軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36話 ディアブロの狼狽

「ど、どうしてこんなことになったのですかー……」

元『種族の集い』メンバーであるディアブロは、自身の領地屋敷の執務室で頭を抱える。

なぜ彼は頭を抱えているのか?

魔人国と敵対していた筈の『巨塔の魔女』が、暫定ではあるだろうが、魔人国のトップに立ってしまったからだ。

彼女は『ヴォロス第一王子直筆の委任状』という金看板を持ち、さらに首都に突然姿を現した 偽『C』(怪物) を倒してしまった。

偽『C』(怪物) によって魔人国王城は吹き飛び、首都にも相応の被害が出てしまう。

『巨塔の魔女』は私財を投じて、人種、魔人種関係なく支援をおこなった。

お陰で人種だけではなく、魔人種の中でも『巨塔の魔女様を崇めよう』という者達まで出てきた。

家を壊され、傷つき、食べる物すら被害を受けて無くなった。

そんな時、無償で傷を癒し、食料や衣類支援、建物の復旧作業などを率先してやってくれる者が現れたら、ごく一部でも『救ってくれたその対象を崇める』まで行ってしまうのは仕方がない。

さらに魔女は、『ヴォロス第一王子直筆の委任状』という金看板と武力を背景に、『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義』を掲げ、次々に国内の人種奴隷を解放して回り出す。

最初、一部魔人国貴族が反発したが……。

反発した貴族領地を100匹以上のドラゴンが上空を飛び交い威嚇。

『逆らうなら、遠慮無く滅ぼす』と圧力をかけられてしまう。

反発していた貴族達も『まさか本気ではないだろう』と最初は高をくくっていたが――『巨塔の魔女』は見せしめのため、反発していたとある魔人種貴族の1人の屋敷をドラゴンブレスの一斉放射で消し飛ばす。

屋敷があった場所には、クレーターが出来て、死体の欠片すら出てこなかった。

魔人種貴族の一人を文字通り欠片も残さず吹き飛ばした後、その領地に存在する人種奴隷達だけ『巨塔』に回収。

残された領地は治める貴族が死亡したため、『誰が今後領地を治めるのか』で揉めて、荒れ始めているとか。

本来なら、魔人国国王が他貴族領地に加えたり、新しく領主を任命するのだが……現在、国王は死亡、第一王子ヴォロスは『巨塔の魔女』に 偽『C』(怪物) 退治を依頼後、どこかへ逃げてしまったらしい。

ヴォロスの委任状は、 偽『C』(怪物) を倒す代わりに、魔人国を一時取り仕切る権利(委任状)をヴォロス第一王子から正式に与えられたと、『巨塔の魔女』が周囲に説明。

その後、第一王子である彼が部下を連れて逃げ去ったので、魔女ですらどこに向かったのか知らないことになっている。

偽『C』(怪物) が暴れ回っている最中、ヴォロスが一部部下を連れて首都から逃げ出している姿を兵士達が目撃している。

実際は、『奈落』最下層より深い地下に居るのだが……。

話を戻す。

『巨塔の魔女』に反発していた貴族達も、見せしめ以後、誰も魔女に逆らおうという者はいなくなる。

誰だって自分の身が可愛い。

当然、この情報はディアブロの耳に入りやすいように積極的に流していた。

お陰でライト達の予想通りディアブロは頭を痛いほど抱える。

「ミーも無理に『巨塔の魔女』と争うつもりはありませんがー。情報を整理する限り、ミーにとって『巨塔の魔女』は最悪の存在の可能性が高いですよー」

ディアブロがシックス会議に出席した際、仮面の少年を『ライトか』と疑った。

その後調査をしたが、いまいち証拠を掴むことは出来なかった。

さらに『ライトが生存しているかも』と、元『種族の集い』メンバー達に連絡を取った。

別に元メンバー達を心配して情報を伝えた訳ではない。

もしもの場合、自分の代わりに責任を負わせる相手を確保しようとしていただけだ。

しかし、自分とドラゴ以外、失踪済みという情報が入ってきたのだ。

「『ライト』っぽい存在がシックス公国会議に現れ、ミーとドラゴ以外、皆が失踪しているなんて……。いくらなんでも出来すぎですよー……」

さらにライトらしき冒険者が活動を始めた時期と『巨塔の魔女』が姿を現した時期が近く、なぜかその後、ガルー、サーシャ、ナーノが姿を消しているのだ。

『巨塔の魔女』がエルフ女王国、獣人連合国を潰し、人種王国と繋がって、『 人種(ヒューマン) 絶対主義』を広めた時期と重なるように……。

「もしかしたらライトは『奈落』で『巨塔の魔女』と出会い、九死に一生を得て生き延びたー。そして彼女の寵愛を受けて、ミー達に復讐をして回っているー?」

『馬鹿らしい』と一蹴することは簡単だが、そう考えると色々辻褄があってしまう。

「ガルー達へ復讐するついでに各国を潰して回っている……いえ、さすがにそれはありえませんよねー」

元『種族の集い』メンバーに復讐するのが本命で、各国を蹂躙しているのはオマケでしかない――この考えはいくらなんでも荒唐無稽過ぎて、ディアブロ自身、頭を振って忘れる。

問題は……。

「そんな『巨塔の魔女』がミーの領地視察に来ることですよー」

国王陛下代理人である魔女が、ディアブロの領地を視察したいという先触れが来ていることだ。

拒絶は出来ない。

もし嫌がって拒否すれば、見せしめにされた貴族のように100匹のドラゴン達によって屋敷ごとディアブロが吹き飛ばされてしまう。

ディアブロのレベルは400前後だ。

冒険者時代から、特に変化はない。

貴族である自分がこれ以上強くなる意味を見いだせなくて、レベル上げなどはしていなかった。

なので、レベル400前後のディアブロでは、ドラゴン×100匹のブレスを浴びせられたら死ぬしかない。

「預けた兵士達も誰一人戻って来ていませんから、戦力不足で戦う選択肢もありえませんしー……」

魔人国第一王子ヴォロス経由で、徴兵された自領の兵士達がドク&ゴウに預けられた。

だが予定期日を過ぎても誰1人帰還しておらず、さらにヴォロスが失踪している以上、誰に問いただせばいいかすら分からず宙ぶらりんになっている状態だ。

とはいえ、たとえその兵士達が居てもドラゴン×100匹が相手では何の意味もないが。

「ガルー達のように次はミーに復讐する番、とかではありませんよねー?」

あくまでライトらしき冒険者が、『巨塔の魔女』の寵愛を受けて元『種族の集い』メンバーに復讐して回っているというのはディアブロが集めた情報を繋ぎ合わせ、イメージの翼を広げた上での想像でしかない。

証拠は一切無いのだ。

「だいたい、 ヒューマン(劣等種) のライトが、怪我を負った上、『奈落』のどこかに転移して生き延びるなど、現実的に考えればありえませんよー。ど、どうせガルー達が失踪したのも、あいつらが無能で、身の丈に合わない何かを望んで失敗して、勝手に命を落としたか、失踪したに違いませんー。そうに違いありませんよー!」

ディアブロはまるで自分自身に言い聞かせるように告げる。

「と、とにかく視察に来る『巨塔の魔女』を精一杯歓迎しなければ。いくら魔女とはいえ、所詮は ヒューマン(劣等種) 。 ヒューマン(劣等種) が普段口に出来ないような酒、食事を用意して、 ヒューマン(劣等種) など足下に及ばない美男子を集めて宛えば魔女の機嫌を取るなど容易い筈ですよー。一応、魔女がそっちの趣味の可能性も考慮して女、子供も用意しておいた方がいいですかねー?」

ディアブロは視察に来る『巨塔の魔女』の機嫌を取るため、精一杯のもてなしを考え、実行するための指示出しに向かった。

彼女の来訪によって、自身の過去と向き合うことになるとも知らずにだ。