軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【別視点】騎士の驚き 82

【フィアス】

朝が来て、素早く野営の片付けを行う。

「フィアス! 畳んでおけ!」

「は、はい!」

先輩から指示を受け、すぐに寝袋を畳んで所定の場所へ荷を置き、積み重ねる。野営を担当した同僚の荷は既に畳んだ為、これで全てだ。

すでに整列を始めた同僚たちを見て、慌てて走っていく。

そこへ、あのラーシュという少年が歩いてきた。近くには獣人の少女も一緒である。

「おはようございます。寝泊りする場所、用意した方が良いですか?」

そう尋ねられたので、背筋を伸ばして答える。

「我々は夜営訓練も兼ねて滞在しております。お気になさらず」

そう告げると、ラーシュは困ったように笑った。返事を間違えただろうか。団長から指示された内容だったが、どう答えるべきだったのか。

そう思って不安になっていると、ラーシュが口を開いた。

「なるほど。それでは、朝食後にさっそく初訓練をやってみますね。準備しておいてください」

「はい。承知しました。隊長にそう伝えて参ります」

返事をして、整列する皆の下へ向かう。

「フィアス! 何をしている!」

「はっ! 今、ラーシュ殿より連絡があり……」

「む」

返事をすると、隊を任されている隊長が体ごと振り返った。エルネスト隊長。近衛騎士団からきた精鋭であり、地位は百人長を任されているほどの人物だ。

「どのような連絡だ」

エルネストから問われ、顔を上げる。

「はっ! 朝食後、訓練を開始するとのことです!」

「朝食後……分かった。ならば、昼食は無い可能性がある。皆に伝え、準備を」

「はい!」

それだけのやり取りをして、すぐに各班長に報告をする。今回は急ぎで騎士を集めたということもあり、王都の各騎士団から十名ずつ。合計百名で構成されていた。我が第十騎士団の団長も随分と気合いが入っており、騎士となって二、三年以内という条件に合った者の内、将来有望な戦士の職業適性を持つ者ばかりが集められた。

ただし、自分だけは弓使いである。それも、一人は戦士ではない職業適性が望ましいという理由から選ばれただけだ。他の騎士団から集められた者も似たようなものらしく、弓使いと盗賊、聖職者が数人といった内容だった。

基本的に、騎士団において兵長以上は戦士の職業適性を持つ者ばかりだ。また、魔術師の職業適性を持つ者は魔術師隊に配属される。その為、他の職業適性を持つ者は騎士団で出世できないのが常識である。

今回も、要望があったから自分まで組み込まれただけで、本来なら将来隊長になる可能性が高い戦士の職業適性の者から選ばれた筈である。だから、最も低い扱いを受けるのは仕方がない。

王都騎士団の百人長にまで上り詰めた父に憧れていたが、仕方がない。自分は運が悪かったのだ。何度も自問自答してきたことだが、今は諦めることができている。

騎士団より支給された携帯食を食べ、全員が再び整列してラーシュの到着を待つ。

暫くして、ラーシュはやってきた。背後には多くの獣人達を従えている。獣人達は剣や槍、弓を持っており、武装していた。

「流石はテオドーラ王国の騎士団! 準備万全ですね!」

到着早々、ラーシュからそう言われ、騎士達は皆胸を張る。当然である。我らは精鋭として名高い王都騎士団の一員だ。その矜持は、末端の自分でも持っている。

しかし、そんな我々にラーシュは苦笑し、片手を振った。

「とはいえ、そんなにずっと全力だと一ヶ月持たないと思うので、もう少し気楽にやりましょうね。それでは、まずは皆さんの職業適性を聞いて、訓練を行います」

そう言って、ラーシュは隊長に声を掛け、改めて部隊を再構成していった。

結果、なんと僕が班長に任命されてしまう。

「う、嘘でしょう!?」

驚き過ぎて、思わず大声を出してしまった。なにせ、隊長や班長達から今も睨まれているのだ。同じく、班長に任命された弓使いの騎士三人も慌てている。

対して、こちらの動揺など全く気にしていない様子でラーシュが答えた。

「そもそも、騎士団の戦術は個人的にはちょっと……なので、今回は我々の戦い方を学んでもらいます。えっと、フィアスさんもその為の班長任命ですよ」

少し言い難そうにそれだけ言って、ラーシュはさっさと訓練場所へと向かった。

向かう先は、まだ開拓されていない森の中だ。話は聞いていたが、今いるのは魔の森の中である。その森の中で、騎士百人と獣人五人に子供とその従者一人。信じられないような話だと思った。騎士見習いの頃から数えれば十年以上訓練を積んできた騎士の先輩たちも、心なしか顔が強張っている。

「まずは、実際に我々が戦うところを見てもらいますね」

そう言って、ラーシュは笑顔で森の中を歩く。皆は武器を構え、慎重に周りを見ながら進んでいた。

「……ラーシュ殿。魔の森には恐ろしい魔獣が棲むと聞いております。これだけの人数で大丈夫なのでしょうか」

エルネストが尋ねた。それに、ラーシュは笑いながら頷く。

「危険はありますが、今回はミケルさんとロルフさんが揃ってますからね。それに加えて斥候として盗賊の職業適性を持つベテランが同行しています。安心してください」

そう言われて、エルネストは押し黙った。聞けば、ミケルとロルフも弓使いだという。そのことを考え、エルネストは懐疑的になっているのだろう。

「ラーシュ」

名を呼ばれて、ラーシュが顔を上げた。すると、遠くの方から一人の獣人が帰ってきた。女の獣人で、手には短剣を持っている。

「奥に中型三体。こっちに向かっている」

「三体だね。それじゃあ、やってみようか」

女の報告に、ラーシュは事もなげにそう答えた。