作品タイトル不明
7話 ナズナvsゴウ2
「クソ! クソ! クソがァァアアァァァッ! 魔女の下にこんな面倒なクソガキまでいやがるなんて聞いてねぇぞォッ! クソがァァァァッ!」
「あたいはクソじゃねぇ! ナズナって名前だぞ!」
「女の子にクソとか言っちゃ駄目なんだぞ!」
「こいつ、マジでヤな奴だな!」
「むかつく奴、どうせぶっ飛ばすからいいけど!」
「とりあえず一発もらったぞ!」
神話級(ミトロジー・クラス) 、『大剣プロメテウス』で世界に干渉し摂理をねじ曲げ、ナズナが5人に増えた。
5人がタイミングをずらしゴウへと殺到。
ゴウは心底嫌そうな声をあげつつ、ナズナ×4人の大剣を神速の反応速度で回避するが、さすがに逃げ道を潰され最後の5人目に捕まる。
ゴウは逃げ道を失い脳天に振り下ろされる大剣を両手で掴む。
俗に言う真剣白刃取りだ。
振り下ろされた一撃が強すぎて、ゴウの両足を通し地面にクレーターが作り出される。
並の者が同じことをしたら耐えきれず、ミンチになっていただろう。
ゴウは衝撃に呻きながら吐き捨てる。
「グウゥッ……! ガキの分際でどれだけの力があるんだァアッ。いくらレベルが高いからってよぉッ。こいつゴリラの生まれ変わりかなにかかよォッ!」
「あん? なんであたいが膝を突いているんだ?」
だが相手は魔人種側『マスター』でリーダーを務め、ミキ曰く『魔人種側で最もレベルが高く強い』ゴウだ。
両手で掴んだ『大剣プロメテウス』を通し、ナズナの重心を崩し、地面に膝を突かせる。
後は襲ってくる他ナズナ×4人にぶつけて自滅を促そうとしたが、
「これがメラの言っていた意味不明な攻撃か? 確かになんで力で押さえ込まれている訳じゃないのに立てないんだ? まぁ、あたいには関係ないけど! どりゃぁあぁぁぁッ!」
「!? はぁぁッ!? 嘘だろ!?」
ナズナは膝を突いた状態で、腕の力だけで刃を掴むゴウを力任せに投げる。
「崩しを力任せに破るだと!? あんな小さな体のくせにマジでどれだけ力があるんだ、クソがよォッ!」
ゴウがメラ分身体を指2本で力を使わず跪かせたのも、技術によるモノだ。
彼は力を使わず、メラ分身体の重心、体勢を狂わせ膝を突かせていたのだ。
これが武術で言う『崩し』だ。
メラ分身体でも抗えなかったこの崩しを、単純な腕力の強さだけで打ち破る。
分かり易く例えるなら『柔よく剛を制す』の技術を、それ以上のパワーで打ち破ったのだ。
ナズナは大剣を掴んだゴウごと振り回し、その勢いで地面に叩きつけようとする。
「このまま地面にぶつけ潰してやる!」
「本当にクソがァッ!」
ゴウは危険を感じて、さっさと手を放し逃れようとする。
振り回された際の遠心力を利用し、ナズナから距離をとろうとするが――他ナズナ×4人がそれを見逃さない。
「モヒカン達風に言うなら『ヒャッハー! 獲物が飛んで来たぜ』だな!」
「あいつらのマネをしていたら、エリーに怒られるぞ。あたいは知らないからな」
「あたいも知らない」
「全員あたいなんだから、知らんぷりしても意味ないだろ!」
空中にいるゴウへナズナ×4人が殺到する。
「マジでウゼェッ! クソガキがァァァッ!」
4つの剣閃。
どれも空間すら切り裂くほど鋭い一閃だが、ゴウはまともに動けない空中にありながら捌いてみせる。
ただ捌くだけではない。
受け流した勢いを殺さず、むしろ自分の力も加えて加速させてナズナ×4人に一撃ずつ入れる。
まさに攻防一体。
ゴウは見た目こそ粗暴だが、高い技術力を持つことが伺える反撃だった。
だが、ナズナは5人いるのだ。
「隙有りだぜ!」
「グガァッ!」
ゴウをぶん投げる形になったナズナが、反撃直後の僅かな隙を逃さず『大剣プロメテウス』を振りかぶり、振り下ろす!
さすがのゴウも受け流す余裕はなく両腕ガードを固めて受け止め、地面へと叩き落とされてしまう。
両腕に力を込めたお陰で切り落とされることは無かったが、地面にめり込むほどの勢いで叩きつけられた。
当然、無傷とは行かず、血を吐き出しながらも、追撃に備えて体勢を立て直す。
「クソがァッ、マジでクソだぜェッ。だが残り4人には一撃入れた際に、確かな手応えを感じた。この調子で一匹ずつ無力化していけば――」
「摂理をねじ曲げて傷を癒せ! プロメテウス!」
「…………アァァッ?」
ゴウに一撃を入れたナズナが大剣プロメテウスの力を使う。
ゴウからの反撃で傷を負ったナズナ×4人のダメージが一瞬で癒える。
正確には『癒える』というより、摂理を曲げて『傷など最初から負っていない』と世界に訴えかけ書き換えたという方が表現としては近い。
ゴウの一撃を受けたナズナ×4人が殴られた箇所を撫でながら愚痴をこぼす。
「なんか剣を振るったら、逸らされたと同時に顔を殴られたぞ。鼻の骨が折れて滅茶苦茶痛かったぞ! プロメテウスの力で傷は無かったことにされたけどな!」
「あたいは喉だった。完全に潰れて呻き声も出せなかったぞ」
「あたいは側頭部に蹴りだな。意識が飛んじゃったぞ」
「あたいも蹴りだった。しかも蹴りをガードしようとしたら、途中で蛇のようにうねって軌道が変わるとか。あいつ空中にいながら随分器用なことするな」
ゴウは数の不利を覆すため、1人1殺の気概で殺意を込めて拳、蹴りを振るった。
しっかりと手応えを感じて、殺せなくても傷を負わせて優位を作ったはずだが……彼の努力が一瞬で無に帰す。
「……おいおい、なんで傷が消えているんだァッ。マジでオマエらなんなんだよォッ!」
「だから、あたいはナズナだって言ってるだろ!」
「あれ? でもあたい、自己紹介したか?」
「しただろ! したよな?」
「いや、してないんじゃないか?」
「なら、改めて名乗るぜ! あたいは『SUR 真祖ヴァンパイア 騎士(ナイト) ナズナ レベル9999』だ! めっちゃ強いんだぞ!」
ゴウの問いにナズナが明後日な方向の返事、自己紹介をする。
(誤魔化している……っていう感じじゃないなァッ。そんな頭があるタイプには見えないしなァッ。ならレベル9999っていうのもマジかァッ……)
ゴウも最初は自身の能力を誤魔化すための演技とも考えたが、ナズナ×5人の反応からその線が無いことを確信した。
恐らくレベル9999というのも真実なのだろう。
「はぁぁぁ~~~……」
ゴウは心底面倒そうな溜息を漏らす。
「アァァッ、魔女の下にレベルカンストしている奴が居るとは……。そうなれば恐らく魔女自身、レベルカンストしているだろうな。だとしたらマジで『C』が居る可能性があるのか? クソがァッ、マジで面倒な相手じゃねぇかァッ……」
ゴウはブツブツと1人文句を漏らし、愚痴を零した。
突然、愚痴りだしたゴウを前にナズナ×5人は『?』と首を傾げる。
その仕草は非常に可愛らしい。
ナズナ×5人を相手にするゴウにとっては何の慰めにもならないが。
彼は一通りの愚痴を漏らすとと腹をくくる。
「すぅー……はぁぁぁぁぁッ……」
先程までの溜息とは違う。
ただ息を吸って吐いただけにも拘わらず、ナズナ×5人は敏感に空気の変化を感じ取った。
ゴウは空手でいう息吹を使ったのだ。
反射的に5人全員が大剣プロメテウスを構え直す。
ゴウも初めて構えを取った。
それだけで空気が真剣のように鋭くなり、ナズナ×5人の全身は切り刻まれるかのような幻覚を覚える。
「アァァァッ……いいぜ、久しぶりにオマエ達を敵として認めてやるよォ。ダイゴやギラじゃないが、たまには俺様も全力を出すのも悪くないからなァッ」
ゴウは今まで見せたことのない真剣な瞳で告げる。
「貴様達のような力任せの化け物共に、武術の極みを教えてやるよォッ」