作品タイトル不明
27話 アオユキ達vs偽『C』2
「――ご苦労様。貴様の手の内は読めた。もう十分」
配下モンスターを使って偽『C』の手の内を探っていたアオユキは、ある程度、相手の手の内を理解したと判断して姿を現す。
これ以上、配下モンスター達に任せていたら、被害が大きくなりかねないというのもあるが。
姿を現したと同時に、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』で偽『C』を横合いから殴打。
予想外からの攻撃に偽『C』は反応できず、壁までぶっ飛び、めり込む。
壁は衝撃に耐えきれず、ガラガラと崩壊して埋もれてしまう。
アオユキはその姿に冷たい目を向けていたが、途中で未だ動きがおかしい配下モンスター達に向けてカードを取り出す。
「――『SSSR 高位異常状態解除』、 解放(リリース) 」
冷淡な声で 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カード、『SSSR 高位異常状態解除』を 解放(リリース) 。
『SSSR 高位異常状態解除』はどのような異常状態でも全てを解除する。毒、睡眠、石化、呪いなど――ただし、このカードより強力なモノは消せない。
カードの力によって狂犬病にかかった野犬のように隣の頭に噛みつき、暴れていたケルベロス(真ん中の頭)が、
『わふん?』
左頭に噛みつくのを止めて、『自分、今まで何をしていたんだ』と言いたげなきょとんとした表情を作る。
『ピィッ!』
壁にぶつかり床に墜ちてもがいていた 不死鳥(フェニックス) も、まるで今までのことが無かったかの如く、即座に落ち着き立ち直った。
「mい@がwhがうぃh!」
「…………」
ほぼ同時に偽『C』が、埋もれた瓦礫を内側から弾き飛ばし、『ダメージなどない』と言いたげに姿を現す。
アオユキはその姿を淡々と観察する。
「――やはり予想通り。目玉が消えている」
「xうvfw76gh!」
アオユキの指摘など一切気にせず、偽『C』は彼女に狙いを定め、右腕のランスを武器に突撃してくる――が、
『アオォン!』
『ワオン!』
『ピィイィ!』
レベル9000フェンリル、レベル8000ケルベロス、レベル8500 不死鳥(フェニックス) の三重攻撃を叩き込む。
氷柱が無数に作られ、衝撃を槍状にして見えない貫通属性を持たせ、炎の羽根が舞い散ると一斉に偽『C』へと殺到する。
3種の属性攻撃が文字通り雨霰と偽『C』へと叩き込まれた。
それでもなんとかアオユキに近付こうと、偽『C』は藻掻くが――三重攻撃を全て潜り抜けた『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』が偽『C』へと向かう。
配下の攻撃全てについてアオユキが指示を出し、コントロールしているからこそ出来る芸当だ。
偽『C』も最初と違って、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を持っているランスでガードするが、完全に防ぎ切れる訳ではない。
ざりざりと床を削り、勢いを殺されて足を止めてしまう。
その隙を逃すほどアオユキ達は甘くない。
3種の属性攻撃を途切れることなく偽『C』へと直撃させ続ける。
あまりに連続で攻撃が続けられているため、偽『C』も守勢になり続けるしかない。
ヤスリで削るように偽『C』の黒霧の鎧が削られていく。
その姿をアオユキは油断せず、冷静に観察していた。
彼女は分析のためか、1人呟く。
「――目玉は指標。黒い霧で作られたモノに刺されると、そこから相手の生命力を吸い出す。そして目玉を作り出す。目玉の数が多ければ多いほど、『周囲を狂わせる力』が強まる」
アオユキは最初、配下モンスター達を戦わせ観察していた。
その際、黒い霧の槍、攻撃を受けて刺された配下達が次々に挙動がおかしくなりだした。
なので『あの黒い霧に刺されたら暴走、狂ってしまうのか』と考えたが、ケルベロスの他の頭は症状を出していない。
また配下モンスター達に刺さった黒い霧から妙な気配が流れていた。
その気配は配下のモンスターから、偽『C』へと流れ込み、体に目玉を一つ作り出す。
さらに 不死鳥(フェニックス) に黒い針が刺さった後、気配が再び偽『C』へと流れて新しい目玉を作り出した。
新しい目玉が出来ると、 不死鳥(フェニックス) は狂いだし、壁に激突。床に落ちて藻掻き出す。
その姿を見て確信する。
どうやら黒い霧に刺されると生命力的なモノを吸い出され、偽『C』の体に目玉を作る。
その目玉の数によって『周囲を狂わせる力』が強まると。
最初、目玉がゼロの時点で一般魔人種兵士が、偽『C』の影響によって狂って叫んでいた。
しかし、その程度ならレベル8000以上の配下には効果を及ぼさないが、目玉が一つ、二つと出来るたびにそのレベルでも狂わせることが出来るらしい。
だから最初にレベル8000のケルベロスが苦しみだし、二つ目でレベル8500の 不死鳥(フェニックス) に影響を与え、レベル9000のフェンリルは正常な態度を取っていたのだ。
「――逆に言えば黒い霧に刺されず、目玉を減らせば脅威にはならない。たとえ混乱させられてもこちらには解除方法がある。後は捕らえられるほど弱らせられるまで痛めつければいいだけ」
「@lh:hy!」
ガリガリと全身に纏った黒い霧を剥がされ、偽『C』にダメージが蓄積する。
偽『C』は守勢になり続けると負けると考えたのか、馬鹿正直にアオユキを狙って正面から突撃。
『最初に配下のフェンリル達を排除して』など、頭を回すこともなく、ただ馬鹿正直にアオユキを狙ってくる。
「――狂っているから、冷静な状況判断が出来ない。いくらレベルが高くても対処は容易い。その辺のゴブリンと変わらない」
アオユキなりの皮肉にも、偽『C』は反応せず、ただがむしゃらに彼女を狙って突撃するだけ。
アオユキはレベル9999の突撃を前にしても、冷静さを失わない。
「――合わせて」
配下に指示を出しつつ、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を振るう。
狙いは偽『C』の足だ。
足に『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』が繋がれて、偽『C』がその場に転ぶ。転べば当然、それ以上前に進むことは出来ない上、大きな隙となる。
アオユキの指示に配下であるフェンリル達が、攻撃を合わせた。
『アオォン!』
『ピィイィ!』
『ワオン!』
ケルベロスは三頭の衝撃を一本に合わせた必殺の一撃を叩き込み決闘場の床にクレーターを作り出す。
そのクレーターを埋める用に 不死鳥(フェニックス) が炎で地面を融かし、マグマを作り出す。
フェンリルが巨大な氷塊を叩き込み蓋をする。
内部では下は溶岩、上は氷結、内部は蒸し焼き状態という地獄になっているだろう。
通常の生物なら、その時点で生命を断っているが……。
約10分。
「――もういい?」
十分にダメージを与えて弱らせたと判断したアオユキが、氷塊を除去するようフェンリルに視線を向ける。
フェンリルが主の指示に従い、氷塊を除去。
凄まじい蒸気、熱が立ちこめ、クレーターの中心に溶岩化した地面が再度固まって黒くなっていた。
再度、固まった地面に埋もれている偽『C』を発見する。
「…………」
アオユキは偽『C』を殺すつもりはない。
主であるライトが、偽『C』の記憶から情報を引き出したいと望んでいるからだ。
故にこのまま見殺しにするわけにもいかず、引っ張り出すため弱った偽『C』の首に『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を巻きつけ捕らえる。
あとは引っ張り出して、暴れないよう鎖で雁字搦めにすればライトから任された仕事を完遂することが出来るだろう。
ライトに手放しに褒められ、顎下などを撫でられるのを想像しつつ、アオユキは『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』は首輪部分を開き、偽『C』の首へと嵌める。
嵌めたが、
「!?」
彼女は偽『C』を引っ張り出す前、反射的に『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を彼から離し、引っ込める。
アオユキの表情が青く染まっていた。