軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32話 魔人国第一王子ヴォロスの主張

偽『C』からは結局、ろくな情報を得ることが出来なかった。

しかし、下手に暴れて被害が出るより、『無事に倒すことが出来た』と前向きに考えるべきだろう。

僕達の意識は偽『C』から、スズが捕らえてきた魔人国第一王子ヴォロスへと移る。

魔人国『ますたー』であるミキの話を信じるなら、偽『C』の封印を解いたのは彼だろう。

そして、暴走する偽『C』を放置して真っ先に逃げ出したのをエリーが発見。情報を引き出すため、スズに命じて捕らえさせた。

ヴォロスと一緒に捕らえた者達も『奈落』最下層へと輸送済みだ。

姿を見られた以上、放置は出来ない。

わざわざヴォロスを地下決闘場に連れてきたのは、偽『C』が倒されたのをその目で確認させて、心を折るため。そしてエリーが記憶を読み報告するのではなく、彼の口から直接聞きたいことがあったため、この場に連れてきたのだ。

スズの力――魔弾によって、ヴォロスは体が痺れてまともに口を利くことさえ出来なかった。

スズが痺れを解除すると、床に這い蹲っていたヴォロスは体を起こし、立ち上がると僕達から慌てて距離を取る。

距離を取り終えると、濁流の如く叫び出す。

「き、貴様ら何者だ! 我を誰と心得る! 魔人国第一王子だぞ! し、しかも『C』を倒すなど……ありえぬ!」

「いいえ、違いますわ。彼は『C』とやらではありませんの。ただレベルの高い『ますたー』の1人ですわ」

エリーが代表して答える。

これに対してヴォロスはすぐに気付いた。

「その声、『巨塔の魔女』か!? 魔女が倒したのか……もしかして『巨塔の魔女』こそが『C』だったのか!?」

ヴォロスは体が痺れて身動き出来なかったが、耳は聞こえていたはずだ。

アオユキが偽『C』を倒したと彼も聞いているはずなのに……どうしてそんな結論を出すのだろう?

エリーは顔を隠していたとはいえ、シックス公国会議でヴォロスは直接言葉を交わしている。

そのためすぐに気付いたのだろうが、彼の早計な勘違いにエリーは若干頭が痛そうにこめかみを押さえる。

「わたくしは確かに『巨塔の魔女』ですが、『C』ではありませんの。それにわたくしのことなんてどうでもいいですの」

「我を、魔人国をどうするつもりだ、魔女め!」

ヴォロスは話を聞いてはいるのだろうが、理解せず、鋭い視線をエリーへと向けた。

彼のその態度にエリーは今度こそ苛立ち、殺気を叩きつけそうになる。

レベル9999のエリーが本気の殺意を叩きつけたら、脆弱なヴォロスは心臓を止めかねない。僕は軽く手を上げて、エリーを下げ、前に出る。

彼には聞きたいことがあった。

エリーが記憶を読み、書類形式等で提出され知るのでは足りない。

彼に直接『なぜドクの暴走を許し、人種に対してそこまで残酷になれるのか』と問い質したかった。

病気がちだった魔人王国国王に代わって、魔人国を実際に治めていたのはヴォロス本人だということは把握済みだ。

魔人国『ますたー』であるドクの人種実験場に運営資金を出していたのも、ドクに人種奴隷や魔術道具等も与える許可を出したのも彼だ。

故に彼が喋った内容如何によって程度は変わるが、ヴォロスへは過酷な処罰が下されるだろう。

冒険者『ダーク』ではなくライトとしてこの場に立っているのも、ドクの所業について、ライトとして問いつめたかったからだ。

「魔人国第一王子ヴォロス、貴様に聞きたい――」

「もう我々に魔女に対抗する術は残されていない……ッ」

しかし、僕の言葉など一切無視して、ヴォロスが心底悔しげに口を開く。

さすがに彼の態度にメイ、アオユキ、エリー、スズも苛立つが、ヴォロスは一切気にとめず悲劇のヒロインの如く叫び出す。

「魔人国はこのままエルフ女王国のように魔女の奴隷国家に落ちるのだろう……だが! 『巨塔の魔女』よ! 我の体を好きに出来ても心までは自由にできん! 魔人国第一王子の矜持は決して貴様ら低俗な ヒューマン(劣等種) になど折れないと知るがいい!」

『……?』

ヴォロスは悲劇の舞台に臨む舞台役者のように、真面目な表情で断言する。

断言するのは良いが……。

(彼は一体何を言っているんだ?)

意味不明過ぎてすぐには反応できず固まってしまう。

僕だけではない。

先程までヴォロスの態度に苛立っていたメイ、アオユキ、エリー、スズですら意味不明な発言に『?』を頭上に浮かべ固まってしまう。

僕達の困惑に気付き、彼自身が伝えたい内容が僕達に伝わっていないことを理解する。

『これだから頭の悪い ヒューマン(劣等種) は……』と舌打ちして、ヴォロスが詳細な説明を始めた。

彼曰く――。

・もう魔人国は魔女に抵抗する力は無い。植民地化は避けられない。

・植民地化する際、もっとも効率的な方法はトップ同士の婚姻。つまり、ヴォロス自身と『巨塔の魔女』の婚姻だ。

・国家敗北の責として、魔女と結婚しエルフ女王国のように『巨塔』の植民地国家の主になるのは吝かではないが、自分の心はまだ折れていない。

・魔女と子供を作るのはしかたないが、心から魔女を愛するなんて思わないで欲しい。いくら魔女の素顔が美少女で、体つきも ヒューマン(劣等種) にはあり得ないほど美しくても、所詮は ヒューマン(劣等種) 。自分は魔人国王族のため、絶対に心まで屈しない、魔女は愛すことは出来ない。自分の心は自由に出来ないと知れ。それがせめてもの抵抗だ。

以上が、ヴォロスの主張だった。

正直、予想のななめ上過ぎるその馬鹿らしい内容に、僕を含めたその場に居る全員が呆れ顔を作ってしまう。