軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ブッシュミルズ皇国へ

「……俺も行くのか」

「仕方ないだろう」

「……なぜ、お前も行く?」

「俺は行きたいから行くんだ」

フェルターとロックスが変な会話をしている中、オーウェンと馬車の確認をする。今回はオーウェンも同行するということで、新型の馬車を準備してみたのだ。

「この御者席は必要なのか?」

「様式美です」

「……無駄にしか思えんが」

そう言いつつ、オーウェンは馬車を見上げて腕を組む。馬車は背が高く、中は広く作ってある。馬で引くなら四頭以上でなければ動かすことも出来ないだろう。人数は八人乗りだ。荷物用のスペースもある。

「それにしても大きいな。それに、馬でも引けるように車輪を用意してあるのか」

オーウェンは馬車に対して率直な感想を持ちつつ、眉根を寄せて振り返った。

「しかし、地味過ぎないか?」

「え?」

オーウェンの言葉に驚いて顔を上げる。馬車は箱型なのだが、色は黒と銀を基調としていて豪華な感じだと思う。むしろ、他の馬車が真っ白だったり真っ赤だったり、中には金ぴかだったりして派手過ぎると感じている。もしくは木材そのままで装飾も無いシンプルな馬車だ。個人的にはそれもレトロ調で良いとは思っている。

「……あ、でも、今回はちょっと工夫があって」

「ん?」

この馬車はまだ完成ではない。そういう思いで前置きしつつ、魔術を行使した。オーウェンが不思議そうな顔で見つめる中、氷の疑似精霊を呼び出して馬車の前に配置する。氷の疑似精霊は馬の形をしており、冷気をまとって美しいたてがみを揺らしている。

「地上ではこの馬に引かせれば目立ち難いと考えまして」

「……お前は天才なのか馬鹿なのか分からん」

「失礼ですよ」

オーウェンの突然の無礼な発言に文句を言った。そこへ、グレンが笑いながら歩いてくる。

「ほっほっほ。これは目立つ馬車じゃのう。ブッシュミルズ皇国に行くならちょうど良いかもしれんぞい」

「なに?」

グレンの言葉にオーウェンが訝しげな顔になった。その様子を見て目を細め、グレンは軽くブッシュミルズ皇国について解説をしてくれた。

「ブッシュミルズ皇国は獣人が多い国じゃ。まぁ、昔の話じゃが、獣人たちが迫害されていた時代があってのう。ブッシュミルズ皇国は未開拓の森に逃げ込んだ獣人たちが起源になっておる。そんな過去もあってか、ブッシュミルズ皇国は獣人たちの結束が強いのが特徴じゃ。そこへ人間だのエルフだのが行くと、下手をすると舐められて門前払いになる可能性もあったりして……」

「……エルフの国と大して変わらんじゃないか」

グレンの言葉にオーウェンが不満そうに呟く。それにグレンは呆れたように首を左右に振った。

「エルフの王国、アクア・ヴィーテの方が閉鎖的じゃわい。ブッシュミルズ皇国は深い森を切り開いて作った国じゃからな。その性質上、各国との貿易には力を入れておる。特に、今では各国へブッシュミルズの要人が出向くことも増えたようじゃぞ」

「そう言われるとそうか。なにせ、大国の一つとして数えられるくらいだからな」

グレンの解説に成程と頷き、オーウェンは改めて馬車を見た。

「ならば、この馬車は良い力の誇示になるだろう。そう思ってみると、この黒い馬車も相手を威圧する為の道具に見えてきたな」

「そんなつもりはありませんでしたが……」

妙な誤解を受け、思わず眉間に皺を作ってオーウェンを睨む。黒い馬車は高級感しか感じないはずである。それに汚れにも強いと思う。

そう思っていたのだが、後から走ってきたシェンリーやエライザ達の反応は違った。

「お、遅れましたー……へあっ?」

「講義が終わりました……って、すごい馬車!?」

「……調査ではなく、ブッシュミルズ皇国に攻め入るつもりだったのか?」

シェンリー、エライザ、ストラスが馬車の傍まで来て口を開く。シェンリーとエライザは馬車を見上げて驚き、ストラスは半眼になって不穏なことを言っている。

「いえ、今回は大人数での調査になるので、快適な馬車を用意しようと思っていたのですが……」

ストラスの疑問に答える形で返事をしたが、それに呆れたような表情が返ってきた。

「普通の馬車か、これは?」

「あの、馬が凍っていますが……」

それぞれ感想をもらうが、あまり好意的なものとは思えなかった。がっかりしていると、フェルターとロックスが馬車を見て口を開く。

「……良い馬車だ」

「ああ、これでブッシュミルズの王都に入れば度肝を抜けるぞ。まぁ、もしかしたら攻撃を受けるかもしれないが、反撃する形で力を見せつければ調査が楽になるかもしれんな」

二人はそんな会話をして満足そうに馬車の壁面を叩いて笑みを浮かべる。褒めてくれてはいるようだが、あまり嬉しくはなかった。