軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17話 エリーvsギラ 2

「熔けた金属の煙が凄いですわね……。『 重金雨(ヘビーメタル・レイン) 』ではなく、別の 戦略級(ストラテジー・クラス) 魔術にしておくべきだったかしら?」

エリーは自身が放った4連続の 戦略級(ストラテジー・クラス) 魔術の影響――重力攻撃魔術『大地の鎖』で押し潰されて出来たクレーターにマグマや重金雨が溜まり噴き出した煙を見て、口元をハンカチで抑えパタパタと手を振る。

生物が存在することを一切許さない地獄を作り出した張本人とは思えない、のんきな独り言だった。

マグマと重金属の煙を切り裂き、クレーターの縁に着地する影が一つ。

「 戦略級(ストラテジー・クラス) 、連発など、イカレ、魔女が!」

「あの程度の小手調べで死ぬとは思っていませんでしたが……まだまだ元気そうですわね。捕らえるためにも、もう少し痛めつけて弱らせないといけないようですわね」

ギラは『 幻想分裂(ファントム・マァトシス) 』で作り出した分身体全部を犠牲にして、4連続の 戦略級(ストラテジー・クラス) 攻撃魔術を切り抜けた。

とはいえギラ本体も無傷とは言えず、衣服、髪の毛、皮膚の一部などが焼けこげ、武器であるカタールも握りや刃部分が一部熔けて使い物にならなくなっていた。

反対にエリーは、未だ一歩も位置を移動せず、余裕の態度を崩さない。

発言通り、彼女にとってあの程度、小手調べでしかないのだ。

エリーとギラ、2人の現在の状態が如実に互いのレベル差を表現しているようだった。

にも関わらずギラは、まったく絶望していない。

むしろ、自身の勝利を確信する。

(ノータイム、4連続、 戦略級(ストラテジー・クラス) 、驚嘆。……だが、逆に言えば、魔女、典型的な固定砲台魔術師タイプ。われのカモ……ッ!)

ギラを鑑定した場合、『暗殺者』と表記される。

もっと詳しく確認することが出来たとしたら、『暗殺者(魔術師殺し)』と表記されるだろう。

『暗殺者』にいくつか種類があり、ギラは特に『魔術師を殺す』ことに特化しているのだ。

とはいえ、『魔術師を殺す』ことに特化した暗殺者で、多少のレベル差ならひっくり返す自信があっても、エリーとギラでは2000以上のレベル差があるのだ。

いくら『暗殺者(魔術師殺し)』でも限度があるだろう。

ギラが持つ、最後の『切り札』を使わなければの話だが。

ギラは手にしてたカタールを両手から投げ捨てると、最後の『切り札』を切る!

「グリード・グリード!」

ギラが叫び声を上げると、彼の背後に『大鎌を持つボロ布に包まれた骸骨の死神』が姿を現す。

ギラは躊躇わず死神から大鎌を受け取ると、刃部分を下に地面へと叩きつけ詠唱を開始する。

「死界へ至る道は狂狼の死骸が示す肋骨に宿る! 老いろ! 正しく賢者を殺せ! 愚者の坂道(フール・スロープ) !」

「…………」

エリーがギラの行動に身構え、彼の動きに注意を払っていたが、それ以上は一見何も起きていない。

暫く警戒していたエリーは、思わず小首を傾げて問う。

「……? 何も起きませんわよ? 失敗したのですの?」

「失敗、違う。今、分かる!」

ギラは手にした大鎌を改めて振りかざし、エリーへと襲いかかる。

「また似たようなマネを……。芸がありませんわね。野良犬でももう少し多芸ですわよ」

彼女は呆れながら、肩をすくめるが、ギラを捕らえるため攻撃の手は抜かない。

「『ドラゴンの 顎門(アギト) 』、『 時空の猟犬(ヘル・ハウンド) 』、『 粘菌細胞(ベノム) 』、『 氷の世界(アイスワールド) 』」

再び4連続 戦略級(ストラテジー・クラス) 攻撃魔術を放つ。

『ドラゴンの 顎門(アギト) 』は、文字通り、敵単体に対して地面から土製のドラゴンの 顎門(アギト) が襲いかかる。素材は土だが攻撃力は術者の魔力によって強度が増大するため、本物のドラゴンの 顎門(アギト) を超える強力な攻撃能力を有してる。

『 時空の猟犬(ヘル・ハウンド) 』は、5匹の大型猟犬が敵へと襲いかかる。一度この猟犬に捕捉されると、例え地の果てに逃げても全匹倒さない限り、時空を越えて辿り着き殺そうとする。唯一助かる方法は倒すことだけ。

『 粘菌細胞(ベノム) 』は、体を侵食するカビ胞子攻撃だ。毒攻撃ではないため、毒を消す薬、魔術では消えない継続ダメージを敵に与えることが出来る。異常状態全てを解除させる力でしか、回復出来ない。

最後の『 氷の世界(アイスワールド) 』は、以前、ライトがドワーフ王国の過去文明遺跡で使用した『SSSR 氷の世界(アイスワールド) 』と同じ効果を持つ。

『ドラゴンの 顎門(アギト) 』と『 時空の猟犬(ヘル・ハウンド) 』で足止めして、『 粘菌細胞(ベノム) 』で弱らせ、『 氷の世界(アイスワールド) 』でギラを氷でガチガチに固めて捕らえようというのがエリーの狙いである。

しかしギラは分身体も出さず、地面から突然現れた巨大なドラゴンの 顎門(アギト) に飲み込まれたが、手にした大鎌でバラバラに切断して脱出。

一軒家のように巨大な5匹の黒い猟犬がタイミングを合わせてギラに襲いかかり、動きを押さえ込もうとするが、それすら切り裂きエリーとの距離を縮めようとする。

『 粘菌細胞(ベノム) 』、『 氷の世界(アイスワールド) 』は懐から取り出した防壁と結界を作成するマジックアイテムで凌ぐ。

ギラは自身が手にする大鎌が届く距離まで近付くため、必死に足掻く。

そんな必死な様子のギラを前に、並の者なら足掻く姿を小馬鹿にするが――エリーは警戒心を強める。

(あの大鎌を地面に打ち付けて詠唱しただけで以後、変化無し。死神も大鎌を渡した後、消失し、攻撃手段も物理的な力のみで、他異常は見あたりませんわ……。はったりにしては演出がクド過ぎますし。もしはったりでないとしたら――)

警戒心を上げたエリーは、ギラを弱らせ、捕らえるため 戦略級(ストラテジー・クラス) 攻撃魔術を追加で連発する。

今度は足止めではなく、ギラが死ぬ一歩手前でも構わない高い威力の攻撃魔術を選択した。

「『 太陽落とし(プラズマ・ダウン) ――ッゥ!?」

途中で異変に気付く。

確かに攻撃魔術を発動したにもかかわらず、放つことが出来なかったのだ。

魔術を放つことが出来なかったエリーが驚愕しつつも、すぐさまその原因に気が付く。

「!? なるほど、先程、大鎌を地面に打ち付けたのはそういう意味があったんですの!」

「魔女、感心、している場合、違う! その首、もらう!」

大鎌を手にしたギラが、攻撃魔術の失敗により、エリーを間合いに捕らえる。

ギラの一閃をエリーは警戒していたのと、レベル9999の身体能力で紙一重の距離で回避。

魔術師帽子を押さえつつ、空中で一回転して、片手で地面を弾きギラから距離を取る。

距離を取りつつ、エリーは興味深そうに彼へと問う。

「わたくしは確かに攻撃魔術を発動させましたわ。しっかり、魔力の流れもありましたの。でも発動しなかった。この感覚に近いのをわたくし知っていますわ。ダンジョンなどで稀に存在する『魔術禁止範囲』などに近いですの」

「……正解、さすが魔女、察しが良い」

エリーの洞察力に、今度はギラが余裕の態度で嗜虐的な笑みを作る。

「……でも、その程度でわたくしをどうにか出来るとでも? 本当にお馬鹿さんな『雑魚』ですわね」