軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編5 魔人国国境近くの村・事前交渉

「ケケケケケケ! おい、この村の責任者。村長はどこにいるんだ?」

「!?」

魔人国国境近くの村で、今日もいつも通りの一日を過ごそうと村人達が、動き出した早朝。

身長が2mを超える美女がいつのまにか居て、声をかけてきた。

さらにその美女の後ろにはモヒカン頭に、サングラス。

村を物色するように視線を彷徨わせる男達が5人いた。

「この村が目的の……」

「へっへっへっ、あそこなんて罠をしかけるのに丁度いいんじゃないか?」

「まったく今から腕が鳴るぜ」

仲間内での会話も非常に物騒だった。

一目で堅気の人間じゃないことが分かる。

身長が2mを超える美女の威圧感、怪しいモヒカン男達、突然の要求に村人達が怯えて固まってしまう。

美女――メラは懐から封筒を取り出し、警戒心を解く努力をする。

「ケケケケケケ! 安心しろ、アタシ達は敵じゃない。むしろ、アンタ達の味方さ。後ろのモヒカン達もね。今回は人種王国リリス女王の勅命に従いアタシ達が来たんだ。だから、さっさと責任者の村長を呼んできてくれないか?」

「わ、分かりました!」

村人男性が1人、メラの言葉に反応して走って村長宅へと向かう。

彼女の発言がどこまで本当か、辺境の村人達に真偽を確かめる術はない。

とりあえず、指示に従っただけのようだ。

――数分で、村の村長らしき初老男性が顔を出す。

初老と言っても畑仕事など体を動かしているため、そこまで老人という感じではない。 見た目は年老いているが、まだまだ働ける印象を抱く人物だった。

「ケケケケケケ! アンタがこの村の村長かい?」

「はい、そうですが……貴女方は?」

「人種王国リリス女王の勅命に従いこの村に救援に来た『巨塔の魔女』様の関係者さ。これが、女王様からのアタシ達の指示に従うように記した手紙だ。中身を確認してくれ」

「し、失礼します」

村長はメラから手紙を受け取ると、恐る恐る中身を確認する。

メラの言葉通り、手紙には貴族相手ではないため『魔人国兵士が国境を越えて攻めてくる可能性があるため、彼女達の指示に従い避難するように。その際、財産の補填、衣食住を女王の名において保証する』と分かり易く記されていた。

この手紙を読んだ村長が目を白黒させる。

「あ、あの使者様、この手紙に書かれていることは本当のことなのでしょうか? 第一、人種王国は国王陛下が務めていたはず。なぜリリス姫様が女王に……」

「ケケケケケケ! さすがにこの辺りまで話は来ていないか。つい最近、シックス公国会議があって、リリス元姫様が、正式な手順を踏んで女王に就任したんだ。ただそれを気に食わない魔人種共が手を出そうとしているんだよ。だから、その手紙に書かれている通り、アンタ達を保護するためアタシ達が派遣されたのさ」

メラの台詞に村長だけではなく、大枠で事情を理解した村人達がざわざわと騒ぎ出す。

村長は汗を拭いつつ、乗り気ではない態度を示した。

「きゅ、救援に来て下さったのは非常に嬉しいのですが……突然のお話のため移動する準備がまだ出きておらず、長く移動できない女子供、病人などもいるため時間がかかるかと。またなにぶん辺境のため、その……畑や家畜などの世話を少しでも出来なくなると途端に立ちゆかなくなります。なので移動は難しいかと……」

「ケケケケケケ! 安心しろ。その手紙に書かれている通り、財産は全て保証する。全てだ。『巨塔』が約束した以上、畑だろうが、家畜だろうがどんな財産でも絶対に保証されるから安心していいぞ。それに移動は転移アイテムを使うから一瞬だ。移動する場所には衣食住娯楽まで揃っている。それと怪我人、病人が居て動かせないなら……おい」

「はい、メラ様。野郎共アレを出せ!」

メラが背後に居るモヒカン達に声をかけると、リーダーが部下達に声をかける。

彼らは背負った鞄から武器を――ではなく、高級ポーションを取り出す。

当然、地上で買った物ではない。

恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードから出たポーションである。

地上の高級ポーションとは比べものにならないほど効果が高い。

モヒカン達は舌なめずりしながら声を出す。

「ひゃっはー! 怪我人はどこだ! 今すぐ楽にしてやるぜ!」

「おいおい、見ろよ、あの表情。よっぽど嬉しいようだな!」

「1人残らず健康な体にしてやるぜ!」

モヒカン達は『無限ガチャ』カード産ポーションを両手に握り締め、テンションを上げていた。

最近、任務を失敗し続けてきたため、今回は必ず成功させるという気合の現れだ。

そんなモヒカン達を背後に従えながら、メラが告げる。

「ケケケケケケケ! 安心しろ、別に毒薬じゃないからな。あれはポーションだ。怪我人や病人の所に案内してやってくれ。他に問題はあるか? 全て解決して移動に不安が無いようにしてやるから遠慮無く言ってくれ。ちなみにオマエ達に拒否権は無いぞ。これは勅命だからな」

村長や村人達は、『財産全ての保証、移動場所の安全衣食住娯楽保証、病人怪我人の治療、移動も一瞬で女子供も問題ない』とまで断言されて、どう反応すればいいか分からず呆然としてしまう。

唯一分かることは――自分達に拒否権が一切ないことだけだった。

☆ ☆ ☆

1日かけて、村人達の不安な点を全て解決し、『巨塔』へ『SSR、転移』で移動させた。

翌日、朝。

村に残ったメラ、モヒカン達が準備に勤しむ。

「ケケケケケケ! とりあえず村人はアタシの分体で作るとして、残った家畜や畑の世話もアタシがやらないと駄目そうだな……」

「ですね。俺達は、人種王国鎧を着て兵士の恰好をしないといけないので。表に出るのは不味いですから」

モヒカン達の役割は、『巨塔の魔女』と人種王国が親密に繋がっていると認識させるための舞台装置である。

また下手に村をうろついて、賊に擬装して襲ってこようとする魔人国兵士達に警戒心を与えないためにも、彼らが村に手を出すまで隠れているしかなかった。

「ケケケケケケケ! 家畜の世話は知識があるからなんとかなるが、畑の世話なんてやったことないぞ……」

「あー、俺達もです。念話で連絡を取って分かる者に指示を仰ぐのが良いかと」

「だな。下手に弄って駄目にしてご主人さまのメンツを潰すようなマネは出来ないからな」

ライトが『保護する村人達の財産を全て保証する』と言ったのだ。

その言葉を傷つけるようなマネなど、メラ達には出来ない。

故に、レベル7777のメラが、率先して家畜、畑の世話を買って出た。

「これも全てご主人さまのためだ」

「おう! 俺達も今回の任務は気合を入れて挑みますよ! 例えモヒカンが潰れても、全てはライト様のために!」

彼らのアイデンティティであるモヒカンが人種王国兵士に扮装する際、兜を被るため潰れてしまう。

だがライトのため、忠誠心に基づき、例えモヒカンが潰れても作戦を成功させると意気込む。

メラは彼らの自分に勝るとも劣らないライトへの忠誠心を前に、満足そうに頷く。

「ケケケケケケケ! 頼りになる奴らだぜ。この調子でご主人さまのお望み通り、魔人国のアホ共を釣って、作戦を成功させようぜ!」

『おおおおおお!』

メラの言葉にモヒカン達が天を突く勢いで声をあげる。

全てはライトのために。