軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10話 ライト達vsドク、エルス3

「SSSR 業火の天使(ヘルフレイム・エンジェル) 、 解放(リリース) !」

『SSSR 業火の天使(ヘルフレイム・エンジェル) 』。炎が天使の形を作り、地獄の業火の如き炎の攻撃をおこなう。

兄を保護するために意識を奪おうとするがドクが妨害してくるため、まず彼を無力化することを選択する。

カードの説明の通り、炎が天使の形を作り羽根を広げた。

羽根一枚でも一般人が触れたら骨すら残らず蒸発するほどの力を持つ。

「ちょっ! 本気ですか!? ワタクシの他にも、 魔人種(一般人) 達がいるのですよ!?」

ドクが慌てた様子で声をあげるが、構わず僕は炎の羽根を文字通り雨霰と放った。

SSSRの中でも攻撃能力が高いカードだが、相手は魔人種側『ますたー』の1人だ。

この程度の攻撃で死ぬとは思っていない。少しでもダメージを与え、無力化するのが狙いだ。

またこの場に居る魔人種側兵士達は、僕達の姿を見られた以上、元々この場から逃がすつもりはない。

第一、こいつらは人種王国領土内の村を襲うつもりだったのだ。

人種に対して、非道な振る舞いをするため法を犯し、他国領内に足を踏み入れたのだ。

当然、自分達も同じ扱いを受ける覚悟があったのだろう。

なので遠慮無く叩き込む。

視界一杯に炎、煙り、空気すら焦げる光景に覆われる。

本来ならば『 業火の天使(ヘルフレイム・エンジェル) 』の攻撃をまともに受けた場合、ただではすまない筈だが……。

「――今時の子供は本当に容赦がありませんね。普通、あんなに殺意が高い攻撃をしかけますか?」

ドクは白衣の一部を焦がし、呆れたような声を漏らす。

衣服は焦がしているが、肉体的ダメージを与えたようには見えない。

また意外だったのは、背後に居る魔人種達を守り切ったことだ。

「ど、ドクさん……」

「ありがとうございます、ドクさん!」

「いえいえ、当然のことをしたまでです。なので感謝する必要などありませんよ」

彼は背後を振り返り、お礼を告げる魔人種達に返答する。

僕は彼らのやりとりを無視して、ドクの実力を評価しなおす。

(『戦いは得意ではない』と口にしていたが、『 業火の天使(ヘルフレイム・エンジェル) 』の一撃を切り抜けるだけの力はあるのか。 神葬(しんそう) グングニールの解除は……駄目だ。威力が高すぎて殺してしまう)

兄を元に戻すため、まだこいつを殺す訳にはいかない。

(もしさっさと殺していいなら、 神葬(しんそう) グングニールを解除して叩き込んでやるのに……)

また何より、先程から僕の勘が疼く。

(自称最強の 神話級(ミトロジー・クラス) 『精霊双剣』を持つダイゴ、亡命者ミキ、切り裂き魔ギラ……レベル差はあったが、皆一筋縄ではいかない強さを持つ者達だった。でも、その中でもこのドクは実際に鉾を交えると、彼ら以上に危険な感じがする)

メイとの戦いを横目で見たが、『戦いは得意ではない』と自白している通り、戦闘が得意なタイプではなかった。

逃げに徹することで、なんとか均衡を保っていた。

にも関わらず、実際に相対するだけで嫌な感覚が生じてくるのだ。

(この手の癖の強い奴は何をしてくるか分からない。何かをされる前にさっさとけりを付けるべき!)

僕はドクが何かを仕掛けてくる前に、勝負をつけるためさらなるカードを取り出す。

「メイ、僕に合わせてくれ!」

「畏まりました!」

僕が声をかけて、メイが動く。

「 魔力糸(マジック・ストリング) !」

「ちょっ! 逃げ道を塞ぐのは反則じゃないですか!?」

メイが『 魔力糸(マジック・ストリング) 』でドクの逃げ道を封鎖。

回避できない場を作り、SSSRカードを切る!

「『SSSR 次元の断絶(ディメンション・スラッシュ) 』!」

空間を切り裂き、閉じる際の力で敵単体を切り裂く。どれだけ防御能力が高くても、ダメージを与えることができる攻撃カードだ。

僕は逃げられないようドクの両足を狙いSSSRカードを解放する。

――本来であればカード消失と同時に、ドクの足付近の空間が一瞬で切り裂かれ、同時に周囲のモノが切断されるが。

「デバフ! デバフ! デバフ! 多重層デバフ!」

「!?」

ドクがすぐさま連続でデバフをおこなう。

しかも狙いは僕ではなく『 次元の断絶(ディメンション・スラッシュ) 』らしい。

ドクは連続でカード魔術にデバフをかけることで、攻撃魔術そのものを弱体化させる。

結果、『 次元の断絶(ディメンション・スラッシュ) 』は、ドクの足を切断するには至らず、傷つける程度に終わる。

ドクは少し痛がるような表情を見せたが、戦闘には支障がないようで、そのまま距離を取る。

「攻撃魔術そのものに干渉して、弱体化させることが出来るのか……」

これにはさすがの僕も少しだけ驚く。

ミキ曰く『ドクは支援魔術のエキスパート云々』とは聞いていたが……。

まさか攻撃魔術にまで干渉できるほどの力を持つとは思わなかった。

『ドク殺害』だけなら、そう難しくない。

神葬(しんそう) グングニールの力を解放して叩き込めばお終いだ。

しかし兄を元に戻すため生きたまま確保となると、ドク自身の能力も合わさって面倒になるな、僕は内心で考えてしまう。

すると今までの態度と、不機嫌な感情が表に滲み出たせいか、ドクが声をかけてくる。

「先程の言動や殺意から、どうやら貴方はワタクシに対して非常に腹を立てているようですが……。ワタクシ、何か貴方をそこまで不快にさせるマネをしましたかね」

「……本気で言っているのか?」

「はい、もちろん。もしワタクシが何か不快な思いをさせてしまったのなら謝罪させて頂き、相応の品を贈らせて頂ければと思うのですが。如何でしょう?」

ドクの態度が僕の神経を逆撫でする。

彼は心底本気で『自分が何か悪いことをやりましたか』という態度を取っていた。

さすがにそれを見て、僕は怒りの余り声をあげる。

「自分が何をしたかだって……巫山戯るな! にーちゃんを家族をあんな怪物に変えられて、他にも多くの人種が貴様の手で弄ばれて、怒らないはずないだろうが!」

「? いやですから、先程もお伝えした通り、貴方のお兄様は『 人種(ヒューマン) の未来のため』尊い犠牲になったのです。今まで犠牲になった人種も同じく。これはとても素晴らしいことなのですよ。故に悲しまず、前を向いて誇りにすべきことだと思うのですが……」

「何が尊い犠牲だ! 人種の命をなんだと思っている! 人はオマエの玩具じゃないんだぞ! ならまず人種の未来のため、オマエがさっさとくたばってみせろ!」

ドクは僕の態度に、和解は不可能と判断したのか、仮面越しに溜息を漏らす。

「やれやれ……子供には難しいお話だったようですね。ワタクシの崇高なるおこないが分からないとは……」

溜息を漏らし落胆した後、ドクの雰囲気が変わる。

「いいでしょう! ならワタクシは貴方達の理不尽なおこないに対して真っ正面から抗いましょう! いつだって崇高なる行いが凡夫に理解されないのは世の常ですから」

彼は僕達を睨みつけると、高々に叫ぶ。

「なら、凡夫にも分かる形で示してあげましょう! 人種の可能性は無限大で、愛と希望と勇気は絶対に負けないことを! 人種の偉大さを理解するといいです!」

ドクの狂気的叫びと同時に、彼の背後に彼のアイテムボックスらしき空間の揺らぎが発生する。

そして、そこから人種死体が雪崩を打って溢れ出てきたのだった。