作品タイトル不明
16話 エリーvsギラ 1
「わたくしは『SUR、禁忌の魔女エリー レベル9999』。ライト 神様(しんさま) の僕、将来の后ですの。以後、お見知りおきを、ですわ」
「SUR、れ、レベル9999!? まじょ……『巨塔の魔女』か!?」
ギラが鋭く細い目を限界まで広げ、エリーの自己紹介に驚愕。
彼女は気にせず『巨塔の魔女』という事実を認める。
「そうですわ。わたくしが『巨塔の魔女』ですの。そしてライト 神様(しんさま) の指示に従いギラさん、貴方を捕らえにきましたの。わたくし、魔術にはいささか自信がありまして。『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』地下から一定方向に流れ続ける微弱な魔力を関知して、ギラさんの本体の位置を特定させて頂きましたわ。後はギラさん本体に逃げられないように、こうして転移阻害魔術が発動したこの地下にお連れしましたの。遅くなってしまいましたが、淑女らしからぬ強引な行動に謝罪を致しますわ」
反省の欠片一つも無いにもかかわらず、上から目線の軽い謝罪の言葉。
完全に彼女は『自分よりギラが下だ』と態度で示していた。
ギラは衝撃的な複数の情報に驚き浮き足だってしまったが、気持ちを立て直す。
だが気持ちを立て直すと、次々に疑問が湧いてきた。
(レベル9999、はったり? だが、威圧感、確かに感じる。鑑定、レベル差のせいか弾かれる。『アバターゴーレム』と向き合った、始末したダークに近い。魔術師だから、絶対ではないが……。はったりではない、だとしたら、魔女の後ろ、さらに強者、居ることなる。まさか……『C』!? いや、だとしたら『C』自身が動けば、全て解決、するはず。なら、『らいとしん』、『C』と同格、近い存在?)
ギラは既に 戦略級(ストラテジー・クラス) 上位攻撃魔術、 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) で始末したと考えているダークを、『ライト 神様(しんさま) 』と結びつけることが出来ず、エリーが付き従う存在を『C』と同格、近い上位者と考え出す。
(だとしたら、なぜ……)
仮定に仮定を重ねて、ギラがいくつかの推論を立てるが、そうすると追加で新しい疑問が出てくる。
ギラは思わず声に出して問う。
「なぜ、オマエだけ?」
「? どういう意味ですの?」
エリーは突然の質問に意味が分からず、小首を傾げる。
その仕草すら非常に可愛らしかった。
もし地上の人種男性が目にしたら、老人、青年、少年関係なく恋に落ちてしまうほど可愛らしい。
ギラとしては未知数な相手過ぎて、恋だの愛だの抱く余地は無いが。
ギラは警戒心を強めつつ、改めて素速く周囲を確認してから再度問う。
「魔女、どうやら、われより、確かにレベル高い。だが、その程度、われ、捕らえるつもりか? 他、仲間、どうして連れてこない。そちらの方、確実」
「ああ、そういう意味でしたの」
エリーはようやく意図を理解し、軽く手を叩く。
彼女は蠱惑的な満面の笑顔で答える。
「他の方もいらっしゃいますが、雑魚相手にお願いするのは気が引けてしまって……。ましてやこの程度のネズミを捕らえるのにライト神様のお手をわずらわせるなど不敬ですわ。ですから、わたくし1人で捕らえにきましたの」
エリーはあからさまに見下した態度、台詞で返答した。
周囲を警戒し、奇襲などに備えていたギラは、彼女の返答にカッと頭が熱くなる。
ここまで分かり易く自分自身を見下してきた者は今までいなかったからだ。
ギラのプライドが明確に逆撫でされた。
心底苛立ちながらギラが吐き捨てる。
「調子に乗るなよ、売女。そちら、レベル高いからと言って、われ、殺せないと、勘違いしているのか? 貴様、魔女風情、殺すことなど、難しくない。足、先から刻んで、われ、望む台詞を、涙ながら、囀らせてやろうか?」
「あら、怖いですわ。か弱い女性にそんな口を利くなんて。もっとも『そんなこと出来る訳がない』のでどうでもいいことですが」
「殺す……ッ。自分、腑、何色か、どんな味か、分からせながら、知っている情報、全て吐き出させ殺す!」
「出来るなら、どうぞですわ。もっともこそこそ隠れるしか能がないネズミさんに、そんなこと本当に出来るのか疑問を抱かずにはいられませんけど。せいぜい頑張ってくださいましね」
ギラは手に取れそうな濃厚な殺気をエリーへ向けて叩きつける。
しかし彼女はギラの殺気などそよ風程度にも感じず、涼しい顔で受け流す。さらに嫌味を飛ばし、追加の挑発までした。
「殺す! 魔女、絶対、殺す!」
ギラは殺意を推進力に変え、いつの間にか両手に握り締めた奇妙な刃――カタールを手に突撃。
それだけでは終わらない。
「 幻想分裂(ファントム・マァトシス) !」
「複数に分裂? 大道芸としては面白いですが―― 生け贄の木々(サクル・アルボル) !」
突撃しつつ、10人に分身し突撃してくるギラへ向けて、エリーはほんの少しだけ驚きはしたがすぐに 戦略級(ストラテジー・クラス) 攻撃魔術『 生け贄の木々(サクル・アルボル) 』によって足止めを狙う。
エリーが使った魔術は攻めてくる敵を攻撃し、足止めをする木々を作り出す 戦略級(ストラテジー・クラス) の攻撃魔術だ。
この魔術攻撃を受けると、敵の体を材料に新しい木々が生まれ増殖する。
複数の敵を足止めするには非常に有効な攻撃魔術だが――。
「!? 生け贄の木々(サクル・アルボル) を切断ですの!?」
『 幻想分裂(ファントム・マァトシス) 』は魔力で攻撃可能な分身体を作り出すことが出来る。
職業『暗殺者』の中でも極々高位レベルの者が得られる特殊スキルだ。
故にギラへと群がる 生け贄の木々(サクル・アルボル) の枝などを切り払うことが出来るのである。
だが、エリーも負けてはいない。
「風神乱舞!」
『 生け贄の木々(サクル・アルボル) 』での足止めが難しいと判断してすぐさま、新しい 戦略級(ストラテジー・クラス) 攻撃魔術『風神乱舞』を放つ。
極大の風属性攻撃魔術で相手を切り刻むのだが、ギラを倒すためではなく吹き飛ばし、自分から距離を取らせるのを目的に使う。
『ぐぅ!』
狙い通りギラは木の葉のように吹き飛ばされ、大きく距離を取らされる。身長が低く、体重の軽いギラには殊の外効果が高かった。
とはいえ吹き飛ばし距離を開けただけ。
エリーは攻撃の手を弛めない。
「精霊召喚、代理詠唱、並列魔術写本、起動ワード『詠え。花を枯らせ。終わりよ咲き誇れ!』 4(フィーア) !」
エリーの周囲を回る4冊の魔術写本が、彼女のかけ声と同時に動き、高速でそのページがめくられていく。
「『城塞落とし』! 『 赤き津波(マグマ・ウェーブ) 』! 『 重金雨(ヘビーメタル・レイン) 』! 『大地の鎖』!」
エリーが精霊の力と彼女の魔術本に補助をさせつつ、 戦略級(ストラテジー・クラス) 魔術を4発ほぼ同時に放つ。
『城塞落とし』は、文字通り城塞を召喚し、地上へと落下させる物理攻撃魔術だ。
『 大地の津波(マグマ・ウェーブ) 』は、マグマを津波のように敵へと向けて襲わせる魔術。
『 重金雨(ヘビーメタル・レイン) 』は、熔けた金属が雨のように降り注ぐ範囲攻撃魔術。
最後の『大地の鎖』は、重力魔術で広範囲に渡ってクレーターが出来るほどの重力で敵を押しつぶす。
4つとも 戦略級(ストラテジー・クラス) の中でも威力が高い攻撃魔術だ。
地下予備の決闘場で神話のような戦いが繰り広げられる。