軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オーウェンの研究室

「誰が助手だ」

「協力者に言い換えましょうか?」

「師と呼べ」

「では、オーウェン師で」

「……やはり、その呼び名は好かん」

「我が儘ですね」

二人でそんなやり取りをしていると、グレンが困ったような顔で口を開いた。

「……お話し中に申し訳ないのじゃが、そういえば研究室は全て埋まっておったぞい」

そう言われて、オーウェンが眉間に皺を寄せる。

「それは困る。一つ空けてくれ」

「いや、そう言われてものう……」

オーウェンのコネの強要にも、グレンは複雑そうな表情で唸った。まぁ、既に研究室を割り当ててもらえた教員や生徒を追い出すのは申し訳ない。とはいえ、オーウェンの研究室が無ければこの話自体が無かったことになってしまう。

「それでは、学院の中庭の奥に研究室を作っても良いですか? ついでにそこに小さな家も作れたらと思うのですが」

「が、学院に家を作る……? いや、それは大丈夫じゃが、オーウェンが学院の中に住むのかのう?」

「ふむ、良い案だ。そうすれば、研究する時間は減らないだろう」

困惑するグレンと納得した様子のオーウェン。とりあえず、話はまとまったようで良かった。

その後、オーウェンと二人で学院内の中庭の奥にそっと研究室と家を建てた。土の魔術で建てた家はそれほど大きくはないが、元々生活空間を重要視していないオーウェンは特に気にしなかった。

むしろ、寝室を出てすぐに研究室があり便利だと喜んでいたくらいだ。

こうして、オーウェンの引っ越しは完了した。せっかくなので、引っ越し祝いをしようと思い、ストラスとエライザにも声を掛ける。

「……いつの間に、学院内に家が」

「凄いです! お二人で作ったんですか!?」

驚くストラスと新居に感動するエライザ。

「リビング、寝室、浴室があります。隣は研究室と小さめの倉庫ですね」

「凄いです! 私にも一軒建ててください!」

「グレン学長の許可が下りんだろう」

テンション高めで建築依頼をしてくるエライザにストラスが呆れ顔で反論する。エライザは悔しそうに唸りながらリビングを見て回り、首を傾げた。

「あれ? 家主のオーウェンさんはどちらに?」

その疑問に、苦笑しつつ外を指差す。

「さっそく研究室に籠っていますよ。申し訳ありませんが、研究室で乾杯しましょう」

「研究室で乾杯……」

「私は良いですよ!」

そんな会話をして研究室に移動すると、テーブルに道具を広げたオーウェンの姿があった。オーウェンは椅子に腰かけてテーブルの上にある道具を触っており、小さくブツブツと何か呟いている。

「こ、声を掛けられないような雰囲気では?」

その様子にエライザが委縮するが、そんなことを気にしていたらオーウェンと会話することは一生できないだろう。

「オーウェン。お祝いをしますよ」

「む?」

声を掛けると、オーウェンは顔を上げて私たちの顔を見た。

「ふむ、どこかで見た顔だな」

「エルフの国で会ったでしょう?」

「そうだったか。なら、自己紹介は不要だな」

それだけ言って立ち上がるオーウェン。ストラスとエライザのことを覚えていない段階で改めてお互いに挨拶をすべきだろうが、恐らく覚える気が無い。ストラスもエライザも貴族の出なのだが、オーウェンは失礼だとか考えてもいないだろう。

「……すみません。こういう人なので、あまり気にしないでください。悪気は無いのです」

「お、お母さんみたいですね、アオイさん」

オーウェンの代わりに謝罪すると、エライザが乾いた笑い声をあげてそんな感想を口にした。ストラスは微妙に怒ったような表情をしているが、後でフォローをしておこう。

「料理はあるのか?」

一方、オーウェンはこちらの気も知らずに食事の心配をしていた。というのも、研究時間を確保する為に食事をさっさと済ませようとしているに違いない。

「ありますよ。お酒もどうぞ」

「酒はいらん。眠気がきやすくなる」

「そう言うと思って、果実水も持ってきましたよ」

「でかしたぞ、アオイ」

懐かしい気持ちになる会話をしながら、さっさとテーブルの上に置かれている道具を退けて食事と飲み物を並べていった。エライザがグラスに飲み物を注いでいき、皆でテーブルを囲う。

「それでは、オーウェンの新居完成と引っ越し祝いをしましょう」

「はい!」

挨拶をするとエライザだけが元気に返事をした。何故か黙る男二人。

「……それでは、乾杯」

「かんぱーい!」

仕方ないので乾杯の合図も自分でした。ノリの良いエライザは大喜びでグラスを持ち上げているが、二人は無言でグラスを上げただけだ。そして、一番にストラスが勢いよく酒を呑み干す。ストラスがそんな飲み方をする姿は見たことが無い。エライザも同様に驚いたらしく、唖然とした顔でストラスを見ていた。

「……ほう。酒に強いようだな」

オーウェンがそう言ってストラスを見るが、ストラスは無言でグラスに新たな酒を注ぐ。

「ふむ。無口な男だ。気に入ったぞ。余計なことを話す男よりよほど良い」

と、オーウェンはストラスの態度を何故か好意的に受け取って食事へと戻った。良く分からないが、ストラスのことを気に入ったらしい。二人揃って変わっているので丁度良いコンビになるのかもしれない。

そんなことを思いながら、私も食事を始めたのだった。