軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21話 国境近くの村

「アアアッ! クソが、ダリィ」

「ゴウさん、そのお気持ちよく理解できます。ワタクシも早く仕事を終えて、戻り研究の続きをしたいですよ」

「……チッ!」

すぐ後ろを歩くドクの同意に、魔人国マスターをまとめるリーダー格のドレッドヘアーのゴウが、『オマエと一緒にするな』と言わんばかりに舌打ちする。

2人のさらに後方には、頭からすっぽりとマントを被った怪しげな人物が1人。さらに後ろに賊の恰好に扮した魔人国兵士が続く。

彼らはこれから魔人国領土から、山を越えて人種王国へと侵入。人種村などを襲う予定だ。

本来なら今回の『 人種(ヒューマン) 王国報復作戦』のような小規模な作戦に、マスターであるゴウとドクが参加するなどありえない。

しかし、どうも『巨塔の魔女』経由で腕が立つ配下が人種の村の護衛をしているようで、そのため魔人国兵士達は現状人種達を襲うことに失敗しており、警告を与えるどころか魔人国側が被害を出す側に回ってしまっている。

だが魔人国のメンツ的にもここで引き下がる訳にはいかない。

そこで魔人国第一王子ヴォロスはゴウ達マスターとの契約を持ち出し、彼らを参戦させたのだ。

魔人国、魔人国側『マスター』の間で交わされた契約――大雑把に説明すると『マスター側に様々な協力、資金提供などをおこなう。代わりに国家で対処できない問題が起きた場合、彼らの武力を魔人国に提供する』というものだ。

普段、ゴウ達が資金を気にせず好き勝手できるのも、魔人国のバックアップがあってこそ。

2人とも多少の文句はあるが、契約に従い動くことを受け入れたのだ。

「せめて『巨塔の魔女』経由で雇っているっぽい腕利きが、暇潰し程度の腕があることを願うだけだなァ」

「腕利きの方はゴウさんにお任せしますね。一応用心して護衛を連れて来てはいますが、本来ワタクシ自身、そこまで強くはありませんから。それに他にも依頼されたことがありますからね」

顔を仮面で隠しているドクが、背後を振り返る。

ドクのすぐ後ろに頭からすっぽりとマントを被った怪しげな人物が、彼の言う『一応用心して用意した護衛』である。

しかし彼が視線を向けたのはさらに後ろを歩く魔人国兵士だ。

彼ら魔人国兵士は、正確に言うとディアブロ子爵領土から手配された兵士である。

ドクは今回の戦力だけではなく、政治的暗躍として魔人国第一王子ヴォロスから、極秘に依頼を受けていた。

その依頼は『ディアブロ子爵領の兵士を洗脳、改造しディアブロ子爵を暗殺させる』ことだ。

ヴォロスは、ディアブロが『敵と通じているのではないか』と疑っており、彼の暗殺をドクへと依頼したのである。

ディアブロ暗殺後、彼の領地を召し上げ、魔人国が美味しく接収する予定まで組んでいた。

ヴォロスの立ち回りにゴウが呆れたほどだ。

そんなゴウが、低い声でドクへと話しかける。

「……おいィ」

「分かっていますよ。戦闘はともかく、こういうのは得意ですから。監視者の眼を塞いでおきますね」

ドクは彼の掛け声にすぐ意図を理解し、魔術を使用する。

魔人国から人種王国に侵入する山道を警戒しているライト側モンスターの眼を、ドクが誤魔化す。

お陰で彼らは特に被害を受けず、すんなりと通り抜けることが出来た。

☆ ☆ ☆

――山道を抜け、人種王国領内に入り込むと彼らは一度休憩を取る。

ゴウとドクだけなら必要はない行為だ。

魔人国兵士に足を引っ張られる形になり、ゴウが苛立ちを募らせる。

ドクは気にせず兵士達に交じって、交流を重ねつつ、『どの兵士を改造しましょうかね』とのんきに考察を楽しんでいた。

十分に休憩を得た後、ゴウ達は人種王国内にある国境近くの村へと向かう。

ゴウはその存在感を隠すつもりなど一切なく、ドクに至っては気配を殺して近付くという発想そのものがない。

当然、『巨塔の魔女』経由で腕が立つ配下――その村にいたメラはゴウ達の姿が見える前に気付き、モヒカン達へと指示を出すため家屋へと向かう。

同時に他家屋へ潜めていた分身体も自分の元へと向かわせ統合をしていく。

「ケケケケケ、おい、緊急事態だ」

「緊急事態? 何があったんですか、メラの姐さん」

モヒカンリーダーが代表して返答する。

ちょうどモヒカン達は皆で、朝食を摂っていた。

この時間は人種王国兵士の恰好をしているモヒカン達が、兜だけを取って朝食を口にしている。

最近はまったく無いが、以前は魔人国側から時折攻撃を受けていた。そのためメラ、モヒカン達は交代で食事や休憩などをとり、いつでも対応できる態勢を作り出しているのだ。

メラは真剣な表情で告げる。

「ケケケケケケ! ヤバイ気配が近付いてきている。一つは確実にアタシよりレベルが上だ。相手もそれを理解しているのか隠すつもりはないようだ……。さすがにオマエ達を守りながら撃退する自信はないから、今すぐ『巨塔』に戻っておけ」

「了解しました。では手筈通りに。メラの姐さん……お気を付けて!」

『お気を付けて!』

「ケケケケ! 当たり前だ。アタシも無理をするつもりはないさ」

モヒカン達が一斉に頭を下げると、メラは片手を軽く振る。

今回の作戦を実行するにあたり、複数のケースを想定し、対応マニュアルも作製済みだ。

仮にメラよりレベルが高い実力者が、侵入・強襲してきた場合、モヒカン達は足手まといになるためすぐさま『巨塔』へ『転移』カードを使用し撤退。

『奈落』最下層へ転移しないのは、最悪、モヒカン達が魔術、マジックアイテム、他未知の技術で追跡されている可能性があるためだ。

『巨塔』なら『巨塔の魔女』配下だから、で誤魔化しが可能だし、仮に知られても大きな問題はない。

メラはその場に残り、分身体を嗾けて出来る限り情報を収集し、撤退することになっている。

彼女が今回の作戦に選ばれた理由として、敵である魔人王国兵士達に強いインパクトを与えることが出来るというのもあるが……『UR、キメラ メラ レベル7777』から分かる通り、彼女の体は多数の生物によって構築されている。

一部を切り離して敵実力者にぶつけて戦力、技能、容姿、武装などの情報を得てから、本体のメラはすぐさま『SSR 転移』カードで逃げる手筈になっているのだ。

そのマニュアルに従い、モヒカン達は食べかけの朝食、私物、他証拠・痕跡に繋がりそうな物を兎に角『SSSR アイテムボックス』カードで得たアイテムボックスに仕舞う。

全て仕舞って確認を終えると、モヒカンリーダーが転移カードを取り出す。

「それでは自分達はお先に失礼します。『SSR 転移』、 解放(リリース) !」

屋内に集まっていたモヒカン達の姿が一瞬にして消失。

無事、彼らは『巨塔』内部へ移動した。

メラはモヒカン達を見送った後、移動してくる強い気配方角へと視線を向ける。

「ケケケケケ! あちらさんも、アタシの存在に気付きながら、逃げるそぶりも無しか……。こりゃガチでアタシより強いな。最悪、ナズナ様級を想定して、アタシも動くとしますかね。もしも大したことがなきゃ、いつも通り喰って腹の足しにするだけだけどな」

メラ自身に悲壮感はない。

分身体を切り離し戦わせ、本体であるメラは気配を殺し身を隠しつつ、最後は分身体を自爆させてもいいのだ。

彼女は知りようがないが、まるで相手側マスター、ギラのような戦い方をする訳である。

――しかし、余裕ぶっているメラだったが、この後、彼女は今まで生きていた中でも最大の衝撃を受けることになるとは、まだこの時点で知りようが無かった。