらスズはミキに普通に話しかけられているにもかかわらず、鳥肌が立っているらしい。

(まぁ、さんざん変なことを言われて、詰め寄られているから当然といえば当然だけど……)

しかし、ロックのツッコミを無視して、ミキは心底幸せそうな笑顔でお茶に口をつける。

「ちょっと間抜けな魔人種達の情報を売っただけで、スズちゃんとお茶を楽しめるなんて、本当にミキィ幸せだよぉ! もう幸せ過ぎて怖いぐらいだぞぉ☆」

「……ッ!」

ミキが幸せそうにスズへとウィンク。

スズは涙目で心底気持ち悪そうに、椅子を物理的に引いてミキから距離を取り出す。

そんなスズの姿ですらミキ的には可愛らしく、ふにゃふにゃとした幸せ顔を作った。

二人の態度の落差に僕は思わず苦笑してしまう。

だが苦笑してばかりもいられない。

今回の茶会は偽『C』情報のお礼だが、他にも一件、彼女に問いたい内容が出来てしまった。その情報を引き出す場でもある。

僕は軽く咳払いして、ミキの注目を集めた。

「喜んでもらえて嬉しいよ。でもスズが怯えているから、あんまり変なことはしないでね?」

「もちろんだぞ☆ ミキィが愛しいスズちゃんに変なことするわけないよぉ~」

毎回のスズに対するミキの言動を考えると、『どの口が言っているんだ』とツッコミを入れたくなった。

しかし話が進まなくなるので流し、別件に対して口にする。

「今回はメインは偽『C』情報のお礼だけど、実は別件で尋ねたいことがあるんだ……」

「偽『C』以外で尋ねたいこと?」

ミキは可愛らしく小首をかしげた。

この別件について聞くにあたって、僕達側の事情を話す必要があるが……尋ねない訳にもいかない。

僕は割り切って、ミキへと内容を説明する。

「実は魔人国側『ますたー』のリーダーを務めるゴウを取り逃がしてしまって……。魔人国側以外に彼が行きそうな場所を知らないかな?」

メラの分身体が人種王国へと無断で侵入したゴウと戦闘をした。

その際、追跡用の『メラの血』を付着させて、『奈落』最強のナズナを対ゴウに派遣。

相手が魔人国側『ますたー』最強のゴウでも、ナズナには勝てず追い詰められ、最後は自爆してしまう。

目の前でまさか自爆するとは考えていなかったナズナは、捕まえられなかったショックから『メラ分身体の血』のことを忘れて、慌てて『奈落』最下層へと帰還し、涙目で報告してきた。

とは言っても『メラの分身体の血』も万能ではない。おおよその位置が分かる程度な上に、血なので洗浄等で当然落ちていく。さらに言えば、当時、僕は実兄であるエルスにーちゃんが自死しており、僕の落ち込む空気が『奈落』最下層全体に伝播し、エリーですら『どうやって励ませばいいか』と頭を悩ませていた。

そのため『メラ分身体の血』について調べたのは『ゴウ自爆』から1日経った後で、さすがに訝しんでナズナの報告を精査した結果――どうも自爆は偽装で、ゴウが生きている可能性が高いことが判明。

すぐに『メラ分身体の血』で追跡を試みるも、反応は消えてしまっていた。

魔人国側『ますたー』であるドクの研究所は、人種遺体、実験モンスター、危険な薬品等、全て綺麗に片付けて、物理的に潰し、埋め立てた。

また、魔人国側『ますたー』の一人ギラがトップを務めていた『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』の屋敷も解体済み。

魔人国首都王城は偽『C』が地下から粉々に吹き飛ばした。

他にゴウが行きそうな場所が思いつかず、ミキに尋ねることになったのだ。

僕の話を一通り聞いたミキは、しばし悩んだ後、素直に答える。

「うーん、ゴウちゃんの行きそうな場所ねぇ。魔人国に戻るとは考え辛いから、普通に考えればやっぱり竜人帝国側にいる『マスター』達を頼って行ったと思うわよぉ?」

「やっぱりそうなるか……」

僕達側も、取り逃がしたと知った後、情報を精査して同じ答えを出した。

『メラ分身体の血』の追跡が消えているのも、恐らく竜人帝国側『ますたー』の誰かの力を借りて消したのだろう。

だが疑問も残る。

「でも、ゴウってその竜人帝国側『ますたー』達と敵対している側のリーダーだったんだよね? そう簡単に彼が頼れるものなのかな?」

「確かにミキィ達は、竜人帝国側にいる『マスター』達とは敵対してたけど、別に殺し合うほど憎み合っているとかじゃないからぁ。顔を合わせればじゃれあいぐらいはするけどぉ。あくまで見解の相違みたいなぁ~。それにゴウちゃん見た目に反して思考は柔軟的だから、普通に竜人帝国側に亡命しているとミキィは思うなぁ」

このミキの返答で、おそらくそれが正解だろうと僕は納得の直感が告げた。

(竜人帝国側の『ますたー』か……)

以前、ミキから聞いた説明曰く『Cを敵視する集団』が竜人帝国側『ますたー』らしい。

ディアブロへの復讐は終えた。

次は竜人帝国に居るドラゴに対して復讐をおこなう予定だったため、ある意味ちょうど良かった、とも言えるのかもしれない。

「……ありがとう、とても参考になったよ。このお礼はまた別の形でするから」

「うふふふ、次はどんな風にスズちゃんと楽しく過ごせるのか楽しみだよぉ」

「…………」

ミキが心底本気で楽しそうに笑顔を作る。

情報収集のお礼とはいえ、次また彼女の相手をしなければならないスズは、心底嫌そうな表情を作った。

しかし、その態度もミキからすれば極上のご褒美らしく、彼女の喜びが崩れることはなかったのだった。