作品タイトル不明
6話 チンドン屋
「…………」
「ひぐぅ、いぎぃ、あぁぁ……」
室内の一角で男性の壊れた声と、生きたまま体内部を弄る水音が響く。
まだ生きている相手を麻酔も無しに弄っているのは、魔人国側マスターのギラだ。
彼は冒険者ダークの命を狙い返り討ちにあった『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』、『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の1人『マッドピエロ』の体を弄くり回していた。
マッドピエロだけではない。
彼の改造が終わったら他『 死剣(モルテ・スパーダ) 』にも手を付けるため、部屋の隅に転がしている。
彼らは冒険者A級ダークの暗殺に失敗しただけではなく、廃人になった上に、魔人国首都の目立つ場所で今までの悪行が記された看板付きで晒された。
『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』を立ち上げたギラの顔を滅茶苦茶に潰す形でだ。
ここまでメンツを潰されたギラは黙っていられなかった。
魔人国マスターの1人ドクから招集の連絡が来ていたが無視して、暗殺をものの見事に失敗した『 死剣(モルテ・スパーダ) 』達には、罰と腹いせも兼ねて肉体を生きたまま改造中だ。
自分を舐めたダークを始末するための準備を続ける。
(……恐らく、ダーク、だけ、違う。『巨塔の魔女』も、噛んでいる)
『最速で冒険者A級』になったとはいえパーティーメンバーは皆、 人種(ヒューマン) で、そんな彼ら全員が『マスター』だとは考え辛い。
『巨塔の魔女』がマスターで、裏からダーク達を支援している方がしっくりと来る。
ギラが『 死剣(モルテ・スパーダ) 』を嗾ける際、『巨塔の魔女』を揺さぶることが目的の一つだった。
結果、部下達はものの見事に返り討ちにあった訳だが……。
お陰でギラは確信を得る。
(恐らく『巨塔の魔女』、マスター。でなければ人種王国、行った部下達、国境を越えた形跡なく、魔人国首都、あんな無様、晒さない)
『巨塔の魔女』がダークを庇護して、手を出した『 死剣(モルテ・スパーダ) 』を撃退し、彼女の魔術、マジックアイテム、他方法で彼らを魔人国首都まで移動させたのだろう。
でなければ国境を越えた情報が必ず入るからだ。
(ダーク、『巨塔の魔女』、舐めたマネ。メンツ、潰した罪。絶対、許さない……ッ!)
『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』のボスとして、『巨塔の魔女』暗殺の依頼は複数の筋から受けていた。
しかし、相手はエルフ女王国原生林奥地にある『巨塔』に篭もっている。
そこまで侵入して魔女を暗殺するのはいくら何でも面倒だ、と今までは思っていた。金をいくら詰まれても割に合わない。
故に依頼は受けず無視していたのだが……。
(舐めた態度取った以上、殺す。魔女、腑、どんな手応え、匂い、するか楽しみ)
ギラはスカーフで隠した口元から鬱屈した笑い声を漏らす。
(相手、『巨塔の魔女』、魔女、魔術師相手なら、われ、得意相手。多少、レベル差あっても、ひっくり返す、自信ある。もし格下だったら、嬲り殺す。格上だったら、足下、掬われる時、絶望顔、楽しみ)
ダークを始末し終えたら、『巨塔の魔女』を殺しに行き、その際、多少自分よりレベルが上でも確実に殺す自信がギラにはあった。
その際、格下だったら『巨塔の魔女』を嬲る姿を、格上だったら足下を掬って絶望する様を想像し笑い出す。
聞く者が居たら、背中を振るわせるほどおぞましさを感じていただろう。
(最悪、組織、潰して、新しく、すればいい。 部下(ゴミ) など、いくらでも、補充、容易)
メンツを潰され怒り心頭だが、だからと言って無謀な突撃をするほど冷静さを失った訳ではない。
このまま『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』のメンツが潰れたままでも、最悪、組織を潰して新しく立て直せばいい。
あくまで『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』はギラの趣味と実益を兼ねて作られた組織だ。
メンツを潰され看板が汚れたのならば、潰して1から新たに作り出してもいい。
ギラ自身、別に『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』へ愛着が有るわけではないのだ。
使っていた歯ブラシがヨレヨレになったら捨てて、新しいのに買い換える程度の感覚しかなかった。
(それにわれ、何があっても、死なない。所詮、遊技)
また例え何が起きてもギラ自身が死なない絶対の自信を持っていた。
(とはいえ、あまり、切り札、奥の手、切りたくない。切り札、タダでない)
彼自身、自分より強い者が居ることは知っているが、それでも『自分は死なない。所詮、今やっていることも遊技に等しい』と心の中で断言する。
それは、それだけ自信を持つ『切り札』を持っているということ。
ミキも以前口にしたが、『ミキィだってまだ誰にも明かしていないちょー凄い奥の手があるしぃ』と自慢気に胸を張っていた。
レベルだけ見るならギラとミキは9000台には届いていないが、工夫を凝らし独自の奥の手を生み出しているということなのだろう。
「? 外、騒がしい、いや、五月蠅い」
ギラが今後の方針を考え、部下を改造していると……なにやら外が騒がしいを越えて五月蠅かった。
現在、ギラは魔人国首都スラムにある『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』の屋敷の地下一室で元『 死剣(モルテ・スパーダ) 』達を改造していた。
そんな地下まで音が届くほど外が五月蠅いのだ。
スラムは静寂な場所ではないが、ここまで騒がしいのも珍しい。
(抗争、起きた? いや、 処刑人(ブロー) 、屋敷、側で騒ぐ馬鹿、いない)
ダーク暗殺失敗に関連する一連のことによって権威が落ちているとはいえ、 処刑人(ブロー) 屋敷側で騒ぐスラム住人はいない。
興味を掻き立てられ、地下を出て外の様子を窺いに向かう。
さすがに屋敷に残っていた 処刑人(ブロー) 団員達も外の騒ぎに気付き、様子を窺っていた。
ギラも近くの窓から外の様子を窺う。
外には涙目で、派手に着飾ったエルフ種達が、楽器、チラシ、看板を抱えて 処刑人(ブロー) 屋敷側を練り歩く。
彼らは喉が嗄れる勢いで、声をあげていた。
『――日後、首都大通り噴水で待つ! 繰り返す! 魔人国ますたーギラに告ぐ! 貴殿が腰抜けの臆病なクソ雑魚ナメクジ暗殺者でなければ――』
なぜかエルフ種達がチンドン屋のように派手な恰好をし、楽器を打ち鳴らし、声を張り上げながらギラを挑発しつつ、決闘場所の日時を全力で伝えていた。
ギラは彼らの叫ぶ内容を理解すると……最初、意識が真っ白になるほどの怒りを覚えたのだった。