軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法陣は難解過ぎる

講義室から出て、クラウンやグレンが質問を大量に持ってきたので、さり気なくオーウェンに場を譲って移動する。廊下を進みながら頭の中でグルグルと考え込んでいると、後ろから声が聞こえた。

「アオイ」

「アオイさん?」

ハイラムの言葉にショックを受けている私を見て心配してくれたのか、ストラスとエライザに声を掛けられる。振り向くと、そこにはストラスとエライザだけでなく、ロックスやフェルター、コート、シェンリー、アイル達の姿もあった。

「大丈夫か?」

「あまり、気にしないでくださいね」

心配そうなストラスとエライザにそう言われて、苦笑交じりに頷く。

「大丈夫ですよ。皆さんもご心配していただき、ありがとうございます。講義が難しくて分かりにくいというのは私のミスですから、どうにかして改善していこうと思っています」

そう答えると、ロックスが腕を組んで不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「ふん……ハイラムもハイラムで向上心が足りん。普通に考えるなら、今後の可能性を視野に入れて魔法陣を学んでおくべきだろう。我らは王家を代表してこの学院に来ているのだ。国の発展を考えていないばかりか、メイプルリーフ聖皇国が大国の一つと数えられなくなることもあるというのに……」

ロックスがそう言って首を左右に振ると、フェルターが無表情で軽く頷く。

「……メイプルリーフは癒しの魔術があるからな。他の国に比べて危機感が無いのだろう」

「すでにアオイが癒しの魔術を再現した筈だぞ。まさかとは思うが、継承権が下位だからと自暴自棄になっているのか? そうだとしたら随分と小さな男だ」

と、フェルターとロックスがハイラムの事情を想像して話す。そこに、横でその内容を聞いていたコートが乾いた笑い声をあげて口を開いた。

「流石に、メイプルリーフ聖皇国出身の生徒を派遣してくるとは思いますよ。それに、宮廷魔術師のクラウンさんも講義を受けていますし」

「ふん、どうだかな」

コートのフォローにもロックスは苛々しながら答えた。

「……まぁ、ハイラム君の心情がどうであれ、講義が難しかったのは確かでしょう。事実として、初等部や中等部の生徒は殆ど来なくなってしまいましたし」

短く息を吐いてそう告げると、ロックス達も押し黙る。どう答えたら良いか分からないといった態度をとる三人に対して、シェンリーが近づいて来て口を開いた。

「わ、私は分かりやすかったです! アオイ先生の教えてくれた雷の魔術を思い出しました!」

シェンリーはそう言って、紙に書き写した魔法陣を見せてくれた。確かに綺麗に描けているし、記号の意味についても全てメモしてある。

「ありがとうございます……何故、シェンリーさんは分かりやすいと感じたのでしょう? シェンリーさんと同じように考えることが出来たら、皆にとっても分かりやすくなると思うのですが……」

質問をしてみると、シェンリーは眉根を寄せて可愛らしく唸った。

「そ、そうですね……その、以前からアオイ先生の講義を聞いていたからでしょうか? アオイ先生の言いたいことが分かるというか……」

シェンリーは必死に考えながら自分なりに理由を答えてくれる。だが、それにアイル達が顔を見合わせた。

「えー? そうかな?」

「私は少し難しかったです」

「でも、実際に魔法陣を描くのは面白かったですよ」

と、シェンリーの意見を否定する回答をする。シェンリーは肩を落としてあからさまに落ち込んでいた。

「そうですね……もう少し簡単に、時間を掛けて理解してもらうしかなさそうですが、どう分解して教えていけば良いか考えないと……」

そう言って苦笑すると、ストラスが自らの顎を指で撫でながら頷く。

「……なら、まずはもう出来上がった魔法陣の解説と実演だけをしてみるのはどうだ? 詠唱をする魔術もそうだが、基本的には既存の魔術を勉強して理解を少しずつ深めていく。それを魔法陣でもやれば、何年もすれば多くの魔法陣を覚えて、もしかしたら自分でも作成することが出来るようになるかもしれない」

ストラスがそう言うと、エライザが笑顔で答えた。

「それは良いですね! やはり、最初は魔法陣という魔術に触れてもらうことから始めて、難しい魔法陣を作成出来たら自分でも一つ魔法陣を作ってみる、とか……!」

「……成程」

二人の言葉に首肯して返事をする。確かに、魔法陣が身近にないのだから、まずは触れてみるくらいにした方が良いのかもしれない。

それなら、魔法陣をランク分けする必要がある。

「初級の魔法陣、中級の魔法陣、上級の魔法陣、特級の魔法陣にクラス分けして、上級以上の魔法陣を作成できる生徒に魔法陣の作り方を教えていく、と……確かに、その教え方が一番分かりやすい気がします」

皆のお陰で、講義の内容を改善する見通しがつきそうだと感じ、心が軽くなるのを感じた。

「皆さん、ありがとうございます。ちょっと講義内容を見直してみます」

そう告げて、私は顔を上げた。現在ある魔法陣の整理も必要だ。やることは山ほどある。