軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法陣のクラス分け

まず、教えるためには既存の魔法陣をそれぞれレベルごとにクラス分けする必要があると感じた。それを表にすることで、受講する生徒から見ても分かりやすい指標になると判断したのだ。

基本的には初級魔術をクラス一として出来るだけ簡単な魔法陣に変換。中級魔術はクラス二、上級魔術はクラス三といった感じだろう。

ただ、詠唱では中級魔術として教えられているが、内容が意外と複雑で魔法陣にしてしまうと上級以上の魔術と同等のものもある。それらをしっかりと確認してから魔法陣のクラス分けをしないと教えられる方が困惑してしまうに違いない。

「分かりやすいように、火球と水球、風刃、石球などの似た魔術を並べて魔法陣にして……後は、炎壁、水壁、氷壁、土壁などを比べてみても面白いかもしれませんね」

研究室に一人で机の前に腰かけ、紙にメモをしながら小さく呟く。

詠唱も同様だが、魔法陣の構成が似ているものは比べると分かりやすくなる。例えば、火球と水球の魔術を比べると、魔力の変質で温度を上げる、下げるという違いはあるものの、持続と飛来は同じである。火属性ならこうだったのが水属性ならこう変わる、といった形が明確になるのだ。

「つまり、出来るだけ似た形にして魔法陣を作る必要がありますね……少し効率は低下しても仕方がない……」

「なんだ、この魔法陣は」

「え?」

誰に対してでもなく、自分の頭の中の言葉をまとめる為に口に出していたのに、突然それに相槌が返ってきた。いや、どちらかというとクレームだろうか。

視線を横に向けると、魔法陣を描いた紙を両手でつかむオーウェンの姿がある。眉根を寄せて唸り声を上げながら紙を睨むオーウェンに、思わず溜め息を吐いてしまう。

「……なにか、文句でも?」

そう尋ねると、オーウェンは紙を机の上に置きなおして、鼻を鳴らした。

「わざわざ手間をかけて魔力を変質し直して水球を作ってどうする。効率が落ちるだけではないか」

「生徒達に教える為です。こうすれば、火の球を作る魔術と似た形になりますし」

「無駄だ。そんなことをしてどうなるというのか」

と、オーウェンはぶっきらぼうに否定の言葉を口にする。魔法陣の研究に百年という年月をかけてきたオーウェンにとって、あえて効率を悪くするという発想は無いに違いない。

「初心者に教える為に試行錯誤しているので……それより、どうして私の研究室に? せめてノックしてから入室してください」

そう告げると、オーウェンは眉を八の字にして腕を組んだ。

「何を言う。何度もノックしたぞ。返事が無かったから扉を開けてみたら、この良く分からない魔法陣をせっせと作っているアオイがいたから後ろから眺めていたのだ」

「声を掛けてください。驚きました」

「む、承知した」

そんな会話をしてから、描いた魔法陣を机の上に並べていく。

「この前の講義では内容が難しくて失敗してしまいました。その原因は、最初から効率的かつ洗練された魔法陣を題材にし、自分達でも詠唱魔術を分解して魔法陣を作りましょうと目標を持って取り組んだことが一つの要因だったと思います。そう考えると、まずは皆で簡単な魔法陣を描いてもらい、魔法陣を実際に体験してもらうことが重要でしょう」

そう告げると、オーウェンはとても嫌そうな顔で魔法陣を指差す。

「つまり、学院で教えている魔術の詠唱を素直に魔法陣にしたわけか。あとは、火球を基本にして各属性の球体を飛ばす魔法陣を作っている、と……このやり方だと何十年かかるか分からないぞ」

「そうですか? まずは魔法陣に興味を持ってもらうことだと思いますが……」

オーウェンの苦言に反対意見を述べる。するとオーウェンは面倒臭そうに紙を指差して答えた。

「……生徒に教える義務があるということか。それなら、この魔法陣の内容は少し変えた方が良い。詠唱の過程を考えると、燃焼の部分を魔法陣で効率化してしまっているぞ。詠唱の魔術はもう少し遠回りだった」

「え? そうですか?」

そう呟いて描いたばかりの魔法陣を確認する。言われてみれば、確かに初期で習う詠唱よりも効率化されているように感じられた。簡単にいうと、十小節での詠唱を八詠唱に短縮してあるような感覚だ。

「……よく、そんなことに気が付きましたね。もう随分と詠唱による魔術を使っていないでしょう?」

驚いてそう尋ねると、オーウェンは首を左右に振った。

「一度初等部と中等部の講義を見ておいた。随分と無駄の多い詠唱ばかりだったがな」

オーウェンはそう呟き、肩を竦める。まさか、一度か二度講義を見た程度でそんなことに気が付くとは。

「……オーウェンは本当は賢いのね」

「……馬鹿にしているな?」

驚いて素直な感想を口にしたのだが、何故かオーウェンは目を細めてこちらを睨んだのだった。