軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

書籍版発売記念番外編2 モヒカン冒険者達の報告、前編

「あー、ちょっと失敗したな……」

人種王国領内の森。

その奥でモヒカンリーダーがぼやく。

彼らモヒカン冒険者×5人は、冒険者ギルドでゴブリン退治の依頼を受けた。

同時に『ゴブリンの巣が出来ている可能性があるため、その調査』も請け負った。

最近、ゴブリンが多くなっているため、巣が出来ている可能性がある。

だから、『その巣が本当にあるのか』、『あるのならばその場所と規模は』などの情報を仕入れに森へと足を踏み入れたのだが……。

モヒカン達は特に苦もなくゴブリンを倒していた。

いくら冒険者ランクが E級(半人前) とはいえ、ゴブリンに後れをとるほど弱くない。

そのままゴブリンを倒しつつ、巣を捜すため森の奥まで入ったのだ。

しかし、予定より深く潜り過ぎてしまった。

「今から町まで戻るとなると、日が暮れちまうな……」

「どうしますリーダー。森で一泊します?」

「まだゴブリンの巣も見つけてないっすからね」

「いや、なるべく急いで町へ戻るぞ。今回は森で野営する準備をしていないからな。避けられる危険は出来るだけ避けたい」

リーダーはすぐに決断を下す。

夜の森での野営は、通常の野営とはまた違う。

視界が悪く、夜行性のモンスター達が活発になり、平野とは違って頭上も警戒しなければならない。

森での野営を想定していない装備で、野営するのは危険度が高いのだ。

「ちょっと待ってください、リーダー。このもうちょっと奥にゴブリンの巣があるかもですわ」

斥候を担当するモヒカンがリーダーに意見する。

「もうちょっとてのは、どれぐらいだ?」

「気配や複数の声が微かにするので、本当に近いと思いますよ。ちょっと覗いて位置を確認して、急げば森を抜けて日が完全に暮れる前には町に帰れると思いますよ」

「……よし、位置だけ確認するぞ。後日、また来て規模や防衛設備、戦力なんかを確認するぞ」

リーダーの判断にモヒカン達が小声で返事をする。

決断を下すと、モヒカン達はより奥へと移動を開始した。

移動してすぐ確かに複数の気配を斥候以外も確認することが出来たが……。

相手はゴブリンではなかった。

人種の山賊だ。

洞窟があり、その前に人種女性、子供達が集められていた。

商人らしき服装の人物と、山賊のリーダーらしい巨漢が話し合う。

どちらも人種だ。

「今回も良い感じに人種達を集めましたね。若い男性がいないのは残念ですが……」

「若い男は労働力として欲しかったんだが、小さな村を襲ったら無駄に抵抗しやがってな。老人共も皆殺しにして、結局、女とガキしか手に入らなかったんだよ」

「それはしかたないですね。まぁ労働に適さない女子供でも、今はあのクソッタレの魔女が出した『 人種(ヒューマン) 絶対主義』のお陰で売り手市場ですから問題ありませんが」

(自殺志願者かな?)

距離を取り話を聞くモヒカン達の1人がツッコミを入れる。

(なぁ『クソッタレの魔女』って『巨塔の魔女』、エリー様のことだよな?)

(あいつらの会話を考えたらな。どうやらあいつら、人種村を襲って、攫って、奴隷として違法販売しているようだな)

(エリー様が、人種奴隷禁止を宣言しているのに、わざわざ手を出すとか……)

(商人は金になるならなんでもやるって聞くが、普通同族を襲って売りさばくか)

(最近、ゴブリンが多く出ていたのも巣が出来たんじゃなくて、あいつらがあの洞窟に住み着いたからかよ。はた迷惑な)

モヒカン達が彼らの会話を盗み聞き、ドン引きしていると商人と山賊オヤブンが会話を重ねる。

山賊オヤブンがぼさぼさの顎髭を撫でる。

「聞いた話じゃ、『巨塔の魔女』は絶世の美女らしいな。しかも、その配下の妖精のようなメイド達も誰もが絶品の美女揃いとか。魔女は難しいだろうが、その妖精達は金銭で売り買いはしていないのか?」

「はい、してませんね。当然、魔女に話をもちかけた商人はいましたが、睨まれて気絶させられたらしいですよ。以後、その商人は『巨塔街』に入ることを禁止されたとか」

「なら、無理矢理襲って攫うのはどうだ?」

「いやいや、無理ですよ。妖精メイド達も並の冒険者より強いらしいですから。手を出そうとした馬鹿が一部いたらしいですが……」

「いたが?」

商人が暗い笑みを浮かべる。

「『そんな奴は最初からいない』ことになったそうですよ」

「あん? それはどういう意味だ」

山賊オヤブンが首を捻った。

商人は怪談話をするようなノリで語る。

「『巨塔街』に住んでいた人種青年が、妖精メイドの色香に狂って襲ったらしいですが……以後、姿を消したそうです。そして、誰に尋ねても『最初からそんな青年はいない』と口を揃えて言うんですよ。『巨塔街』を出入りする商人の間では有名な話です」

「それも魔女の力なのか?」

「どうなんでしょう。ただ妖精メイドを手に入れるのは不可能ってお話ですね」

山賊オヤブンがつまらなそうに吐き捨てる。

「チッ、面白くねぇ。だが、絶世の美女と言っても、どうせ並よりちょっと良いぐらいなんだろ。話なんてのは尾ひれがつくものだからな」

「あははは! 確かに。噂話など誇張されてなんぼですからね。自分が聞いた話では可愛らしく、美女揃いだったらしいですが根暗そうだったり、匂いがきつそうだったり、態度が悪く性格ブスだったり、美女過ぎて逆に個性が消えていたり、欠点もあるそうですよ」

「ガハハハ! やっぱりな! 魔女だっていつも顔を隠しているって話だしな! どうせ人様に見せられないぐらい不細工なんだろな!」

商人、山賊オヤブンがエリー&妖精メイドの容姿を貶し、馬鹿にする。

『酸っぱいブドウ』ではないが、自分達の手に入らないモノを貶して、心の安寧を計っているのだ。

一方、偶然にもエリー&妖精メイドへの暴言を耳にしたモヒカン達はと言うと……。

全員、青ざめていた。

(エリー様と妖精メイド達に喧嘩売るとか……)

(『奈落』最下層じゃ考えられないぞ)

(手の込んだ自殺志願者かな?)

(これ報告しないといけない案件だけど……誰がするんだ?)

(そりゃ、リーダーに決まっているだろ。俺は嫌だぞ。報告とはいえ、エリー様と妖精メイドに対しての暴言を伝える役とか!)

モヒカン達の視線がリーダーモヒカンに向けられる。

彼は心底嫌そうな表情を作った。

(俺様だって嫌だよ! でも、俺様達の戦力じゃあいつらを倒して、あの人種達を救い出すのは難しいしな……)

山賊オヤブン、商人は洞窟前で話をしているが、その周辺に手下が居る。

恐らく洞窟奥にも手下は居るだろう。

モヒカン達のレベルは高くない。

せいぜいレベル20~25程度だ。

相手も人種といえ、あの人数を相手に人質を守りながら殲滅は難しい。

また洞窟の奥に他人種達がいるかもしれないのだ。

「それじゃ自分は明日、奴隷を連れて魔人国に向かいますので、今夜は泊まらせて頂きますね。あと決して商品に手を出さないでくださいね。下手に手をつけて商品価値が下がってはたまりませんから」

「分かっている。第一、こんな農村の女どもより、金を払って街のプロとやった方がいいからな。おい、奥に連れて行け」

部下に指示を出し、手を数珠繋ぎに縛られた女性、子供が洞窟奥へと連れて行かれる。

その後を商人、山賊オヤブンが続き、他部下が洞窟前に歩哨として立つ。

モヒカン達は目を合わせて、ゆっくりと気付かれないように引き下がった。

声を出しても問題ない場所まで引いた後、今後について話をする。

「で、どうする?」

「どうするもこうするも、見捨てる訳にもいかないですし、リーダーが報告して増援を頼むしかないと思いますよ?」

「だよな。町に戻って事情を話して、戦力を整えて……なんてやっていたら逃げられる可能性もあるし」

モヒカン達の意見にリーダーは頭が痛そうにこめかみをぐりぐりと押す。

「それしかないか……。まぁエリー様や妖精メイド達の悪口を伏せて連絡すれば問題ないか」

リーダーは割り切り、小鳥を呼び寄せ『奈落』最下層経由で増援を求める判断を下す。

エリー、妖精メイド達の悪口を伏せて報告する予定だったが……結局、詳細な情報を吐き出された。

結果、妖精メイド達の逆鱗に触れて、増援として彼女達が参戦することが決定する。

こうして今晩にも妖精メイド×4人が山賊のアジトに乗り込むことになったのだった。