軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12話 護衛依頼

「エリオくん、ミヤちゃん……ッ!」

顔見知りの行商人ヨールムが、エリオ&ミヤの姿を目にすると暗かった表情を一転させ笑顔になる。

小太りで中年の如何にも『商人』という出で立ちをしているヨールムが、今まで見たことがない軽快な動きで2人へと駆け寄る。

「お待ちしていました、エリオくん、ミヤちゃん! その荷物は今月の薬ですね! いやぁー、この村の薬は評判が良いので本当に助かりますよ。荷物はこちらで受け取りますので。つきましては商談というか、ご相談があるので是非場所を移しましょう!」

ヨールムは一息でまくし立てると、荷物を受け取り馬車へと積む。

彼はモヒカン達に声をかけ荷物番を頼むと、了承の返事もしていないエリオ&ミヤの背中を押して、その場から移動した。

向かった先は2人の新居だ。

エリオ&ミヤの両親は昔、流行病にかかって死亡した。

その際、彼らの自宅も流行病をこれ以上広げないため焼却処分せざるを得なかった。

畑も両親の薬代のため売却したため、2人は生きるために冒険者となった。

既に亡くなったが冒険者で同じパーティを組んでいたギムラとワーディは、次男と三男でエリオ達とは別の意味で行き場が無く、2人が冒険者として村を出ることになったのを切っ掛けに同行したのだ。

エリオ&ミヤは冒険者時代の貯金で、村で空いた家屋を新たに購入し自宅としている。

ギムラとワーディの分は彼らの家族に譲り、その資金で2人の墓を作った。時折、暇を見つけてはエリオとミヤは2人の墓の掃除等をしていた。

そんな新たに購入したエリオとミヤの自宅に、行商人ヨールムが強引に入り込む。

彼の勢いに流された面はあるが、2人とも『何か話があるらしい』と察して大人しく従ったのだ。

扉が閉まり3人だけになった所で、行商人ヨールムが強引に場所を変えた理由を説明してくれる。

ヨールムは深々と頭を下げてから切り出す。

「申し訳ない2人とも、強引に連れ出した上に、自宅にまで押しかけてしまって……。実は2人に折り入って皆の前では話せないお願いがあって……」

「あの場では話せないお願いですか?」

ミヤが可愛らしく小首を傾げる。

行商人ヨールムが切々と話を切り出す。

「2人が知っているかどうか分からないが、最近は街道の危険度が上がっているんだよ。噂では街道を通る人種が無差別に狙われたり、一部では村が襲われて焼かれているらしいんだ。そのせいで冒険者の需要が上がっているんだ。お陰で、彼らのような柄の悪いのしか雇えなかったんだよ……」

エリオとミヤは、ヨールムが雇った護衛の姿を思い返す。

全員なぜかモヒカンで、サングラスをかけているせいか強面に見える。さらに無駄にトゲトゲしたりしている革製の衣服を身に着け、全員人種にしては体躯がしっかりとしていた。

そのせいで非常に威圧感がある。

ヨールムの言葉通り非常に柄が悪かった。

「正直、彼らの護衛だけでこのままシックス公国近くの街まで行くのは心配で……だから2人の腕と信用を見込んで頼むんだけど、お願いだから護衛として一緒に来てくれないか? もちろん護衛料も払うよ。色も付けるから!」

確かに護衛として雇ったモヒカン達の近くで話す内容ではない。

エリオとミヤは頭を下げた商人を前に、困った表情を浮かべる。

(公国近くの街まで、往復で約10日前後かかる。それぐらいなら俺とミヤが村に居なくても問題は無いだろうが……。もう冒険者を止めた俺達が、護衛依頼を受けても良いのか? 第一、護衛の仕事なんて受けたことがないから経験なんて無いしな……)

断るのは難しくないが、行商人が来ないと村で手に入り辛い商品の購入が難しくなり、外の情報が入らなくなってしまう。

依頼を断ることでヘソを曲げられ、村に来なくなる可能性もゼロではない。

何より子供の頃からの顔見知りで、薬も良い値段で購入してくれているのだ。

恩と義理の面からここで断るのは難しかった。

エリオがミヤに目配せすると、彼女も小さく頷く。

どうやら、ミヤも依頼を受ける決意を固めたらしい。

エリオは軽く頭を掻いてから、仕方ないという風に頷く。

「……分かりました。その依頼お受けします」

「本当かい! ありがとう、助かるよ!」

「ですが一応、俺とミヤは冒険者を廃業した身。護衛ではなく、同行者――公国近くの街に一緒に向かう者として扱ってください」

移動に慣れた行商人に村人がお金を払い、向かう先に同行するのはよくある話だ。

今回、エリオとミヤは行商人ヨールムの要請でお金を貰い同行する形になる。

この形をとったのは冒険者を廃業したのもあるが、クエスト仕事として受けてモヒカン達のメンツを潰したり、相場を破壊しないための措置である。

この提案にヨールムは諸手をあげて賛成する。

「是非、それで頼むよ! 2人が同行してくれるなら安心だよ!」

「あまり過剰な期待はしないでくださいね。俺もミヤも護衛仕事なんて初めてなんですから……」

「(こくこく!)」

ミヤも兄に同意するように何度も頷く。

そんな2人を前にヨールムは、気が抜けた表情で笑った。

「それでも顔見知りで、腕が確かな2人が付いてきてくれるだけで本当に心強いよ。……彼らを悪く言うつもりはないが。あのモヒカン冒険者達と一緒の間はずっと生きた心地がしなかったからね……」

見た目が凶悪で、言動も派手なモヒカン冒険者達と四六時中一緒にいたヨールムは遠い目をする。

本当に何時相手が心変わりして襲ってくるのかと、戦々恐々していたようだ。

その後、エリオとミヤはヨールムと細かい条件の話し合いをする。

移動費、食費、帰りの費用も全てヨールム負担。

街での滞在費はエリオとミヤの負担になる。

護衛費も入れると良い金額になるが、ヨールムは安心と命には替えられないと全面的に飲む。

話が纏まったところで、エリオ、ミヤ、ヨールム達はモヒカン冒険者達に話を通すのと、顔見せのため再び馬車へと戻ったのだった。