軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰宅 81

王都で過ごした時間は短かったが、それでも良い話ができたと思っている。できたばかりの小さな村が、国王と取引をし、直接の仕事を賜った。それも、相手は世界屈指の大国であるテオドーラ王国である。

「……それでは、ラーシュよ。グランドール村の管理、運営に尽力せよ。我が騎士団から送り出す者達はドラスに選ばせる。訓練の内容、結果もドラスが報告する予定だ。問題はないな?」

そう問われ、返事をする。

「承知いたしました」

答えつつ、マルクスの顔を見上げ、少し同情する。謁見の間は見事であり、王であるマルクスも威厳がある気がした。

しかし、マルクスの裏の顔はリネアの告げ口で判明している。あまり娘に嫌われ過ぎないように気を付けてもらいたいものだ。

娘に鬱陶しがられるマルクスとの謁見が終わり、村へ戻れることとなった。

「それじゃあ、頑張ってね」

リネアにそう言われて、片手を挙げて応える。

「へい!」

返事をすると、見送りに来ていたモニカとレオンが笑った。

「ラーシュ君がいなくなっちゃうと寂しいわ」

モニカが悲しそうに眉根を寄せてそう言うと、レオンが頷く。

「そうですね。私も時間がとれそうならグランドールを実際に見に行ってみようかな。その時は、よろしくね」

「はい。訓練ならお任せください」

「いや、私はあまり戦闘は得意ではなくてね。村の見学に行かせてもらうよ」

鍛えてあげようと思ったのだが、レオンには断られてしまった。残念である。

「護衛がてら我が王都騎士団の第五騎士団を連れて帰ってもらおう。厳しく訓練してもらって構わないぞ」

ドラスにそう言われ、街道に整列する若い騎士達が背筋を伸ばして顔を上げた。皆、堂々としていて力強い目をしている。ただ、どの王国でもそうだが、精鋭と呼ばれる騎士は全員が戦士の職業適性を持っている。

騎士団を強くするなら、戦力をバランスよく育てた方が良いと思う。

「ドラスさん」

「む? なんだ?」

名を呼ぶと、ドラスが首を傾げた。

「もし可能なら、次から戦士は三分の一、弓使いも三分の一、残りは盗賊と魔術師、聖職者を入れて欲しいな」

そう告げると、ドラスは腕を組んで唸る。

「むむむ、難しい話だ。騎士団は基本的に戦士が七割。弓使いが一割と魔術師が一割だからな。聖職者と盗賊の職業適性は残りの一割だぞ」

「そこを何とかお願い。その方がこっちもしっかり結果が出せるし……あ、それと、騎士団用の駐屯地とかあった方が良いかも?」

そう告げると、ドラスは渋々頷く。

「……分かった。各騎士団の騎士団長にもそう伝えておこう。改めて計画の練り直しではないか。まったく」

愚痴るドラスに、レオンが苦笑して口を開いた。

「あえて戦士以外の職業適性の騎士を希望するというのは、とても興味深いね」

レオンのその言葉に、リネアが同意する。

「村での戦闘は騎士団の戦い方とは全然違うけど、とても凄いのよ」

リネアが絶賛し、レオンは笑いながら頷く。

「それじゃあ、僕たちはこれで」

「うむ。また会おう」

ドラスに声を掛けて、騎士達百人に向き直る。

「皆さん、宜しくお願いしまーす!」

「はっ!」

騎士達の返事を聞き、リネア達に挨拶をして馬車に乗った。

「この馬車も貰って良いのかな?」

「はいはい。その馬車は私のだから、あげるわよ」

「わーい」

馬車の窓越しにそんなやり取りをしていると、モニカが嬉しそうに微笑む。

「また遊びに来てね、ラーシュ君。イリーニャちゃん。それにアーベルさん達も」

「ありがとうございました。絶対また来ます」

和やかな挨拶をして、僕たちは王都を出発した。

帰り道は馬車一台と騎士百人の護衛付きである。安心安全、快適な旅路となった。

一ヶ月で村まで戻る間に魔獣に遭遇したのは五回だけである。それに小型の魔獣ばかりだった為、騎士団の動きを確認することができた。

ステータスやスキルの特徴を生かすこともなく、大盾を構えて守り、剣や槍を振るばかりだったが。

そんなこんなで村に到着すると、村人たちが集まってくる。

「お帰り!」

「王様に会えたの?」

子供たちは笑顔で走ってきたが、大人たちは大勢の騎士を見て少し警戒していた。リネアやドラスがいないから仕方がないとも言える。

「ただいまー」

歩み寄ってきた子供たちに声を掛けると、やっと安心して皆も寄ってくる。

「お帰り」

「どうだったの?」

「この人たちは?」

皆からも口々に声を掛けられた。それにミケルとロルフが答えていく。とはいえ、騎士達については「村で一緒に戦うらしい」としか答えられていなかった。

それを見て、僕は苦笑しながらアーベルに顔を向ける。

「アーベルさん、説明してあげてよ」

そう口にすると、アーベルは頷いて説明をした。

テオドーラ王国国王との謁見を果たし、村がリネア王女の領地になったこと。代官として僕が選任されたこと。そして、一ヶ月に百人ずつ王国騎士団の騎士を訓練することで収入があることを、アーベルが淀みなく説明をする。

「お、おお……」

「アーベルさん、強いだけじゃなくて頭も良いんだな」

「私は説明を聞いても分からなかったんだけど」

村人たちがアーベルの説明を聞いて驚き、感心する。勉強した甲斐があったと喜んでいると、アーベルがすぐにネタバレをした。

「そう、ラーシュに教えてもらった」

アーベルがそんなことを言い、皆がこちらに振り向く。

「いや、少し説明をしただけだよ。アーベルさんが勤勉だから、すぐに覚えてくれたからね」

そう告げると、皆が感嘆の声を上げた。

「やっぱ、村長だな」

「いや、それをすぐに理解するアーベルさんも凄いぞ」

「ラーシュは貴族だしな」

そんな会話が聞こえ、ミケルとロルフが胸を張って答える。

「そうだな」

「俺たちはさっぱりだったし」

二人の言葉を聞き、笑いが起こる。笑っている村人たちを眺めつつ、整列して紹介を待っている騎士達に振り向いた。

「ようこそ、グランドール村へ。これから一ヶ月かな? 宜しくお願いします」

そう告げると、騎士達は大きな声で返事をした。村の雰囲気を見ていたからだろうか。騎士達の表情は村に来る前よりも緩くなっている。

村の雰囲気が良かったと考えるべきだろうか。それとも……。