作品タイトル不明
書籍版発売記念番外編3 モヒカン冒険者達の報告、中編
モヒカン達が、ゴブリン退治&巣の調査に向かうと……人種山賊のアジトを発見してしまう。
この人種山賊が森の奥にアジトを作ったせいで、ゴブリンが追い出され、森の浅い部分に出てきたため、『森の奥にゴブリンの巣が出来たから、浅い部分に出てくる数が増えた』と勘違いされたらしい。
エリーが『巨塔の魔女』として『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義』を掲げ、人種奴隷を禁止している。
そのため人種山賊を倒し、人質を救出しなければならないが……。
モヒカン達のレベルでは、山賊を倒し、人質を救出できるほど強くない。
冒険者ギルドに報告したとしても、討伐準備をしている間に他国へ売られてしまう。
故に報告も兼ねて『奈落』へと報告した結果……。
「へぇ~、そうなんだ。『巨塔の魔女』様の宣言を無視して、人種村を襲って奴隷として売りさばいているお馬鹿さん達がいるんだ。しかも、わたし達の悪口も言ってたとか」
見た目はとんでもない美少女だが、そのせいか逆に個性が薄くなっている妖精メイドが笑いながら告げる。
顔は笑顔だし美人で可愛らしくはあるが、モヒカン達はときめき顔を赤くするどころか冷や汗を掻き青くなっていた。
リーダーが代表して、返事をする。
「う、うっす。ぐ、偶然、発見して。山賊もですが、捕らえられている人数も多いため俺達には手に余ると思い応援を呼ばせて頂きました」
「賢明な判断ですね。人質となっている人種達を確実に助けるのなら、モヒカンさん達だけでは厳しいでしょう。それに『地味で、根暗で、居るか居ないか分からない』と言った奴らには、是非とも鉄槌をくださなければ」
(山賊達も別にそこまでは言っていないが……)
眼鏡妖精メイドが真っ白な額に青筋を走らせ、眼鏡を苛立ち動かす。
モヒカンの1人が胸中でツッコミを入れるが、発言を訂正することより自分の身が可愛いため口にはしない。
「あーし、別に性格悪くないし。もしこれがライト様の耳に入って、悪い印象持たれたらどう責任とるつもりっていうか~。マジ、むかつくわぁ」
「う、ウチだって毎日お風呂に入っているから無臭だよ。匂いがきつそう云々とか、乙女に言うことじゃないよ」
ギャル系っぽい妖精メイドはぷりぷりと怒り、オタクっぽい妖精メイドが涙目で抗議の声をあげる。
2人の発言は可愛らしくあるが……発する殺気は本物だ。
レベル500の殺気を身近に感じてレベル20前後のモヒカン達は震え上がる。
いくら容姿が美人で可愛らしくても、中身を知っているためモヒカン達が彼女達に恋心を抱くことはない。
むしろ、これから山賊達に起きる惨状に、同情心すら抱いた。
可愛すぎて逆に個性が薄い妖精メイドが声を上げて、注目を集める。
「とりあえず、エリー様からも『人質の救助を優先するように』と指示を受けているから、まず人質の救助を優先しましょ。救助するためのカードも預かっているので、モヒカンさん達もご協力をお願いしますね」
「!? まさかこんな上等なカードまで使用するとは……」
「それだけエリー様――引いては ライト様(ご主人様) が人質の救助を望んでいるということです。なので失敗は絶対に許されません」
今回、人質救出に使用されるカードを見せられ、上は本気だとモヒカン達も理解した。
つまり、作戦の失敗は自分達を顕現させてくれた神であるライトの威光に傷をつけるということだ。
もし人質の1人でも死亡させ、ライトの威光に傷などつけたら自分達が腹を切って詫びても詫びきれるモノではない。
俄然、モヒカン達も気合を入れる。
……気合を入れるが、今回使用されるカードを考えれば救出はほぼ成功したようなものだが。
次に山賊、商人の扱いについて言及される。
「山賊と商人に関しては……商人はなるべく生きたまま確保。今までどれぐらいの人種を奴隷として誰に、どれだけ売ったのか。その販売経路、手法なんかを今後のために吐いてもらう必要があるから。捕らえた後の情報収集も任されているから、たっぷりと体に聞かせてもらおうね。それから、山賊に関しては抹殺で」
可愛すぎて逆に個性が薄い妖精メイドが、その美貌で笑いながら繰り返す。
「オールウェポンズフリー、オールウェポンズフリーよ。山賊は一匹残らず殺せとのご命令よ。たとえ命乞いをしてきても、事情があって山賊に身を落としていた者でも、トイレに隠れてやり過ごそうとしている奴がいても見つけ出して殺せとのご命令よ。『奈落』妖精メイドの名に懸けて、悪党は絶対に全員地獄送りにするように」
極まった美貌が笑顔のまま、残酷な台詞を吐く。
まるで台詞まで美しい内容だと錯覚してしまうほど、彼女の笑顔は完璧だった。
「お任せを。部屋に埃一つ残さないほど綺麗に掃除するのはメイドの嗜みですから。山賊共を皆殺しにしてみせます」
眼鏡の妖精メイドが断言。
「 山賊(虫) は一匹も逃がさないっていうか~」
「な、『奈落』妖精メイドの名に懸けて、ぜ、絶対に逃がさない。お、お、鏖殺しないと……ッ」
レベル500の妖精メイド達の殺気を浴びて、モヒカン達が怯える。
自分達に向けられている殺気ではないのにだ。
(こ、怖ぇえぇ! 怖ぇぇえよ、リーダー!)
(お、俺様だって怖いわ!)
(マジ、こういうのを見ると女性に対する幻想が壊れるから止めて欲しいわ……)
(あの商人、山賊達も馬鹿なことをしたよな。いくら利益のためとはいえ妖精メイド達を敵に回すなんて)
(まぁ馬鹿は死ななきゃ治らないっていうし。自業自得じゃねぇ?)
モヒカン達は殺意に燃える妖精メイド達に怯えながら、男性だけで集まりひそひそ会話をするのだった。
☆ ☆ ☆
「ふわぁ……眠みぃ……」
「ああ、くそ、だりー」
人種山賊達が隠れている洞窟前。
見張りとして立っている山賊×2が愚痴をこぼす。
「こんな真夜中、森の奥に誰か来るなんてありえないのに、どうして見張りなんかしなきゃならないんだよ。クソが」
「冒険者はともかく、ゴブリンが迷い込んでくるかもしれないだろう……ふわぁぁ~」
「ゴブリンが迷い込んでも追い払えばいいだろうが。しかも、捕まえた女共も自由に出来ないし、何が山賊だよ」
「気持ちは分かるが、オヤブンの言い分ももっともだろう。田舎臭い女を抱くより、金をもらって街で商売女を相手にするほうがいいだろう。美人で、肉付きもいいし、技術もある」
「そうだけどよ。折角、山賊なんてやっているんだから、泣き叫ぶ女を犯したり、命乞いをするのを嬲ったり、1人を複数でとか色々やってみたいじゃねぇか」
「気持ちは分かるけど、嫌だってレベルじゃないだろ。お前と穴兄弟になるとか」
「馬鹿野郎、とっくに商売女でなっているだろうが、ははっ」
見張り2人はやる気なく馬鹿話で盛り上がる。
会話内容も山賊らしいといえなくもないが、酷い内容だった。
集中力にも欠け、練度も低く、やる気もないが、見張りは見張りである。
「今晩は、良い夜ですね」
「「!?」」
すぐ目の前に現れた、汚れ一つ無い極上のメイドに声をかけられた。