軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初等部での噂

エライザが確認してくれたところ、子供たちは素直に初等部で流れている噂について語ってくれた。

「……実は、アオイ先生の正体がドラゴンだという噂が流れているようで……」

「え?」

エライザの言葉の意味が分からず、思わず生返事をしてしまう。

ドラゴン? 何故、そんな噂が流れるというのか。むしろ、ドラゴンは私にとって大事な魔法陣の材料である。別に嫌いではないが、自分がドラゴンだと言われても困ってしまう。

「……何故、ドラゴンだと? 私が口から魔術を使うところでも見られたのでしょうか」

「いえ、そういうことでは……え? 口から魔術を?」

「どこでそんなことをしたんだ……」

私の言葉にエライザが目を丸くし、ストラスが呆れたような顔で呟いた。

「いえ、とりあえず、噂の真相を教えてください」

気になる話だ。腰を折るわけにはいかない。

「人間が口から魔術を使うことが出来るかどうかも気になりますが……」

スペイサイドが何か言っているが、それは聞かなかったことにした。

「それで、噂の真相は?」

再度そう尋ねると、エライザが困ったような顔になって口を開く。

「……えっと、どうやら、アオイさんがドラゴンを飼っているという噂が流れたのが始まりで、気が付けば、アオイさんが実はドラゴンで、飼っていると思われていたドラゴンがその子供じゃないか、と……」

「子供? 親ではなく?」

「引っかかるのはそこか?」

エライザから信じられないような噂の真相を聞き、驚愕して聞き返した。ストラスが何か言っているが、それは聞かなかったことにした。

「ほら、アオイさんがドラゴンを飼っているのは本当ですし、それを見られてしまったなら仕方がないかと……」

「ドラコですね。しかし、ドラコは街や街道から離れた森に住ませてますし、基本的に外には出ないように言っておりますが……」

何故、学院内で噂になったのだろうか。そう思ったが、エライザやストラスは呆れた顔でこちらを見ていた。

「どうあっても目立ちますよ……たまに空を飛んでますし……」

「だいたい、いつも食事をあげる合図が目立っているからな。夜なら学院からでも分かるぞ」

「……迂闊でした」

二人の言葉に自分の不手際を悔いる。

だが、理由が判明したからには解決への道も見えてくるだろう。

「……それでは、初等部の子達には私がドラゴンではないことを伝えれば良いわけですね」

「信じてもらえますかねぇ……」

「え? 信じてもらえないのですか?」

とんでもない返事をもらい、驚いて聞き返した。それにスペイサイドが真顔で頷く。

「アオイ先生がドラゴンだと信じてもらうのは簡単です。なにせ、普通ではありませんからね。逆に、アオイ先生の正体がドラゴンだと信じて怯える子供たちに、それが嘘であると伝えても信じてもらえるかは分かりません。言葉ではどうとでも言えますから」

「冗談でしょう?」

スペイサイドの言葉に耳を疑う。そんな荒唐無稽な話、嘘であると証明することは簡単ではないのか。

「子供ですから、言えば納得するのではないですか?」

そう言ってみたが、三人は黙して語らなかった。

「……中等部や高等部ではアオイ先生がドラゴンを飼っているという噂しか流れておりません。子供達も大きくなれば、妙な噂に流されることもなくなるでしょう」

「放っておく、ということか」

スペイサイドの言葉に、ストラスが成程と頷いた。しかし、それは困る。学院の校舎では必ずどこかで初等部の生徒ともすれ違うはずだ。その度に悲鳴を上げて逃げられたら大変である。

「困ります。どうにかしなくてはなりません」

素直に自分の気持ちを伝えてみた。すると、二人は黙って唸る。子供相手だからこそ難しいと思っているのかもしれない。しかし、どうにかするしかないのだ。そうしなくては、新しい生徒が学院に来る度に、私を見て悲鳴を上げる子供達を見てどんな風に思われることか。

これは教員としてとても深刻な話である。

離れた場所で怯える子供達の姿がある。スペイサイドとストラス、エライザが言って待ってもらっているのだが、すぐにも逃げ出してしまいそうだ。

「……アオイさんが、初等部で講義をするのは難しいですよね」

「無理だな」

「無理でしょう」

エライザの案を、ストラスとスペイサイドがあっさりと否定した。

「いえ、エライザさんの提案はとても良いと思います。長時間話してみれば、流石に私をドラゴンだなどと思わないでしょう。なんなら初等部向けに楽しくなるような講義を考えてみても良いかもしれません」

「……我が学院は選択式で講義を選べます」

「選んでもらえないだろうが」

エライザの提案に乗ってアイディアを練ろうとしたら、スペイサイドとストラスが即座に否定する。いや、しかし、やり方は色々とある筈だ。

「……ちょっと、考えてみましょう」