作品タイトル不明
24話 封印された『ますたー』事情
エリーに魔人国第一王子ヴォロスの確保、見せしめのため城をドラゴン達に吹き飛ばすよう指示を出した。
しかし、魔人国に向かうと、城が吹き飛び、なぜかレベル9999の男性が暴れていたらしい。
人道的に考えるなら今すぐ暴れている男を取り押さえるべきだが……。
相手はレベル9999だ。
情報も無しに手を出したら、どんな目に合うか分からない。
僕は顔も知らない他者より仲間であるエリー達の方が大切だ。
故に安全を優先して、まずエリーには監視に徹してもらう。
僕は情報を得るため元魔人国側『ますたー』であるミキに話を聞きに行ったが……。
「ぷふふふ……もっと正確に言うなら魔人国がずっと『C』様と勘違いして復活の方法を捜していた偽『C』だよ」
「偽『C』?」
彼女は滑稽な演劇を見た感想を告げるように笑いながら漏らす。
「ミキィは虫のなかでも蜂に縛りをかけ能力を特化した『召喚術師』なんだけどぉ。やっぱり自分が在席する場所がちゃんと安全かどうか確認するべきでしょうぉ? だから、蜂を使って魔人王城をくまなく調査したのぉ。その時、ミキィ、地下で見つけちゃったんだぁ。棺に封印されている『マスター』を」
「封印されていた『ますたー』?」
「? あれ、このお話はしていなかったっけぇ? まぁ今、ミキィ、気分が良いしお話してあげるねぇ。マスターが存在するパターンは2つしかないのぉ。一つは前も話した通り、『以前生きた人生の記憶を持っている者達』。もう一つは理由は千差万別だけど、『過去の時代、封印されて現代で目を覚ました者』。マスターはこの2つのパターンしか存在しないわぁ」
前半の『前世の記憶~』は知っている。
以前、ミキが説明してくれたからだ。
後半の『過去の時代、封印されて現代で目を覚ました者』は初耳の情報だ。
(彼女が以前口にした『他に復活してなければだけどぉ』とは、『過去時代に封印されて目覚めてなければ』っていう意味だったのか)
ミキが上機嫌で続ける。
「蜂で地下の研究所のような場所にマスターっぽい棺があったから、気になって隠れて見に行ったのねぇ。んで、色々調べて見たら、レベル9999もあって、称号はバグっていて正確には確認できなかったけど『■神』や『■り神』とかあったのぉ。それを見て魔人国側関係者が『彼こそがCだ』って勘違いして、なんとか復活させて自分達の制御下に置こうと研究していたんだ。マジ面白いよねぇ。レベルはカンストしているけど、どう見ても『C』様じゃないのにぃ(笑)。むしろ、称号なんかからどう考えても災い的な存在として封印したぽいのに、ミキィ達に対抗するため、保険として復活させようとしているとか、本当に笑っちゃうよぉ」
つまり、魔人国側は長年、厄災のため封印されていた『ますたー』を『C』と勘違い。
復活のための研究を長年おこなってきた。
しかし、僕達が魔人国側『ますたー』を全員倒してしまったせいで、対抗手段として偽『C』をどうにかして復活させようとした。
無事、復活させたが、相手は厄災のため封印されていた『ますたー』だったため、命令を聞くどころか、早々に魔人国王城を吹き飛ばし、暴れ回っているということか。
またやはりミキの話を聞く限り、封印を解除されたのは最近のためこのレベル9999が僕の故郷を襲ったモノではないようだ。
僕は思わずこめかみを押さえる。
「一応、魔人国側の罠の可能性も疑って警戒心を抱いていたのに、自業自得案件だったなんて……。魔人国側からすれば危機的状況なのは理解できるけど、よく分からない危険物を安易に利用しようとするとか。魔人国上層部は何を考えているんだ」
「ミキィは何を考えているのか想像つくよぉ。教えてあげようかぁ? どうせあいつのことだから自分のプライドと身の安全だよぉ」
ミキは誰かをしっかりと想像し、皮肉気に告げた。
魔人国側と『ますたー』は協力関係にあったはずだが、仲が良い訳ではないようだ。
僕はこめかみを押さえつつ、話を進める。
「ミキ、その暴走している『ますたー』を再度封印する方法は?」
「えぇ~ミキィが知るわけないじゃない。別にそこまで興味があって調べたわけじゃないしぃ。だいたい、封印されているマスターなんて基本厄い奴ばっかりって話だし。大抵理性が壊れて会話も成り立たず、無駄に強くて手に負えないから封印するしかなかったらしいよ。もちろん例外も沢山あるけどぉ」
「つまり封印方法は分からないから、結局、倒すしかないのか……」
現在、大暴れしているのは魔人国首都だが、あそこには人種奴隷も居る。
また暴走している『ますたー』が気まぐれを起こして、魔人国首都から人種王国領内に移動する可能性だって十分あった。
放置して、下手に人種側に被害が出ても面白くない。
何よりレベル9999の『ますたー』に対処できるのは地上世界では僕達ぐらいだろう。
「……ありがとうミキ。このお礼は後でするよ」
「別にいいわよ。前回、言葉足らずな所があったのと、気分が良いから話しただけだしぃ」
「いや、非礼には非礼を、礼儀には礼儀を、恩義には恩義を返すべきだと僕は考えている。確かに言葉足らずな所はあったが、それを超えて有益な情報を伝えてくれた部分もある。だから、しっかりとお礼をするよ」
「もうライトちゃんは見た目は可愛い少年なのに反して義理堅いよねぇ。でも、そういう所ミキィ、結構好きだぞ☆ ミキィの心も体もスズちゃんのモノだけど、ライトちゃんはミキィ的にめちゃありだし、一晩相手にしてあげてもいいよぉ?」
「「…………」」
今まで僕とミキの会話を邪魔しないよう黙り続けていた護衛のメイ、アイスヒートが彼女の発言に無言で殺気を飛ばす。
ミキは2人の殺気を浴びつつも、楽しげな表情を崩さなかった。
むしろ、どこか気持ちよさそうな態度を取る。
僕は軽く肩をすくめて受け流す。
「悪いけど、遠慮しておくよ。そういうつもりでお礼をしたい訳じゃないしね」
あくまで僕がミキに対して返礼をするのは、有益な情報を口にしたからだ。
また何より、
(ミキに対して下手に借りを作ったら後で何を要求されるか分かったものじゃないからな……)
その要求先はスズに向けられ、彼女を涙目にさせてしまう。
なので被害を軽減させられるならさせておくのが良いだろう。
ミキは僕の返答に、同じように肩をすくめる。
「残念。でも気が変わったらいつでも言ってね。あと、お礼に関してだけど、ミキィ自身そんなつもりで言ったわけじゃないから、あんまり大きいのだと逆に気が引けるし……。あっ、なら今度スズちゃんの趣味や好きな料理、お菓子なんかを教えてもらってもいいかしらぁ。やっぱり乙女としては好きな人の好みは知っておきたいしぃ」
「了解。スズに聞いて許可が出たら教えるよ。拒否されたら、別のモノでお礼をするから」
「ありがとう、ライトちゃん。ミキィ、楽しみにしているねぇ☆」
ミキがウィンクをしてくる。
メイ、アイスヒートはイラっとした雰囲気を醸しだし、僕は微苦笑を漏らし『奈落』最下層独房を後にした。
『奈落』最下層独房を後にしつつ、現在暴れている『ますたー』を討伐するための編成を考えておこう。
そのため執務室に一度最高戦力を集め、誰を投入するか話し合いをする予定だったが――。
「――主、是非、アオユキにご命令ください」
本当に珍しく、アオユキが『自分があのレベル9999と戦いたい』と自主的に要求してきた。
これにはメイ、ナズナも驚きで目を大きくしたのだった。