軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30話 レベル9000

「スズちゃんがミキィのために作ってくれた『愛情たっぷり新妻料理』が嬉しいから、ギラの情報だけじゃなくて、他マスターの情報も話しちゃうぞ☆」

実際は、僕のためにスズが作ってくれた料理をお裾分けという形でミキに譲ったのだ。

別にミキのためにスズが『愛情たっぷり新妻料理』を作った訳ではないのだが……。

(ミキが幸せそうなんだから、下手に水を差さなくてもいいか……)

下手に水を差して機嫌を損ね、ギラだけではなく他ますたーの情報を話さなくなっても困る。

僕達は誰も彼女の言葉にツッコミを入れず情報を口にするのを待つ。

ミキは『SSSR 呪いの首輪』、 戦略級(ストラテジー・クラス) 、 茨の束縛(ドルン・フェッセルン) によって拘束された状態で軽く舌を出す。

「でも実際、ミキィ自身もあまりあいつらのこと知らないのぉ。だから、たいした情報が無くても怒らないでねぇ?」

「あまりって……仲間同士なのに?」

「仲間って言うほど絆が深いわけじゃないのよぉ。前にも話したけど『マスター』は大きく2つの陣営に分けられるわぁ。『C』様を敵視するか、崇拝するか、ねぇ。ミキィ達崇拝派は、『C』様に各自が持つ願い、その他の望み成就のため集まっているに過ぎないからぁ。仲間っていうより、何だろう……ただの集まり? だから、互いに信用してなくて手の内を明かしたりはしなかったのよねぇ。むしろ、ライトちゃんの所が仲良すぎるんだと思うわよぉ?」

ミキがメイやエリー、スズを見て告げる。

彼女の指摘通り、いくら目的を一緒にしても完全に仲間を信用して胸襟を開くのはなかなか難しい。

組織が強ければ強いほどだ。

ついつい忘れがちだが、メイ達は僕の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードから召喚された者達のため、創造主の僕に対して絶対の忠誠を誓っている。

それが一般的ではないと理解してはいるのだが、ミキ達のような集団を形成しつつも互いを信頼などしていないというような者達には、『互いを信頼し合う仲間達が存在する』というのはより異質なことに映るのだろう。

ミキの言葉に頷きつつ、話の続きを促す。

彼女は謳うように告げる。

「まずライトちゃん達が質問してきたギラからね。ギラは男性で背が低くて一見すると女性のように華奢なんだけど、普通に強いから注意してね。あいつ、生物、無機物問わず『斬る』ことが大好きな切り裂き魔で、生粋の快楽殺人者だから。あいつが魔人国マスターに属しているのも『C』様をいつか自分の手で斬ってみたいからだし」

「それは……ミキ的にはいいのか?」

「別にいいと思うわよぉ。魔人国マスターはさっきも言ったけど、各自の目的のために集まっている集団に過ぎないから。第一、ギラが『C』様を斬れるとは到底思えないしねぇ」

ちなみにミキが『C』に望む願いは――『ミキが理想とする相手とハーレムをお願いする予定だった』が、理想の相手スズと出会ったことで僕達に降ったのだ。

ミキからすれば最高に幸せだろうが、スズからすると不幸でしかないだろうな……。

話を戻そう。

「ギラはそういう奴だから趣味と実益を兼ねてなんか殺し屋組織を作っているのよ。趣味はともかく、地上の低レベルを集めて殺し屋組織を運営する実益がどこにあるか知らないけどぉ。お山の大将でも気取りたかったのかしら? でも、そんな感じでもなかったんだけど……。まあとりえずミキィ達の中で唯一、組織を持っている奴だから手を出すなら気を付けてねぇ。組織に入っているのが低レベルな奴らばかりでも、『組織』っていうのは個人と戦うのとはちょっと勝手が違うからぁ」

「……忠告感謝するよ」

まさか既にその殺し屋組織、上位暗殺者である『 死剣(モルテ・スパーダ) 』をぼこぼこにした後だとは独房に入れられていたミキは知らない。

あまりに低レベルな暗殺者過ぎてネムムが嘆いていたこともだ。

「とはいえギラ本人は普通に強いわよ? レベルが多分7000前後かな? ただどうやって戦うかは知らないの。アイツの攻撃をミキィ、見たことがないのよぉ」

「それは戦っている所を見たことがないってこと?」

「違うわぁ。ギラはよく斬る感触を楽しむため、レベルアップ馬鹿のダイゴちゃんのようにダンジョンに潜っていたから、戦っている所を見たことは何度かあるわぁ。けど、いつのまにか敵が倒れているのよぉ。どういう武器なのかも分からないし、もしかしたら攻撃魔術なのかも分からないわぁ。見た目が暗殺者っぽいから多分、暗器とかじゃないかしらぁ?」

ミキは首を傾げつつ自身の見解を述べる。

嘘は付いている素振りはない。

メイに視線を向け確認するが、彼女は黙って小さく頷いた。

どうやら魔術で調べた限りでも嘘はついていないらしい。

本当に知らないようだ。

彼女は切り替えて話を進める。

「次はドクね。身長はめっちゃ高くて、いつも白衣を着ているのぉ。そして 人種(ヒューマン) を集めて人体実験を繰り返しているわぁ」

「人体実験?」

また嫌な単語だ。

「ドクの『C』様への願いって『 人種(ヒューマン) の未来を切り開く』ことよ。他種に比べて脆弱な人種を負けないぐらい強くして欲しいんだって。でもまだ『C』様に出会えていないから、とりあえず自分の手で人種を強い種に作り替えようと人体実験を繰り返しているけど……。志は立派に聞こえるけど、あいつはただの狂人よぉ。だって医術の心得もないのに、無闇やたらに人種を切り刻んでるだけだものぉ」

珍しくミキは気持ち悪そうに顔を顰める。

彼女的にも苦手な相手らしい。

「魔人国首都の近くにドクの実験場があるけど、なるべく近付かない方がいいわよぉ。気分が悪くなるモノが一杯あるからぁ。あとドク自身、戦闘能力はミキィ同様高くないわぉ。恐らくレベルも5000前後ぐらいだし。ただ、バフとデバフのスペシャリストだから甘く見ると痛い目に遭うわよぉ。どんな切り札を持っているか分からないもの」

『 ダイゴ(レベルアップ馬鹿) はもういないから、最後はリーダーよね』とミキが1人漏らす。

「ミキィ達のリーダー、別にミキィ達に対して上から命令するんじゃなくて纏め役のようなモノねぇ。ドレッドヘアーが特徴的なゴウっていう名前なんだけど、この人と出会ったらライトちゃん達でも『戦う』という選択肢を捨てて逃げることをお勧めするわぁ。誤解しないでねぇ。ライトちゃん達を貶している訳じゃないわよぉ? でもこのゴウちゃんって言うリーダーは本当に強いのぉ」

「そのゴウっていう人はどれぐらい強いの?」

僕の問いにミキはより真剣さな声音で告げる。

「単純に強いのよぉ。 神話級(ミトロジー・クラス) の武器や防具、マジックアイテムを持っているからとかじゃなくて。ライトちゃん達に分かりやすく言うとダイゴちゃんっていたでしょ? ライトちゃん達が前に戦った『精霊双剣』っていう自称『最強の 神話級(ミトロジー・クラス) 』っていう武器を持った。リーダーのゴウちゃんは近接戦闘の天才で実際に戦ったことは無いけど、そんなダイゴちゃんがライバル視している相手より『強い』と言われるほどの実力者なのよぉ。ミキィ達の中で唯一レベル9000を超えているらしいしぃ。彼と戦うことは絶対避けるべきよぉ。お姉さんからの忠こ――ッ!?」

ミキが冗談っぽく最後、台詞を口にしようとしたが……言い切ることが出来なかった。

「レベル9000……」

僕が抑えきれない殺意を溢れ出させてしまったからだ。