軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12話 ライト達vsドク、エルス5

『デバフ! デバフ! デバフ! 多重層デバフ! 馬鹿な!? 炎を弱めることができない!? どうして! ワタクシの支援魔術が通じないのですか!?』

ドクがお得意の支援魔術が効果を示さず、混乱の声をあげる。

攻撃魔術まで干渉する支援魔術を先程見ているのだ。当然、その辺りをしっかり計算してカードを使っているに決まっている。

僕が使ったカード『UR 炎環地獄(ヘル・ファイア) 』は、一定時間消えない灼熱の業火が広範囲に渡って広がる。この炎が燃え移った場合、水でも魔術でも消すことは出来ない。消火方法は一定時間経過するか、使用者の意思のみだ。

故にたとえ万近くの人種死体があったとしても、ドクが支援魔術で干渉しようとしても 炎環地獄(ヘル・ファイア) を消すことは出来ない。

『こ、このままではワタクシまで――ッ。止むを得ません!』

人種死体ゴーレムにまとわりつき燃える炎がどうやっても消せないことを悟ったドクが、自身に引火するより先に脱出を図る。

彼にとって人種死体などその程度でしかないのだ。

「『UR 炎環地獄(ヘル・ファイア) 』、 解放(リリース) ! 少しでも貴様が殺した人々の痛みを味わえ!」

「何度も言いますが、これも全て人種の未来のため! 大義はワタクシにあるのですよ!」

ドクへの追撃のため、新たに『UR 炎環地獄(ヘル・ファイア) 』を解放する。

ドクは大量のメスを取り出し、鋼鉄の壁を作り出す。

炎環地獄(ヘル・ファイア) は鋼鉄の壁すら燃やし、彼の後を追った。

また新たに解放することで、ドクが抜け出した人種死体ゴーレムを焼き払う。

ドクが抜け出した後の人種死体ゴーレムから、未だ兄エルスが抜け出していない。

(恐らくあれだけの巨体を自分の意思に従い全身を動かすのに、中継器を必要としたんだろうな。にーちゃんを取り込んだのも、その中継器代わりにするためだろう)

脱出するために、そんなモノを必要としないため残したのだろう。

僕は取り残された兄を救い出すためにも、 炎環地獄(ヘル・ファイア) で遺体を焼き払おうとする。

「ぐああぁぁあぁぁッ!」

「! にーちゃん!」

どれだけの遺体を焼き払ったか分からないが、お陰で埋もれていた兄が無事に姿を現す。

問題があるとするなら、 炎環地獄(ヘル・ファイア) の黒い炎が燃え移り、耐えきれずのたうち回っていることだ。

僕は即座に炎を消して、新たなカードを取り出す。

「『SSSR 祈りの息吹(オーバーヒール) 』、 解放(リリース) !」

炎で焼けた傷をSSSRカードで癒す。

傷は最初から無かったかのように癒され消える。

――『UR 炎環地獄(ヘル・ファイア) 』の痛みか、『SSSR 祈りの息吹(オーバーヒール) 』が傷以外を回復させたのか、奇跡なのか……。

「あぁぁっ……ら、い、と……」

「ッ!? にーちゃん! エルスにーちゃん! 意識が戻ったの!?」

僕は兄に名前を呼ばれたことで戦いを忘れて声をかける。

僕だけではない。

メイやアオユキ、敵のドクまでもにーちゃんに意識を向けた。

兄は両手で頭を押さえつつも、確かな意思ある瞳でよろよろと、こちらへ向かって歩いて来る。

(もしかしたらこのままにーちゃんの意識がドクの改造に勝って戻るか!?)

僕は胸中に希望を抱き、涙目でにーちゃんへと駆け寄ったのだった。

☆ ☆ ☆

少しだけ時間が戻る――

ナズナvsゴウの戦いにより、街道側の森林はまるで隕石群が落ちたかのように破壊されていた。

神話級(ミトロジー・クラス) 、『大剣プロメテウス』で世界に干渉し摂理をねじ曲げ、5人に増えたナズナ達は――1人残らず地面に打ち倒されていた。

ドレッドヘアーのゴウが、苛立たしげにナズナ達を見下ろす。

「アァァァッ……手間をかけさせやがってよォ。マジで面倒な相手だったぜ。何度ぶっ飛ばしても折った腕や足すら『傷などなかった』ことにされたからな……マジで最悪だったぞ」

『だが』と、ゴウが続ける。

「多少剣術は知っているようだが、俺様の極めた武術の前じゃ遊技に等しい。さらに武術は多対1の想定なんてあたりまえ。対処技術、知識なんて腐るほど知っているんだよ。オマエと俺様とは相性が最悪に悪かったようだなァッ」

ゴウは強面で、言動通り努力を嫌うタイプだ。

しかし、彼は『一度目にしたり体験した武術、技術、奥義などを自分のモノにする』ことが出来るのだ。

これはレベルやスキル、ギフトによるモノではない。

ゴウ自身が持つ、純粋で特殊な才能によるモノだ。

そのお陰で武術技術、知識、立ち回りを用いて『大剣プロメテウス』で5人に分裂したナズナに囲まれ、襲われても冷静に対処することが出来たのだ。

『大剣プロメテウス』がいくら強力でも、発声しなければ効果を発揮しない。

そこに目をつけたゴウは、敵の意識を奪うこと――声を奪い腹部を殴ってダウンさせ、側頭部を蹴ったり、発勁と呼ばれる技術で脳味噌に直接攻撃を加えて意識を刈り取る等で、5人のナズナを眠らせることに成功したのだ。

「できれば俺様に喧嘩を売ってきた愚かさを理解させるために手足をもいだり、顎を砕いたり、生きたまま爪先からぐちゃぐちゃに潰してやりたいところだがァッ……。下手に拷問にかけて回復されたら目もあてられないからなァッ。意識を取り戻す前にさっさと――」

「んぁあ!」

「!?」

勝負を決めようとしたゴウだったが、それより早くナズナの1人が意識を取り戻し立ち上がる。

その姿にゴウは心底驚愕する。

(おいおいおい! 巫山戯るなッ! あいつは脳味噌に直接勁を叩き込んだ奴だぞォッ! 確かな手応えもあったァッ。……こいつはどうなってるんだァッ?)

ゴウの驚きにナズナは一切気にせず、頭部を撫でた。

「オマエ、アタシの予想よりずっと強いな! しかも面白いことを色々やるし、驚いたぞ!」

ナズナは改めて向き直ると、まるで一通り遊園地のアトラクションを楽しんだ少女のように笑う。

その笑みに優勢な筈のゴウが、背中に冷たい汗を掻いたのだった。