軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

古代の魔法陣2

地下に降り、通路を進んでいくと広間へと辿り着いた。とても地下とは思えない高い天井の広間だ。薄暗いが、広間の奥は天井から光が差し込んでおり、そのお陰で採光は得られていた。

室内は随分と広いのに、物がなにもない。家具どころか板一枚も落ちていないような状況だ。ただ、奥の壁の近くだけは大小様々な瓦礫が転がっている為、まるでそれらを展示でもしているかのようにも見える。差し込む光のせいだろうか。どこか神々しい雰囲気である。

室内を歩くと、固い足音が反響して耳に残った。

「……あれだな」

先を歩くマッシュが奥にある壁を指さして呟く。その言葉に、ラムゼイが顔を上げて返事をした。

「おお、懐かしい。久しぶりに見ましたな」

そう言って前へ歩いていくと、その後をオーウェンやグレンも続く。私が見えやすい場所に行こうと歩き出すと、少し怖がっていたシェンリーやエライザも付いてきた。瓦礫の傍まで移動して顔を上げると、壁の全景が視界に収まる。どうやら天井には穴が空いており、そこから漏れこむ光で地下でも明るくなっているらしい。一部崩落によるものだが、お陰で魔法陣を見ることができた。

壁には赤い線で描かれた丸い魔法陣がある。だだっ広い空間に、僅か直径二メートルほどの円で描かれた魔法陣だ。それなりに緻密だが、魔法陣の講義を受けた受講者なら読み解くことが出来るのではないかと思われた。

だが、マッシュは難しい顔で魔法陣を見据え、溜め息を吐く。

「……我らもこの魔法陣の研究をしてきたのだが、結局これが何なのか分からぬままであった。恥ずかしい話だが、折角調査するなら、その調査結果を余にも教えてほしい」

そう言って、マッシュはこちらに振り向く。ラムゼイも期待を込めた目でこちらに顔を向けた。

「数十年にわたって我が国の上位に位置する魔術師が研究を続けてきたが、この魔法陣が機能していないこと。それと、この都市が放棄された理由の一つかもしれないことくらいしかわからなかったのだ。いや、何も分からなかったから、そう推測したというべきか」

ラムゼイは肩を竦めてそう口にした。

「それでは、フェルター君が幼い時に何故魔法陣を見せたのでしょう? この魔法陣が重要な設備だったという歴史を教える為ではなかったのですか?」

そう尋ねると、マッシュとラムゼイが揃って苦笑した。

「隠しても仕方ないから正直に言うが、古都が出来てからブッシュミルズ皇国が大きく発展したのは間違いない。しかし、この魔法陣に関しては全く分からんのだ」

「むしろ、繁栄を極めた古都だったが、この魔法陣が暴走して人の住めぬ町になったのではないかとも言われておる」

二人はそう言って、魔法陣へと向き直った。結局、ここでも失われた技術という扱いなのだろう。この古都を放棄せざるを得なかった原因かどうかは不明だが、この魔法陣を研究したところで答えに辿り着くことは無いだろうとは思った。

二人の回答に頷き、生徒たちへ顔を向ける。

「……魔法陣を勉強中の皆さんはどうですか? この魔法陣を見て、何かわかりましたか?」

そう尋ねると、ロックスが自分の頭を片手で掻きながら唸る。

「むむむ……! これは、講義で学んだことと違うやり方じゃないか?」

悩みつつも、ロックスがそう答える。自分なりに考えた結果、私が作る魔法陣との違和感に気が付いたようだ。それに頷き、他の人たちにも目を向ける。

「後はどうでしょう?」

その質問に、エライザが首を捻りつつも答えた。

「……失礼ですが、作りかけのような印象が……」

「あ、そうですよね。何かの現象を成す部分が無いような……」

エライザの言葉にシェンリーも曖昧に同意する。二人は熱心に学んできた分、より深くまで違和感の正体に気が付けたようだ。

皆の回答に満足して頷き、正解を教えようと口を開いた。

「実は……」

私が答えようとしたその時、ハイラムが少し前傾姿勢になって目を細め、魔法陣を凝視しながら呟いた。

「……これ、魔法陣の一部じゃない?」

その一言に皆の視線が向く。

「え?」

「なに?」

驚く声を耳にしつつ、ハイラムの考えについて尋ねる。

「どうしてそう思ったのでしょう?」

すると、ハイラムは魔法陣を指さして答えた。

「この前少し教えてもらった癒しの魔術の魔法陣を思い出したんだけど、円状の魔法陣を何枚も重ねて作る立体魔法陣の、一番上にある魔力の入り口と出口の部分……その形に似ている気がしたんだけど……」

そうハイラムが口にして、エライザが目を見開いて驚愕する。

「え!? アオイさんの一番弟子の私だって立体魔法陣は習ってないのに、どうして……!?」

「え? そこ?」

エライザが愕然となって叫ぶ中、ハイラムは眉根を寄せて疑問を呈した。そんな二人のやり取りを見て、一応フォローをしておく。

「ハイラム君は癒しの魔術を急いで習得する必要があったので、皆さんより早めに癒しの魔術だけ高度な魔法陣を学んでいます」

そう告げると、エライザは涙目でこちらを見てきた。

「今度、土の魔術の立体魔法陣を教えますので……」

苦笑しながらそんなことを言っていると、マッシュが真剣な顔で口を開いた。

「……ちょっと待ってくれ。つまり、この魔法陣は未完成ということか?」

その質問に、私は首を左右に振って答える。

「いえ、恐らく、この壁の向こうに魔法陣が続いているものだと思われます」