作品タイトル不明
13話 vsギラ 4
「お人形遊びは終わりだ、ギラ。それとも貴様はこそこそ隠れて戦うことしか出来ない腰抜けなのか」
「…………」
僕は『黒の道化師』の仮面を外し、レベルの威圧感も隠さず解放。
ギラは敏感に自分とのレベル差に気付き怯えて数歩後ずさり、さらに僕の指摘に黙り込み、細い目をさらに細める。
僕はさらに言葉を重ねる。
「最初に違和感を抱いたのは、こうも簡単に姿を現して、どんな罠が仕掛けられているのかも分からないのに大人しく敵地へ転移した時だ」
もちろん、エリーがエルフ女王国に働きかけて、エルフ種達を使って散々煽ったのが余程頭に来ていた可能性もあるが……。
もし僕が同じ立場ならば、自分の命が懸かっているのだからもっと慎重な行動をするだろう。
にもかかわらず、『これほど簡単に付いてくるなんて』と内心、疑問を抱いたのだ
一応、姿を現したギラが偽者の可能性もあったため、エリーには僕達を監視する者達や、鑑定で彼をチェック、周囲を索敵もしてもらった。
ギラを絶対に逃がさないための保険である。
その時点で問題はなかったのが、逆に僕の警戒心を高めた。
「確信を得たのは僕の攻撃魔術を喰って、吐き出した時だ。 恩恵(ギフト) の可能性もなくはないけど……いくらなんでも人種が出来ることじゃない。なによりお前には、『切断を楽しむ癖』があるはず。なのに攻撃魔術を喰って吐き出したり、口で噛みつき殺そうとしたりするなんて違和感が強すぎる」
恩恵(ギフト) は、持つ者の特性そのものと言える。
存在隠蔽のような力を持つ大爪ならギラという『暗殺者』が持つ力としてまだ納得が出来るが、攻撃魔術を喰って吐き出したり、口で噛みつくのはいくらなんでも様々な意味で『違う』だろう。
しかし鑑定では、ギラ本人に間違いない。
ミキの情報から切断癖云々を無視すれば言動に矛盾もなかった。
『UR、 2つ目の影(ダブル・シャドー) 』のような物で、自分とそっくりそのまま同じ人物を作った偽者だとしても齟齬が多過ぎる。
ならば残る可能性はあまり多くはない。
考えられるとして目の前に居るのは魔術、マジックアイテム等で遠距離から動かしているゴーレムのようなモノではないか?
それなら、今までの現象についても色々説明が付く。
「攻撃魔術を喰って吐き出すのもゴーレムが持つ機能なら、納得はできる。生物であれば魔術を吸い込んだ時点でダメージを食らうが、過去文明等の特殊なゴーレムならば空間をねじ曲げる等で貯め込んだり反射することも可能だろう。罠の可能性が高い敵地にほぼ無警戒で乗り込んできたのも、『最悪の場合でも遠隔操作で動かすゴーレムが壊される程度で済む』。だから、素直に転移されたんだと推測出来たんだ」
「……最悪、まさか、こんなガキ、われ、手札、見破られるなんて」
ギラ――いや、偽ギラは見破られた悔しさを滲ませつつ僕の指摘を認める。
「長年、ゴウ達にも、見破られなかった。過去文明、高位マジックアイテム、この短時間で見破る、オマエ、初めて。称賛、値する。さらに、その威圧感……どれほど、レベル差、あるか、分からない。オマエ、本当に、人種か? 『マスター』だとしても、どうやって短期間、そこまでレベル、あげられた?」
「先程も言ったが、敵にわざわざ手の内を明かす馬鹿はいないよ」
「…………」
ギラは人形越しにも拘わらず、苛立ちの表情、雰囲気をあからさまに漏らす。
(正直、あれが人形だと教えられても、表情の動きや呼吸音についても見分けが付かないし、攻撃を打ちこんだ際の感触なんかも全部生身と変わらないことを考えると、凄い技術だな……)
過去文明には、現在でも再現が出来ない道具、武器、マジックアイテムがあることは知っていたが……。
ギラが使用している 人形(ゴーレム) には相当高度な技術が使用されているらしい。
まさか鑑定すら誤魔化すレベルだとは。
そんなギラは敵意を剥き出しにしていたが、途中で諦めたように肩の力を抜く。
大爪を地面に突き刺し、体を持ち上げていたが、それも止めて両足で立つ。
「われの本体以上に、レベル、高い。この体、駆使しても、敗北必然。足掻くだけ無駄」
「……大人しく投降するなら、情報を聞き出すためにも多少の手心は加えてやるけど?」
「投降? 否」
ギラは『レベル差が有り過ぎて勝てない』と自分で認めたにもかかわらず、投降はしないと明確に拒否。
彼は鼻で笑った後、腹部の衣服を破る。
さらに腹部を自分で切り裂き、中身を露出。
「!?」
腹部中身はちゃんと血、皮膚、脂肪、筋肉、内臓のようなモノの他に、機械歯車、チューブなどもあったが、一番目を引いたのは大きな魔石だ。
地上ではまずお目にかかれないレベルの魔石が腹部に設置されていた。
あれが 人形(ゴーレム) を動かす核、エネルギーなのだろうか?
だが、そんな学術的考察をしている暇はない。
「 戦略級(ストラテジー・クラス) 上位、『 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) 』!」
人形(ゴーレム) を動かす核のようなモノが、ギラの言葉と同時に罅が入り、砕けていく。
同時に彼を中心に黒い穴、 戦略級(ストラテジー・クラス) 上位、『 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) 』が地下空間に広がっていく。
「この擬態では、勝てない。だから、どこか遠い、宇宙、果てまで、飲み込まれて、死ね!」
どうやらギラは 人形(ゴーレム) の核を犠牲にすることで、エリーのようにノータイムで 戦略級(ストラテジー・クラス) の攻撃魔術を発動したようだ。
しかも昔、エリーの魔術授業で習った知識によれば『 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) 』はただの攻撃魔術ではない。
彼女自身、『 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) 』を使用できるが、その光さえ通さない黒い虚ろな穴がどこに繋がっているかは知らないとか。
なのでいくら僕がレベル9999でも、『 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) 』に飲み込まれたらどうなるか分からない。
他レベル9999のメイ達で試す訳にはいかないからだ。
さらに――倒した筈のギラ部下達の死体が突然動きだし、僕達へと襲いかかる。
「こ奴ら! どうしてこんな弱すぎる奴らを連れてきたのかと訝しんでいたが、自爆する際の足止めとして使うつもりだったのか! いくらなんでも外道過ぎるぞ!」
ゴールドがギラの狙いに気付き、不快感を叫ぶ。
倒れていた彼の部下達は確かに全員息の根を止めていた。その辺りを見過ごすほど僕達は甘くない。
しかしギラは死んだ状態でも部下を動かすよう細工していたようだ。
故に自爆の『 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) 』と同時に、僕達を飲み込ませるため、自身に近付かせないよう死んだ状態の部下達を動かし襲わせてきた。
ネムム、ゴールドが僕を庇うようにギラの部下達を切り払い、盾で吹き飛ばす。
そうこうしている間に『 黒き虚ろの穴(ブラック・ホール) 』が迫るが――。
僕は特に慌てず、むしろギラのやり口に苛立ちを覚える。
僕達が彼の部下を倒した後、ギラは自分の部下達を足蹴にしていた。
さらには最後にはその死体まで操り、辱めるなんて……。
本当に不快感を覚える。
「お前は僕の気分を悪くするのが得意だな。本当に気分が悪い」
僕は心底不機嫌に、1枚のURカードを取り出し、 解放(リリース) した。