軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9話 vsギラ 1

魔人国首都から一瞬で、エリーが準備した決闘場へと移動する。

「…………」

同時に転移した敵『ますたー』であるギラは、フードを被って表情は分からないが、移動してきた場所である決闘場をぐるりと見回す。

城が3つは楽に入りそうなほど広い空間に、壁には無駄に力が入ったデザインが彫り込まれ、祭壇のようなものや豪奢な玉座などが設置されていた。

これらの装飾は僕が指示を出した訳ではない。

この場を準備したエリー曰く、『ライト 神様(しんさま) が戦うのに相応しい場を用意するため、頑張りましたの』とのことだ。

あくまでエリーの趣味である。

僕的には邪魔の入らない、転移で逃げられない場であれば良かったのだが……まさかここまで絢爛豪華な場を準備されるとは思わなかった。

その点について怒る意味もないため、笑って受け流したが。

ギラが改めて向き直る。

「ここ、決闘場か? ここが、オマエ達、墓標、いいのか?」

「ああ、問題ないよ。むしろこの場は君達の墓標になると思うけどね」

「そうか、なら、死ね!」

「!?」

強烈な殺意。

どうやら今の今まで我慢していた殺意を、『準備は整った』と聞き解放したらしい。

ギラとしては、散々コケにされた以上、僕達側の土俵に立ち完膚無きまでに叩き潰すのが狙いだったようだ。

殺意に反応したのか、彼の被っていたフードが捲れる。

一切、何の動きも見せていないのにも関わらずだ。

反射的に僕はギラとの間に 神葬(しんそう) グングニールを割り込ませる!

「ぐぅッ!?」

「主!」

「ら、ダーク様!?」

ギラは一切何もしていないのに、僕はまるで蹴られたボールの如く吹き飛ばされてしまう。

レベル5000のゴールドとネムムもギラの攻撃に反応できず、僕への一撃を許し、ただ声をあげるしかなかった。

僕は体勢を立て直しつつ、ガリガリとエリーが綺麗に平らにした地面を削りながら、無事をアピールする。

「大丈夫、僕は無事だよ! でも、気を付けろ! こいつ……ギラの攻撃は何かおかしい!」

そうおかしいのだ。

ギラはレベル7000ほどで、ミキから聞いていた話の通り。

鑑定した限り、他ステータスも怪しい所がない。

にもかかわらずレベル9999の僕が、『ギラはどのような攻撃をしたのか』一切分からなかった。さらに威力は十分で、 神葬(しんそう) グングニールは折れずとも、僕の腕は衝撃で痺れる。

初撃を完全に防げたのも、たまたまタイミングが良かったに過ぎない。

ミキが『ギラはよく斬る感触を楽しむため、レベルアップ馬鹿のダイゴちゃんのようにダンジョンに潜っていたから、戦っている所を見たことは何度かあるわぁ。けど、いつのまにか敵が倒れているのよぉ。どういう武器なのかも分からないし、もしかしたら攻撃魔術なのかも分からないわぁ。見た目が暗殺者っぽいから多分、暗器とかじゃないかしらぁ?』と口にしていたため、注意を払っていたのに、目の前で見てもどのような攻撃を受けたのか一切分からなかった。

(これは想定した以上の相手かもしれないな……)

僕は胸中で警戒していると、ギラが目を殺意で滾らせて口元を隠したスカーフ越しに、

「よくも、われ、コケにした。貴様達、殺す、楽しみにしていた。苦しめて、殺す。バラバラにして、モンスター、エサにして、そのモンスターも殺す。魔女も、殺す。巨塔、居る生物、全部、殺す」

溜まりに溜まった鬱憤を吐き出すようにギラが語った。

彼の言葉に従うように背後にいたボロ布を被った者達が、勢いよく僕達に向かって駆け出してくる。

『アアァアァアアァァア!』

生物とはとても思えない不気味な声をあげつつ、馬鹿正直に突撃してくる。

「武器も持たずただ突撃してくるとは! 我輩達を些か侮り過ぎではないか!」

ゴールドが声をあげ、手にした盾で群がるボロ布達を吹き飛ばし、剣で薙ぐ。

低レベルな相手のため、レベル5000のゴールドの敵ではないが……。

「!? 貴様! 少し前に主を襲ったピエロではないか!?」

「ァアァアアァァ……」

ゴールドが突撃してきた敵を倒していると、ボロ布が捲れ……そのうちの1人が見知った者だった。

最初に僕の命を狙った『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の1人、『マッドピエロ』だ。

彼だけではない。

ボロ布が捲れると、他にも『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の面々がいた。

当然中には、面識のないゴブリンのような顔をした魔人種青年も混じっている。

皆、共通して目に意思がなく、まるで操り人形のように僕達を襲ってくるのだ。

ゴブリン顔青年などはともかく、『 死剣(モルテ・スパーダ) 』達はエリーが情報を抜き出した後、 脳味噌(記憶) を破壊。

廃人化させて運動能力を奪い、会話なども出来なくさせたのだが……。

にもかかわらず、彼らは僕達に向かって以前よりも鋭い動きで襲いかかってくる。

「貴様達のような不気味な下賎の者を、ダーク様に近づけさせるか!」

ネムムがそんな彼らを両手ナイフで首などを切断し、無力化していく。

多少以前と比べて動きが鋭くなってもネムムの相手にはならないが、

「ネムム、後ろに飛べ!」

「!?」

ネムムは僕の叫びにすぐさま後方へと飛ぶ。

同時に彼女の胸元が切られ――肌を露出させる。

ギラが連れてきた部下達の影に隠れて接近。

ネムムに攻撃を仕掛けてきたのだ。

もし反応が後少し遅れていたら、深い傷を負っていただろう。

「わははははははははは! 危なかったなネムム! もう少しお主の胸が大きかったら酷い事になっていたぞ!」

「だ、黙れゴールド! こんな時まで破廉恥なことを言うな! 馬鹿者!」

ネムムに怪我は無いようだが、彼女は両手で胸元を押さえ、顔を紅く染めながらゴールドに怒鳴り返した。

気が抜けそうな2人のやりとりを耳にしつつ、僕は心の中で呟く。

(ギラの認識できない不可解な攻撃は厄介だな。確実に彼を釣り出すため『黒の道化師』メンバー全員で参戦したけれど、ネムムとゴールドのレベルよりも相手の方が上。気をつけないとな)

相手は約レベル7000。

ネムム、ゴールドはレベル5000のため、やや力不足だ。

(しかも雰囲気的に、ギラが連れてきた部下達も僕達を襲わせて、その影から攻撃をするために連れてきた――だけでもなさそうだし。不明な能力を持っている分、実レベルよりも警戒しなければならない相手だ)

僕は再び部下の群に気配を消して隠れるギラの評価を一段階上げる。

とはいえ、やることは変わりない。

(情報を引き出すため、ダメージを与えて戦闘能力を喪失させて捕らえるだけだ。……一応、保険のためにもエリーに念話で連絡をしておくけど)

僕は念には念を入れて、戦闘をこなしつつエリーへと連絡を入れる。