軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3話 魔人国側マスターへの要請

ディアブロと会話した後日、魔人国第一王子であるヴォロスは魔人国マスターであるドクを通して他の魔人国側マスター達に連絡を入れ、王城にある執務室に彼らを集める。

魔人国側マスター達……と言っても、2人しか集まらなかった。

『精霊双剣』を持つダイゴは、『巨塔の魔女』に1人突撃して死亡。

『巨塔』調査に向かったミキは消息不明――彼らは知らないがライト達に捕らえられて捕虜として扱われている。

ギラは彼が立ち上げた『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』の幹部『 死剣(モルテ・スパーダ) 』達が冒険者ダーク(ライト)の暗殺に失敗。盛大にメンツを汚されたため、その報復に動いている。

そのため連絡をしても無視して意図的に顔を出さない。

結果、ヴォロス第一王子の前にはゴウとドク、2名しか魔人国側マスターが集まらなかった。

ヴォロスは苛立ちながらも、執務室机に座り、ギラの欠席には理解を示す。

「我の呼び出しを無視するなど甚だ不快だが……小さいながら組織を束ねるギラの心情は理解出来る……。甚だ不快だが」

「アアアッ、その溢れ出る慈愛ってやつをヨォ。もう少しこっちに回しても罰は当たらないと思うんだがナァ」

「ゴウさんの言う通りですよ。折角、研究が良いところでしたのに」

魔人国国王は病気で床に伏せており、実質国家運営をおこなっている第一王子ヴォロスを前にしても、魔人国マスターである2人はいつも通りの態度を崩さない。

ゴウはソファーに腰を下ろし、長い足をテーブルの上に行儀悪く乗せている。

ドクは 人種(ヒューマン) の血で汚された白衣を着衣したまま、1人掛けソファーが汚れるのも気にせず座っていた。

プライドが高いヴォロスからすれば非常に苛立つ光景だが、彼らに今更言っても無駄だと理解しているため流す。

代わりに要求を突きつけた。

「悪いが貴様らに与える慈愛など持ち合わせていない。あるのは互いに交わした契約のみだ」

ヴォロスがゴウ、ドクを睨むように視線を向ける。

「おまえ達も知っているだろうが、現在、我が国は 人種(ヒューマン) 王国への懲罰をおこなっている。しかし現状、上手くいっていない。どうも 人種(ヒューマン) 王国の リリス女王(あばずれ) は、尻軽な本性を強かに利用して『巨塔の魔女』の尻をタップリと舐め回し、腕が立つ配下を借り受けているようだ」

ヴォロスは忌々しそうに顔を歪ませる。

「悔しい話ではあるが……現状の我々では手が出しようがない相手のようだ。だが、魔人国のメンツ的にも『手を引く』という選択肢はありえん! そのため、契約に従い貴様達には『魔女の配下』を排除してもらうぞ」

「アアアッ、くそだりー契約を持ち出しやがってヨォ……。雑魚の始末程度に俺様をいちいち呼び出すナァ。雑魚は雑魚同士で始末しあってろヨォ」

「ワタクシも 人種(ヒューマン) の未来を切り開く研究で忙しいのですが……」

「おまえ達は……ッ! 契約は契約だ! 普段便宜を図っている対価として、しっかりとやってもらうぞ!」

魔人国、魔人国側『マスター』の間で交わされた契約――大雑把に説明すると『マスター側に様々な協力、資金提供などをおこなう。代わりに国家で対処できない問題が起きた場合、彼らの武力を魔人国に提供する』というものだ。

普段、ゴウ達が資金を気にせず好き勝手できるのも、魔人国のバックアップがあってこそだ。

魔人国側としても国家で対処できない問題が起きた際、保険があるのは非常に有りがたかった。

竜人(ドラゴニュート) 帝国側にもマスター達が存在しているのを知っているため、ゴウ達がいるからと言ってライバル視している帝国に戦争をしかけるという選択肢はないが。

ゴウ達側もさすがに『契約』を持ち出されると、普段好き勝手しているため否とは言い辛い。

「チッ! アァアァッ、クソめんどくせェ。だが契約の話を持ち出されたら嫌とは言えねぇよナァ」

「まぁ仕方ないですね。契約ですから……。 人種(ヒューマン) を害するのはワタクシの本意ではありませんが、これも彼らの未来を守るための小事。ワタクシの自信作を実戦投入する良い機会と割り切りましょう」

ゴウは心底、面倒臭そうに声を上げるが、契約に従い動くと口にする。

ドクも割り切って、自身の利益を模索し始めた。

そんな2人に――正確にはドクにだが、ヴォロスが条件を追加する。

「それと今回の作戦とは別に、ドクに手を貸してもらいたい」

「ワタクシのですか?」

身長が2mもあるひょろ長いドクが、仮面で隠した顔を傾げる。その動きは妙なコミカルさがあった。

ヴォロスは気にせず話を続ける。

「今回の作戦にとある子爵の兵が同行するが……その兵士達を一部で構わぬから洗脳し、子爵を殺す先兵にすることは可能だろうか?」

『子爵』とはもちろんディアブロのことだ。

この質問にドクは快活に答える。

「もちろん可能ですよ。ですが違和感なく動かすことは出来ませんし、近付いて言動を確認されたら怪しまれますよ。それに一度改造――洗脳したら二度と元に戻すことは出来ませんが、それでもいいのなら」

「問題無い。兵士が子爵を殺しさえすれば、後はいくらでも誤魔化せる」

ヴォロスの筋書きとしては――『ディアブロの領民兵士達は常に彼へ不満を抱いていた。そして今回の臨時出兵が引き金となって、怨みが募ってディアブロを殺害。ディアブロの領地は美味しく魔人国が接収する』という算段だ。

話を聞いたゴウが、呆れたようにツッコむ。

「面倒くせェ……そんな手間をかけるより、さっさとその子爵をぶち殺せばいいだろうガァ」

「面倒なのは我も同じだ。しかし、ただでさえ最近は『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』騒動で貴族共が皆疑心暗鬼に陥っているのだ。安直な暗殺をすれば、魔人国貴族達が余計疑心暗鬼に陥り、下手をすれば各自が独立と騒ぎ立て、内紛が起きるわ。まだ兵士が不満を抱き、領主を殺したという方が事を荒立てないからな。ちょうど無茶をして税率を上げ、領民を苦しめている様だ。利用しない手はない」

ヴォロスは目を細める。

ここには居ない誰か――ディアブロを睨む。

「ディアブロめ……『暗殺結社 処刑人(ブロー) 』を使い我の命を狙うことさえなければ、こんな面倒なマネをしなくても済んだモノを……」

つい数日前、ディアブロを呼び出し彼の言い分を聞いた。

しかし、ヴォロスはその言い分をまったく信じておらず、『ディアブロの忠誠心を示すため~』という言い分で兵士を出させたのも、彼を暗殺するためのコマにするためだ。

ヴォロスは既にディアブロのことを完全に見限っていたのである。

(偽『ますたー』を始末した功績を讃え、貴族籍復帰などに手を回してやった恩も忘れおって……。自領の兵士共に殺されて、邪神の元で永遠に苦しむがいい!)

「ちなみに兵士を使って暗殺するのなら、ターゲットに近付いた瞬間爆発するギミックとか追加しますか?」

「……はぁ?」

胸中でディアブロに唾棄していたヴォロスは、ドクの台詞をすぐに理解することは出来なかった。

ドクはドクで相手のことなど気にせずまくし立てる。

「爆発以外なら、兵士の両腕にドリルを付けたり、毒物をまき散らして辺り一面を二度と誰も住めない土地にするものもありますよ。これらなら威力も高いですし、より確実にターゲットを殺害することが出来ます」

「ば、馬鹿者が! 国家の財産である土地を住めなくしてどうする!? いいか余計なマネをするな! おまえは兵士を洗脳してディアブロ子爵を殺せばいいのだ!」

「なるほど……やれという前振りですね?」

「違う! やるなと言っているんだ! どうしてそうなる!?」

ドクの台詞にヴォロスは怒声をあげ、焦った様子で『絶対にやるなよ』と釘を刺す。

その姿がゴウには心底面白い漫才に映ったらしく、遠慮などせずゲラゲラと下品に笑い声をあげたのだった。