軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オーウェン召喚

戸惑うオーウェンをそのままに、私が調理した食事をテーブルに並べる。素材は山ほどあるのに食材が殆どなかった為、今回は近場で狩った魔獣の肉を焼いただけの料理だ。

「……少し、味付けが濃いな」

「まずは、作ってもらったことの感謝を口にしてください」

「む……ありがとう」

「どういたしまして」

そんなやり取りをしながら、香草と一緒に焼いた肉を二人で食べる。せめてパンが欲しいが、無いものは仕方がない。

皮の表面をカリカリに焼いた為、食感は中々良い。肉の臭みを感じさせないように香りの強い香辛料を多めに使ったのだが、それがオーウェンには辛いと感じられたようだ。とはいえ、通常の町の飲食店で提供される料理としては普通くらいの味付けである。

「普段は何を食べてるんですか?」

「……山菜と魔獣の肉、魚だ。特に、キノコが多いな」

「そうですか」

これは、まともな調理をしていないに違いない。オーウェンの返事を聞いてすぐにそう思った。味付けせずに焼くだけといった調理だから、私の味付けが濃いと感じるのだろう。

「……誰とも関わらずに研究に没頭すれば、確かに研究に費やせる時間が増えます。しかし、フィディック学院に行って研究するなら私専用の研究室もありますし、食事の為の時間なども短縮されます。狩りをする時間も調理する時間も不要ですし、多少貴重な素材でもフィディック学院であればすぐに揃えることが出来るでしょう」

「……むむ。確かに、それは魅力的な提案だな。しかし、講義を手伝わなければならんのだろう? それが少しな……」

「大丈夫です。全ての講義に出ろというわけではありませんから」

「む、そ、そうか……? それなら、まぁ……」

と、オーウェンは渋々といった様子ながら頷いてくれた。

「良かった。それでは、明日は一緒にフィディック学院に行きましょう」

「明日? もう学院に行くのか? グレンは知っているのか」

「いえ、明日許可をもらいます」

そう告げると、オーウェンは呆れたような顔で目を細める。

「……変わらないな、アオイは」

オーウェンはそう言ってから、口の端を上げて息を漏らすように笑ったのだった。

翌日、フィディック学院に戻ると、オーウェンは学院内を歩く生徒達を見て目を丸くした。

「……こんなに多かったか? 人間だらけだな」

「今年は各国から転入生が相次いでいるそうです。一か月に二十人以上は増えていると思います」

「……やはり、来るべきじゃなかったか……」

人の多さに辟易した様子のオーウェンを引き連れて、学院内を歩いて進む。

「あ、アオイ先生だー!」

「エルフの人もいるよ!?」

「先生、その人誰ー?」

学院内を進んでいると、初等部の生徒達に囲まれた。生徒達は私の周りに集まり、飛び跳ねたりオーウェンの顔を見たりしている。一気に騒がしくなり、オーウェンはすごく嫌そうな顔で押し黙った。その様子を横目に見て苦笑しつつ、生徒達に挨拶をした。

「今度、新しく始める講義を手伝ってくれる人ですよ。オーウェンさんといいます。皆さん、仲良くしてくださいね」

そう告げると、子供達はオーウェンを見上げて頷く。

「はーい!」

「よろしくお願いします!」

元気よく挨拶する子供達。目を丸くしてその様子を見てから、オーウェンはこちらに振り返った。

「……まさか、こんな子供相手にも講義をするのか? 魔法陣を理解できるとは思えないぞ」

「私も子供の頃にオーウェンに教えてもらいましたよ?」

「お前は普通じゃないからな……」

戸惑いつつ、オーウェンはそんなことを呟く。

初等部の生徒達と別れてからも中等部や高等部の生徒達と挨拶を交わしながら、グレンの下へと移動した。学長室に行って扉をノックすると、すぐに応答があった。

「ほいほい、なんじゃな?」

扉を開けて顔を出したグレンが、すぐに私を見て、次に背後に立つオーウェンに気が付いた。グレンは目を丸くして固まり、オーウェンの顔を見つめて目を瞬かせる。

「……死んでゴーストになったわけじゃなさそうじゃのう」

「ボケたのか、グレン」

久しぶりに会ったというのに、二人はそんなやり取りをして黙った。とはいえ、悪い雰囲気ではない。

「今度の魔法陣の講義ですが、オーウェンにも手伝ってもらおうと思いまして……」

「ほ? お、オーウェンが教員になるということかの?」

「教員などならんぞ」

混乱するグレンの言葉を、オーウェンが仏頂面で否定する。グレンとオーウェンだけに会話させていたら何時間もかかってしまいそうだ。そう思い、さっさと自分のアイディアを伝える。

「オーウェンには講義の助手をしてもらおうと思っています。ただ、講義以外の時間は自身の研究に当てますので、研究室を一つ貸してください」

「……オーウェンがアオイ君の助手。これまた予想外じゃぞい」

簡単に説明したところ、グレンは乾いた笑い声をあげてそう呟いたのだった。