軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

入国4

チーフは意識を取り戻してすぐに上体を起こし、周りを見回した。そして、腕を組んで自分を見下ろすフェルターに気が付き、自分が負けたのだと理解する。

「……まさか、これほどお強くなられているとは」

チーフがそう呟くと、フェルターは鼻を鳴らして答えた。

「……俺の目標は爺に圧勝することだ。まだまだ強くなる」

フェルターは当然のことのように自らの父を超えると口にする。フェルターの父であるラムゼイは、ブッシュミルズ皇国最強と称される存在だ。それに圧勝することを目標にしているなど、普通の者が口にすれば冗談だと思われるだろう。

しかし、フェルターは臆面もなく言ってのけた。それを聞き、チーフは眩しそうに目を細め、息を漏らすように笑う。

「……フェルター様なら、それも成し遂げられることでしょう」

チーフがそう告げると、フェルターは頷いてから腕組みを解き、ハイラムに顔を向けた。

「治療、感謝する」

「……え?」

驚くハイラムを放置して、フェルターはそのままモアの方へ向かって行った。自分に近づいてくるフェルターに、モアは身構えるような恰好になる。ものすごく慌てているようだが、もしかして昔のフェルターは男女構わず強者に向かっていっていたのだろうか。

少し不安になりながら様子を窺っていると、フェルターはモアの前に立った。シェンリーと並ぶよりも大きな身長差があり、完全に大人と子供だ。まさか、いきなり殴りかかるようなことはないだろうが……。

そんなことを思っていると、フェルターはモアを見下ろして口を開く。

「……次はお前とだ」

「え? あ、そ、その、連戦はその、公平ではないので、ま、また次回に……」

モアがそう言って困ったように笑うと、フェルターは深く息を吐いた。

「別に疲れてはいない……だが、そう言うなら次回にするとしよう。その分、俺はまた強くなっているからな。覚悟しておけ」

フェルターがモアの提案を受け入れつつ、不敵な笑みを浮かべる。それに嬉しそうに笑い、モアは大きく頷いた。

「は、はい! フェルター様ならお父上以上の英傑になられます!」

モアがそう言って拍手を送ると、フェルターは居心地悪そうに視線を逸らし、砦の方を指差した。

「チーフには勝ったから、通らせてもらうぞ」

フェルターがそう告げ、モアは何故か妙に動揺して落ち着きがなくなってしまう。

「あ、う、そ、そうですね……? あ、で、でも、もしよかったら、その、受付だけでも……」

「む? ああ、それは構わん」

怯えているのか、聞き取り難いほどに言葉が途切れ途切れになるモア。そんなモアの言葉に何も言わずに同意するフェルター。その返事を聞い、モアは少し安心したのか、ホッとしたように笑顔になって首肯した。

「そ、それでは! 是非、お食事でもしながら受付をしましょう! さぁ、どうぞ、こちらへ!」

モアはそう言いながら、砦の方へ戻っていってしまう。その背中を見送りつつ、フェルターは眉根を寄せて唸った。

「……食事をしながら、受付……?」

フェルターの疑問に、後ろで眺めていたロックスが鼻を鳴らして答える。

「久しぶりに帰ってきたから話でもしたいんだろ。良かったな、なつかれてるみたいで」

「……ふん」

ロックスの言葉に特に答えることもなく、フェルターは砦の方へと歩き出した。照れ隠しにも見えて、少し可愛らしい。ロックスがどう思ったのかは不明だが、肩を怒らせて歩くフェルターの背中を笑いながら眺めていた。

「ふむ、もう遅くなるし夕食をいただけるのは助かるのう」

「ブッシュミルズ皇国の食事か。どうだったか……記憶にないな」

グレンとオーウェンはマイペースにそんな会話をしながら砦へと向かっていく。対して、シェンリーとエライザは不思議な会話で盛り上がっていた。

「……モアさんの態度、ちょっと怪しかったような気がします」

「あ! やっぱり!?」

嬉しそうな、楽しそうな雰囲気で二人が妙な会話をしながら歩いて行く。それを横目に見て首を傾げていると、ストラスが眉間に皺を寄せて私と同じように首を傾げていた。

「……なんの話だ?」

「……分かりません」

結果、二人で首を傾げているだけだったが、そんな私達を見て、ハイラムは呆れたような顔で肩を竦めた。

「二人とも、そっち方面は初等部だね。まぁ、エライザ先生も中等部くらいっぽいけど」

と、意味深な発言をして去ろうとするハイラムに、ロックスが笑みを浮かべて付いていく。

「これは面白そうだな」

「……言っておくけど、悪趣味だよ?」

そんな二人のやり取りを聞いてから、ストラスと改めて顔を見合わせた。

「……どういうことだ」

「聞かないでください」

そう答えると、ストラスは深く溜め息を吐く。そして、軽く首を左右に振って皆の後に続いた。

「ちょっと、ストラスさん? なんですか、今の反応は」

「……いや、なんでもない」

「使えない奴だと考えませんでしたか?」

「考えてない」

含みのある表情をして去ろうとしたので問いただそうとしたが、ストラスは逃げるように歩いていってしまった。

なにか腑に落ちない。

そんなことを思いつつ、私も砦へと向かうのだった。