軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第64話 驚き

『いやぁ~、助かったぁ~』

とホクホク顔の僕は、タンカランの村からカサールに向けて馬車移動を開始している。

あの日ベルと2人でゴミ置場で修復出来そうなゴミを探していたのであるが、そこにはお宝がザクザク状態であったのだ。

それは何かと言うと、タンカランダンジョンには順番待ちが出るほどの盛況ぶりであり、九階層では10体程のロックマン君達がリポップする度に倒され続けた結果として、壊れたゴーレムコアがゴミ置場に溢れていたのでる。

買い取りも出来ない壊れたゴーレムコアは冒険者達にはただのゴミであり、ドロップ後に回収せずにダンジョンに放置しておけばダンジョンの機能で綺麗さっぱり消えてなくなるのだろうが、冒険者ギルドの方針でダンジョンのドロップ品は全てチェックする為にゴミと解っていても持ち帰りカウンターに提出するので結果として、

「こちらは買い取り出来ませんので…」

と言われた壊れたゴーレムコアはタンカランのゴミ置場に大集合という流れである。

なので僕としてはダンジョンに潜る手間もかからずお目当てのドロップ品である宝の山を見つけたのに等しく、

「ひゃっほぅ!」

と自分のマジックバックに軽い破損のゴーレムコアを選りすぐっても尚、パンパンになる程に回収出来てしまったのである。

馬車にて、僕は自分のマジックバックをナデナデしながら、

『値崩れするから一気に直して売らずに小出しにしないとなぁ、う~ん…あっ、そうだ、カサール子爵様の騎士団の方々用に何個か回しても良いな、お世話になるんだしねぇ』

などと一人でニヤニヤしているのを子供チームの女子コンビのララちゃんと、ターニャちゃんが少し遠巻きに、

「お兄ちゃん大丈夫かな…」

「ずっとカバンをサスサスしてるけど…」

と、心配そうにしているのを同世代のベルが、

「大丈夫だよ」

と優しく、

「お兄ちゃんは昔からあんな感じだから、心配ないよ」

みたいなハートにチクリと来る僕の説明を2人にしていたのを聞こえないフリをしながらも馬車は順調に街道を進み、秋口にようやく僕たちはカサールの町に帰ってきたのである。

到着した町の入り口横の旧スラムの辺りには立派な堀と、その時に出た土を盛り上げた土手が低い壁の役割をする新エリアが出来上がっており、

「えっ、この短期間にどうやったの?」

と僕は町に入る前から既に驚きながらカサールの門にて手続きをしていた。

しかし、町に入る前に僕たち全員が入門手続きをしている間に門兵さんから連絡が入ったカサール子爵様達が僕達のリアクション見たさに飛んで来てしまい、

「ジョン殿、新しい町はもう見たか?」

と聞くので、僕は、

「はい…凄い堀が出来てますね」

と答えると、カサール子爵様は、

「堀…という事はまだ、中は見てないのだな!?」

と聞いてくる。

子供の様にワクワクしているカサール子爵様に、僕は、

『凄くリアクションに期待しておられるな…』

と、なんだかハードルを上げられている気分になるが、僕の隣で子供チームを案内しているベルがカサール子爵様に、

「お爺ちゃん楽しみにしてたんだよ、早くお家が見たい!」

とお願いすると、もう見せたくて、見せたくてウズウズしているカサール子爵様は、

『待ってました!』

とばかりに、

「よし、ベルちゃんのお部屋も出来てるからお爺ちゃんと見に行こう!」

と久し振りに帰省した孫にプレゼントを見せるお爺ちゃんの様に、僕達をゾロゾロと引き連れてカサールの町の新エリアへと向かったのだが、この列の後方では大人チームの方々が、

「旦那様…あれは、この町のご領主様ですか?」

とか、

「ベルちゃんがお爺ちゃんって呼んでおられましたが…お貴族様でしたか!?」

などと軽くこの状況にパニックを起こしていたのをカサール子爵様の息子であるクリスト様が、

「これはジョン殿を驚かせたいとは思っていたけど、新たな仲間の方々には不安に思わせてしまいましたか…」

と楽しげに、カサールの町の簡単な説明をして下さり、最後の最後に、

「…で、私がカサール家の長男のクリストと申します」

などと、後回しで自己紹介したものだから、列の後方で説明を聞いていた大人チームの皆さんは、

「次期ご当主様で!」

「オレ達、旦那様のお友達だとばかり…」

などと更なるパニックを起こし、バルディオさんとイデアさん親子は、

「失礼をいたしました!」

と背筋を伸ばして固まり、それを見たクリスト様が、

「新たなお仲間さん達も楽しそうな方々だ…」

とイタズラっ子の様に笑っていたのを僕は、

『パパと一緒のセンスだな…皆、寿命が縮まるかと思っただろうから後で甘い物でも出してお茶でもしてもらおう…』

などと、彼のパパさんに殺気を放たれて縮み上がった昔を思い出しながら歩いたのである。

だが、僕もここで始めて、

『あれ…まだ歩くの?』

と、旧スラムエリアとは比べ物なならない程の距離を歩いているのに気がつき、

「クリスト様…なんか…広くないですか…」

と聞くと、クリスト様は更に楽しげに、

「我が友であるボール号が大活躍してくれてな…」

と、新型ゴーレムに土木工事をさせた所サクサクと堀を作る事が出来たので楽しくなってしまい、結果として新エリアが馬鹿みたいな規模になったのだそうで、

「その代わりにジョン殿の家のエリアがこの居住区画と同じぐらいの広さになってるからね」

と少し怖い事を言っていたのである。

そして現在はようやくパラパラと家が建ちはじめた居住区画のその先に、

「えっ…これ…全部ですか?」

と聞きたくなる土地に、『三人用で…』と発注したとは思えない一軒家と、『厩舎』として発注したものは牧場となって完成しており、しかも居住スペースまで出来ていた。

あまりのスケールに半開きの口のまま広大な土地を眺めている僕に、カサール子爵様が、

「その顔が見たかったのだ…」

などとご満悦である。

そして子爵様は、

「これだけ広い土地を管理するのだから使用人を雇える様にはじめから計画しておいて良かった…なぁ~に、費用は陛下からの報償金からはみ出た分は我が家で持つつもりであったが、カルセル伯爵殿からかなり貰える事になったのでな…」

と悪い笑顔で教えてくれたのだ。

だけど僕としては、

『ドッキリ大成功みたいに思っているのだろうが…ゴーレムコアが修復出来なかったら維持費だけで馬車馬の様に働かないとイケない未来しかなかったよ…』

と、少しズレた世界線の僕だった場合、予定外の広さに膝から崩れ落ちていただろう現実に、

『良かったぁ~、助かったよ神様…修復ギフトを有り難うございますぅぅぅ…』

と、心から感謝し、壊れたゴーレムコアがひしめくカバンを優しく撫でる僕であった。

さて、この家であるが元々の注文としては、

『家と厩舎と作業小屋に小さな畑でもあれば…』

とお願いしたはずなのだが、目の前には、一軒家と牧場に農家という三軒の家が建っている。

そしてそれらが建っている新町の居住区画からかなり離れたこの場所一帯が『我が家』という扱いになり、焼け落ちたスラムの片付けの時に畑にしたエリアの更に奥の場所の為に多少の作業音も大丈夫だからという理由からか、

「ここで新型ゴーレムの製造でもするんですか?」

という鍛冶カマドというよりは、溶鉱炉と言える規模の大型の鍛冶設備や素材置場もある立派な工場が完成しており、

「カサール子爵様…これは【作業小屋】というには…」

と呆れる僕に、子爵様は、

「これだけの設備があればどんな作業でも可能だろ?」

と、自信あり気に、

『何か問題でも?』

みたいな顔で言っている。

目の前には冗談みたいな規模の建物や土地が広がっているが、

『あぁ、これはドッキリとかじゃなく本気でサービスしてくれた分か…』

と、僕は元貴族の息子だったとはいえ、現役のイケイケ貴族のぶっ飛んだ感覚にめまいがしそうになる。

しかし、彼らのドッキリはここからが本番だったらしく、カサール子爵様が、

「では、部屋割りなどは後で話し合って貰うとして、家の中も見てみてくれ」

と自信満々に、母屋へと僕達を誘導しながら、

「新型ゴーレムで息子の様に工事を手伝いたかったが我が機体は目標を殴るしか出来ないので、出来る事といえば騎士団に切り出させた木材を引きずらせる事ぐらいしか出来なくてな…」

などと町の大工さんに頼んで急ぎで作らせた家を紹介しはじめているのである。

しかし、僕の目には家など見えておらず、ただ家の前に停められている既視感たっぷりの小型の荷車と、遠くから走ってくる茶色い大型の犬魔物というセットを見て、僕は勿論リーグさんまで、

「パトラッシュ?」

と、元気に走ってくる犬魔物を見て首を傾げている。

そして次の瞬間に、

「お坊ちゃま!」

と、聞き覚えしかない懐かしい声が母屋の玄関の方から聞こえてきて、僕はこの日一番の驚きに襲われたのであった。