作品タイトル不明
古代の魔方陣3
「……この壁の向こう側に、魔法陣が続いているだと?」
マッシュが驚きを隠せずにそう呟く。それに、オーウェンが頷いた。
「当たり前だ。どう考えても、この部分だけでは何も発動しない。それどころか、魔力を流し込んだ分だけ垂れ流しになるだろう」
と、オーウェンは上から目線で魔法陣について語る。それにグレンが冷や汗を流しながら出てきた。
「ちょ、ちょっと待ってほしいぞい! わしらは皆あまり魔法陣について詳しくないからのう。ちょうど講義を行っているアオイ君がおるから、解説をお願いしようじゃないか」
グレンがそう言うと、マッシュとラムゼイが振り向く。
「魔法陣の講義とは……」
「それは珍しい」
良かった。オーウェンの無礼な態度よりも興味が勝ったらしい。二人は真面目な顔で私を見て、首を傾げた。
「アオイの強さは魔法陣、ということか?」
「そういえば、自分で魔術具を作っていると聞いたな」
二人にそんなことを言われつつ、魔法陣の方へ歩み寄る。
「はい。なので、魔法陣の全容を確認したいと思いますが、この壁は壊しても大丈夫ですか?」
そう尋ねると、マッシュは深く頷いた。
「うむ。既に我が国では研究を終えた代物だ。図形の記録もしておる。まぁ、可能なら形はできるだけ残して欲しいが……」
そう言われて、壁に手を触れて頷く。
「そうですね。この魔法陣部分は残して、その左右を壊す形で奥へ行きましょう」
「それは助かる。では、調査を続けてくれ」
許可は得た。
「それでは、天井が崩落しないように注意しながら調査をさせていだきます」
そう前置きをして、土の魔術を行使する。左右の壁の一部を撤去し、開き戸を開けたような形で固定した。天井を支える柱の役割もしていた筈なので、そちらも強化しておく。
即席だが通路ができたので、壁の向こうをのぞいてみる。
すると、奥には幅二メートルほどの通路が横一直線に広がっていた。
「……これは、思った以上に広いかもしれませんね」
そう言って薄暗い通路を見ていると、後方からオーウェン達も入って来た。
「面白い。つまり、地下には幾つか部屋があり、それぞれを魔法陣で繋げて一つの立体魔法陣としているわけだな」
オーウェンがそう言って、通路の壁に描かれた赤い線を眺めていると、グレンが目を輝かせて通路を見回す。
「ほほう! これは歴史的発見じゃのう! 間違いなく今までで最も大きな魔法陣じゃぞい!」
そう言って喜ぶグレンに、ラムゼイが同意しつつ歩いてくる。
「ブッシュミルズ皇国としても良い話になるやもしれん。しかし、誰がこれほど手の込んだものを……」
ラムゼイがそう呟き、マッシュが腕を組んで唸った。
「……まさか、それほど巨大な魔法陣だとは思わなかった。はるか古代では、そういった魔法陣が当たり前のように使われていた、ということか? 俄かには信じられんな」
あまりにも規模の大きな魔法陣の存在を知り、マッシュは半ば呆れたように呟く。
「……それだけ大きな魔法陣が必要な魔術とは、いったい何なのか」
その時、ストラスが小さな声でそう言った。その言葉は小さいのに良く響き、皆の視線がストラスへと向かう。
「……ほら、あれじゃない? この古都を焼き尽くした炎の魔術ってやつ?」
ハイラムがそう口にすると、シェンリーが肩を震わせる。
「そ、そんな魔術、復活させない方が良いんじゃないでしょうか……」
「た、確かに……!?」
再び不安になるシェンリーとそれに釣られて震えるエライザ。そんな二人を見て、深く頷く。
「もし、それほど危険な魔法陣であれば、内容は一切公開しません。それでどうでしょう?」
そんな提案をすると、シェンリーはホッとしたように答えた。
「あ、そ、それなら……」
そう言って微笑むシェンリーに、ロックスが意地の悪い顔で笑う。
「いや、アオイはもうそれくらい危険な魔術をいくらでも使えるだろう?」
「え!? そ、そういえば……」
ロックスの不用意な発言に、せっかく安心してくれたシェンリーがまた顔面蒼白になってしまう。ロックスのそんな発言に、眉根を寄せて抗議を示した。
「もう、ロックス君? 適当なことを言わないでください」
きちんと教員として注意したつもりだったが、私の台詞に苦笑や失笑が巻き起こる。
「……説得力がないな」
「適当でもなかったぞい」
「まぁ、否定できない言葉だよね?」
ストラス、グレン、ハイラム達からそんなことを言われ、なんとも言えない気持ちで押し黙る。その間に、通路の線を追って歩き回っていたオーウェンが戻って来た。どこか興奮した様子で、オーウェンは珍しく笑みを浮かべる。
「アオイ、これは凄い発見かもしれんぞ」
「え?」
首を傾げて聞き返すと、オーウェンは通路の先を指さした。
「この魔法陣は、我々の研究を著しく発展させる可能性がある」