軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編3 温泉回・後編

『 巨塔街(きょとうがい) 』外縁部で、原生林を開拓していると源泉が出た。

ライトに報告をすると、『折角だから温泉を利用する建物を作ろう。公衆衛生のために』と口にする。

指示を受けた『巨塔』責任者であるエリーが、早速源泉を発見した妖精メイド達を集めて、ライト発案『温泉施設敷設作業』の説明をおこなう。

本来であれば、地上での活動は持ち回りだが、『温泉施設建設作業』に関してはライトからの指示のため、妖精メイドを責任者として固定。

そうすることでいちいち新しい妖精メイド達に説明し、責任者をさせて作業効率を落とすようなマネをせず、スムーズに『温泉施設』を作り出すのが目的だ。

「と、言うわけで、貴女達はライト 神様(しんさま) から直接ご下命くださった『温泉施設建設作業』の責任者を務めて頂きますわ」

『奈落』最下層会議室。

席に座るエリーの前に2人の妖精メイドが立つ。

1人はギャルっぽい、もう1人はオタクっぽい妖精メイドだ。

彼女達はエリーから渡された資料を手にしながら、気合の入った声を上げる。

「ライト様が直接ご下命くださった施設建設に関われるなんて光栄です~」

「ま、ま、まさかこんな素晴らしい案件にか、関われるなんてウチ達にも、う、運が回ってきたね」

基本的に地上での作業は彼女達が美女、美少女過ぎて 人種(ヒューマン) 男性一部から邪な視線を向けられるためそこまで評判が良い仕事ではない。

とはいえライトから命令された施設作りや地上の建物責任者などは話が別である。

恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードから排出された彼女達だけあり、ライトを神の如く敬っている。

そんな彼からの命令が、彼女達にとってどれ程光栄な事か。

さらにエリーは真剣な顔つきで続ける。

「源泉を発見した貴女方だからお伝えしますが……温泉施設が完成した暁にはライト 神様(しんさま) がわたくし達の疲労を癒すためにも『皆で一緒に入りたいね』と仰いましたの」

「「!?」」

2人の妖精メイドは大きな瞳をさらに驚愕で限界まで広げる。

「え、え、エリー様、それは本当に仰ったことなんですか!?」

「もしエリー様でもライト様のお言葉を捏造したなら、あーし達は容赦しないっていうか~」

「失敬な。わたくしがライト 神様(しんさま) のお言葉を捏造するようなマネするはずありませんわ。確かにライト 神様(しんさま) はわたくしにそう仰ってくださったのです」

エリーの頭脳を持ってすれば、ライトと出会ってから交わした全ての言葉を覚えておくことなど造作もない。

確かに彼女は『皆で一緒に入りたいね』とライトが口にしたことを記憶――魂に刻み込んでいた。

彼女の言葉に、妖精メイド達の瞳が殺気すらともなうほど細まる。

「ライト様と一緒にお風呂……なら早急に完成させるためにも 人種(ヒューマン) 達ではなく、あーし達や他の皆の手を借りて――」

「それは許されませんわ。ライト 神様(しんさま) は、 人種(ヒューマン) 達の雇用を創造するためにも温泉施設建造をご指示してくださったのですから。ライト 神様(しんさま) のお言葉をねじ曲げるなど絶対に許されることではありませんの」

「な、な、なら、『ひゃっはー! 手をやすめるな!』と 人種(ヒューマン) をにらむ、鞭を振るって昼夜とわず、は、は、は、働かせるとか?」

「そんな酷いことをしたらライト様が怒るし~。もっと 人種(ヒューマン) 男性が喜んで作業するような……あーしらが、『頑張れ♪ 頑張れ♪』とか媚びを売って応援すればきっと良いところを見せたくて必死に働くんじゃない?」

「そ、それだ!」

ギャル妖精メイドのアイデアに、オタクっぽい妖精メイドが喝采の声を上げる。

さらにエリーがアイデアを付け足す。

「素晴らしい意見ですわ。ではわたくしはさらに応援の意味を込めて人夫の皆様に補助魔術のバフをかけましょう。あくまで頑張る皆様を応援する気持ちが溢れ出た結果ですから。結果として温泉施設が早急に完成しても仕方ないことですわ!」

ライト的には『 人種(ヒューマン) に雇用を創造するために温泉施設を作る』のが目的だ。

エリーが魔術を使って一晩で作り上げるのは不味いが、 人種(ヒューマン) の手で早く完成する分には曲解もしてないので問題はない筈である。

「天才! エリー様、天才ですよ!」

「さ、さすがレベル9999、『禁忌の魔女』!」

エリーは妖精メイド達に持ち上げられ、気分良さげに笑みを浮かべた。

そのまま気分良く、エリーが声を上げる。

「では早速、作業に入って頂きますわ!」

「お、お、お任せくださいエリー様! う、ウチの身命にかけて懸けて早急に温泉施設を作ってみせます!」

「ライト様と一緒に温泉~。楽しみにってレベルじゃないし~」

エリー、妖精メイド×2人は心底やる気を見せつつ『温泉施設敷設作業』に取り掛かった。

――約1ヶ月後。

妖精メイドの応援、エリーの身体能力を強化する補助魔術によって、人種のみで作ったとは思えないほどの短期間で『巨塔街』の一角に『巨塔温泉』が建設される。

翌日にオープンを迎えた『巨塔温泉』は、プレオープンという名目で、ライト達『奈落』メンバーのみで温泉を楽しむことになった。

明日からは、『巨塔街』に住む 人種(ヒューマン) 達が使用する予定である。

「これがライト様の仰っていた温泉ですか……確かに普通のお湯より気持ちいい気がしますね」

「メイ様の仰る通り気持ちいいですね」

「ケケケケケケケ! 個人的にはやっぱり風呂は苦手だな……。どうも体が濡れるのは慣れないんだよ……」

温泉にメイ、アイスヒート、メラが浸かりそれぞれの感想を漏らす。

今回、ライトが声をかけたことで風呂嫌いなメラも温泉に顔を出していた。

「(はふぅ)…………」

泉のように広いメインの湯船にメイ達が浸かっているのとは別に、果実を浮かべた小さな湯船にスズが気持ちよさそうに息を吐き出す。

果物が表面にびっしりと覆っているため彼女の下半身を確認することは出来ない。

「妹様、アオユキ! こんなに広いんだから泳ごうぜ!」

「にゃ~……」

「ええぇ、でもナズナちゃん、お風呂で泳いじゃ駄目なんだよ」

ナズナは広いお風呂にテンションが上がったらしく、キラキラとした表情で泳ぐことを提案。

アオユキはその提案を無視して、ゆっくり浸かり、年下のユメが嗜めることでナズナをおとなしくさせた。

他『奈落』女性メンバーが思い思いに温泉を楽しんでいる。

一方、開発責任者のエリー、妖精メイド達はというと……温泉に浸かりながら頭を抱えていた。

「た、確かにライト 神様(しんさま) も温泉に入っていますが、男湯にだなんて……」

「あーしも男になりたい~」

「き、き、気持ちは凄い分かる。ウチも今だけは男になりたい……」

温泉が完成後、プレオープンということで時間を調整しライト含めて『奈落』メンバー全員で温泉施設へと向かった。

その際、ライトは男性達を連れて、エリー達が止める暇もなく男湯へと迷わず移動してしまう。

まさか今更、ライトを女湯に連れていく訳にもいかない。

混浴スペースも作ったのだが、ライトから『混浴はさすがに不味くない?』と物言いが入って、現在使用は禁止されていた。

エリー達の予想ではライトが女湯へ一緒に入るか、最悪でも混浴に一緒に入れると考えていたのだが……。

頭を抱えていたエリーが諦めたように溜息を漏らす。

「……逆に考えましょう。ライト 神様(しんさま) に楽しんで頂けるなら本望だと。例え一緒に入ると期待していたのに、実際は男女別だったとしてもですわ」

「で、で、ですね!」

「ライト様の楽しみがあーし達の喜びだし~」

このエリーの意見に妖精メイド×2にも納得の声をあげる。

――ではライトは本当に楽しんでいるのか?

女湯の壁を挟んで反対側、男子湯では……。

「へっへっへ! ライト様! お背中を流しますよ!」

「モヒカンリーダーといえど抜け駆けは許さないぜ!」

「そうだそうだ! 俺達もライト様の背中を洗うぜ!」

「ひゃっはー! なら自分はライト様の髪を洗うぞ!」

「あはははは、ありがとう。でも自分で洗えるから大丈夫だよ」

ライトは温泉で体を洗いつつ、モヒカン達の声を楽し気に受け流す。

そんな様子をフルフェイスを被ったまま温泉に入っているゴールドがツッコミを入れた。

「お主達、気持ちは分かるが折角の温泉なのだ。もう少し、ゆっくりと湯を楽しむべきではないのか。第一なぜ温泉にまでサングラスをかけているのだ?」

「いや、それを言ったらゴールド様もどうしてフルフェイスの兜を取らないのですか?」

ゴールド、モヒカン達が互いにツッコミを入れ合う。

その様子をライトは心底楽しげに眺めていたのだった。