作品タイトル不明
28話 アオユキ達vs偽『C』3
「!?」
アオユキは偽『C』を固まった溶岩から引っ張り出し、鎖で拘束するため『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を伸ばす。
無事、偽『C』に首輪を填めるが……すぐに彼から離し、引っ込めてしまった。
アオユキが青い顔で驚きの表情を作る。
『ワオン?』
フェンリルが『え? どうかしたんですか』と言いたげに小首を傾げた。
他ケルベロス、 不死鳥(フェニックス) も心配そうな視線を向けるが、配下の気遣いにも反応せず、気持ち悪そうに口元を抑える。
(――偽『C』に首輪を嵌めた瞬間、彼の憎悪が鎖を通して流れ込んできた。これほどの狂気を内に秘めているなんて……)
憎い、憎い、憎い、憎い、憎い――。
グツグツと滾る溶岩より熱く、黒くどろりとした全てを飲み欲しそうな狂気的感情。
結果、反射的に『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を引っ込めてしまったのだ。
「b;あhわgw!」
偽『C』が固まった溶岩から自力で脱出しようとする。
ダメージを負っているが、そんなことは関係ないとばかりに、未だ狂い暴れようとしていた。
『ピィ!』
未だ青い顔で固まってしまっている アオユキ(ご主人様) を守るため、 不死鳥(フェニックス) の掛け声で他配下達が、彼女を護るため前に出ようとするが、
「…………」
アオユキが軽く手を上げて、それを止める。
彼女は再び『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』で偽『C』に首輪を嵌める。
先程の再現で、鎖を通して偽『C』から狂いそうになるほどの狂気が伝わってくる。だが、アオユキは精神力を振り絞り、押し寄せる狂気を押さえつけた。
「――アオユキの主に対する忠誠心より、貴様の憎悪の方が上? ありえない」
アオユキは先程、反射的に『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を偽『C』の首から離してしまった。
その事実が、彼女の『ライトに対する忠誠心こそが全て』という思いに傷を付ける。
アオユキはライトに対して絶対の忠誠心を捧げていた。
彼の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードから顕現されたというのもあるが、初めて出会った時、ライトは心に傷を負っていた。
自身を顕現させてくれた神であるライトの傷を癒したい。彼を支えてあげたいと心の底から願う。
故にライトが無意識に実妹の姿をアオユキ自身に求めるなら、疑似妹でもペット枠として振る舞うのも厭わない。
ライトの役に立つならどんなことでも出来る。『奈落』メンバー達が相手でも、命令さえあれば、表情を変えずに殺すことも出来るし、アオユキ自身の『死』を望むなら、迷い無く命を断てるほどの忠誠心を抱いていた。
にもかかわらず、アオユキはライトから拘束を命令されていたのに、偽『C』の狂気に触れたからと言って即座に首輪を離してしまったのだ。
彼女のライトに対する絶対的忠誠心への誇り、プライドに傷を付けるのには十分な出来事だ。
配下のフェンリル達が、後退るほどの怒りを露わにする。
「――アオユキの忠誠心に泥を塗った貴様を許さない!」
「!?」
アオユキはレベル9999の腕力で、力尽くで偽『C』を冷え固まった溶岩から引っこ抜く。
左腕に鎖を巻き付け、空いた右腕で引っこ抜き迫る偽『C』をアオユキが怒りを露わに殴り飛ばす。
偽『C』も咄嗟にガードするが、構わずその上から殴り飛ばし、再度壁まで叩きつけた。
暴走した馬車が勢いよく壁にぶつかった時よりも、酷い音が響く。
だが、アオユキの怒りはその程度では終わらない。
「――まだ終わりじゃない」
じゃらじゃらと鳴る『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を引っ張り、再度、偽『C』を空中へと引っ張りあげる。
次は左腕を勢いよく下げる事で、偽『C』を地面へと叩きつけた。
一見すると、アオユキが有利に見える。
実際は『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を通して、偽『C』の憎悪、狂気が未だに彼女へと流れ続けていた。
気を抜けば、偽『C』の狂気に飲まれて発狂してしまうほど強烈な憎しみだ。
賢い選択をするなら、わざわざ偽『C』を拘束できるほど弱らせるため、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』で繋がる必要はない。
配下のフェンリル達と協力して遠距離から削ればいいだけだ。
しかし、アオユキは『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』で繋がり、直接の打撃で弱らせることを選択。
ここで『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を引いたら、偽『C』の憎悪が、自身のライトに対する忠誠心より上だと認めてしまうことになる。
それだけはアオユキのプライド的に許せないため、あえて『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』で繋がり攻撃しているのだ。
「ぃあw039うt!」
「……ッ!」
偽『C』も意図を理解しているのか、地面に叩きつけられても元気よく立ち上がり、鎖から伝わっていく憎悪を強める。
首に嵌っている首輪から伸びる鎖を左手で掴むと、黒く侵食。
より強い憎悪と狂気がアオユキへと流れ込む。
アオユキが奥歯を噛みしめる。
その姿を見て偽『C』が、『自分の憎しみと狂気が上』と笑う。
「――この程度の狂気で屈服させられると本気で思っているのか? 魂まで捧げているアオユキの忠誠心を貴様程度の狂気で凌駕などできないと知れ!」
アオユキは瞳に炎を燃やすように告げた。
偽『C』にも負けない狂気じみた忠誠心と2人の浸食しあう内なる戦いに、アオユキ配下であるフェンリル達は思わず後退る。
アオユキは鎖を引っ張らず、今度は自ら地面を蹴り偽『C』に接近。
右拳を固めて、直接ぶん殴りに向かったのだ。
偽『C』が右腕ランスを構えて、迎え撃つ。
「pqqp@、w4!」
「――五月蠅い、黙れ」
偽『C』の右腕ランスをまるで猫のように身軽にひらりと回避。間合いを詰めて鋭く拳を叩き込む。
偽『C』が右腕ランスを横凪ぎ。
アオユキが屈み回避して、偽『C』のボディに拳を叩き込む。
じゃらじゃらと鎖が、舞踏演奏のように鳴る。
偽『C』が左手で使った鎖を引っ張り、アオユキの態勢を崩しにかかった。
彼女は偽『C』の引っ張る鎖に逆らわず体を任せる。
偽『C』が合わせて蹴りを叩き込もうと振り抜くが、
「にゃッ」
軽い調子でアオユキは偽『C』の蹴りを足場に空中へと踊り出る。
自由落下を味方に付けて今度は彼女が蹴りを放つ。
偽『C』はその一撃をギリギリで防ぐことに成功した。
レベル9999の狂気的者同士の潰し合い。
アオユキ、偽『C』の戦いはモンスターでも、怪物でもない、一個の獣同士の潰し合いのようだった。