軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔術具対決5

「ふ、不正だ! こんな圧倒的な差がついてたまるか!」

ラングス達が勝ってすぐにロイルがこちら側の不正を訴えた。だが、正真正銘魔術具一つずつのみ使用して勝っている。不正を疑われる点など無いはずだ。

「いえ、それぞれが魔術具一つずつを持って対決をさせていただきました。不正を疑われるような場面は無かったかと思います」

そう答えると、ロイルはその場で地面を蹴り飛ばしながら怒鳴る。

「黙れ! どう考えてもおかしいだろうが!?」

激昂するロイルは、こちらに向かって来ながら更に文句を重ねてきた。

「そもそも、対決の最中で外から助言するのは卑怯だろう!?」

「……そんなルールがありましたか?」

ロイルの指摘に思わず首を傾げて聞き返すが、冷静さを欠いたロイルには通じない。

「うるさい! そんなことを許可した覚えはない!」

怒りに我を忘れるロイルを静かに眺めながら、ワイド達オークションハウスの支配人がロイルを嫌がる理由が何となく理解出来た気がした。オークションでもしこのように激昂されてしまっては、支配人達は相当な苦労を強いられるだろう。

とはいえ、今回の勝負は不正などしていないし、そもそも相手の要望には全て答えて挑んでいるのだ。今更文句を言われても曲げるつもりはない。

「とりあえず、最初に言われていたルール通り、こちらがすでに六勝となりましたので、我々の勝ちということでよろしいですね?」

そう尋ねると、ロイルは顔を真っ赤にしながら怒鳴った。

「馬鹿か、貴様! 勝利した数と言ったはずだ! 今、貴様らは三勝! 後三回こちらが勝てば、勝負は引き分けだ!」

ロイルがまたも屁理屈を述べ出し、ついにロックスがキレた。

「……この野郎。そんな言い分が通ると思っているのか? 何なら、王族への無礼で騎士団に捕えさせるぞ!?」

今にも殴り掛かりそうな態度でロックスが迫ると、ロイルがL字型の魔術具をロックスの頭に突き付けて睨みつける。

「黙れ、小僧。この魔術具を使った勝負は俺が考え、俺がルールを決めたんだ。途中でルール変更をすることもルールの一つだ」

「後から後から、この野郎……!」

ロイルの台詞に感情的になるロックス。それを手で制して、間に入るように前に出た。

「……分かりました。とりあえず、魔術具を人に向けないでください。次にそれを人に向けたら、即座に戦闘不能にさせていただきます」

そう告げると、ロイルは口を斜めに曲げて一歩引いた。

「分かれば良い。それじゃあ、これから残った奴らで三戦するぞ。分かったな?」

「分かりました」

ロイルの要望を聞く。それにロックスの不満が爆発しそうになっていたが、今は黙らせた。相手はこちらの常識が通じない相手だ。文句を言って中断すれば勝負をなかったことにして帰るだろう。

それでは、こちらの気が収まらない。

「次はロックス君にお願いできますか? その後はクラウンさんです」

そう言って振り返ると、ロックスは口を尖らせてそっぽを向いていた。拗ねてしまったような態度が珍しく、笑ってしまう。

「……笑うな」

ロックスに怒られてしまった。それに謝りつつ、ロックスを説得する。

「すみません。でも、ここまできたら徹底的に勝ちましょう。二人は怪我をしないように頑張ってください。最後の一戦は、私が直接ロイルさんにお灸を据えますから」

そう告げると、ロックスは深い溜め息を吐き、僅かに口の端を上げた。

「……分かった。思い切りあの野郎を叩きのめしてくれ」

「私は珍しい魔術具が見れて楽しいけど」

ロックスとクラウンがそれぞれ返事をする。二人のそれらしい返事に笑いつつ、頷いた。

ロックスとロイルの護衛の一人が結界内に向き直り、睨み合う。

魔術具一つとはいえ、ロックスには応用の利く魔術具を与えている。そう簡単には負けないだろうが、どうだろうか。

少し心配しながら眺めていると、先にロックスから動き出した。速攻で決めるつもりだろうか、ロックスは与えられた火の魔術具を用いて、一直線に火炎放射のような炎を浴びせかける。

対して、相手の女は焦らずにその場から動かず魔術具を胸に抱く。

現れたのは、謎の暗闇だ。

女の前に現れた影のような暗闇はロックスの放った炎を全て呑みこんでしまった。

「珍しいな。闇の魔術か」

ラングスがそう呟き、振り向く。

「闇の魔術とは、炎を掻き消すのですか?」

質問すると、ラングスは静かに首を左右に振った。

「種類は多いが、基本的には何かを呑みこむといった方が良い。影であればその中に落とし込み、あのように壁であれば飛び込んできたものを抵抗なく影の世界へと連れ込んでしまう。あまり使い手がいない為、私も詳しくはないがな」

その説明を受けて、どういうことかと首を傾げつつロックスの様子を確認した。

「……影に呑みこまれたら、どうなるのでしょうか?」

「影の世界に封印されると聞く」

影の世界に封印。ラングスのその言葉に一気に不安になった。

「ロックス君! 降参してください!」

慌ててそう指示を出したが、ロックスは聞こえていないような態度で更に魔術具を使用する。ロックスの周りに炎の球が無数に出現した。

「む、あれならば大丈夫だと思うが……」

炎の球が幾つも現れたのを見て、ラングスはそう呟く。

「え?」

聞き返すと、ラングスは相手の作りだした影を指差した。

「闇の魔術は無尽蔵に呑みこむのが特徴だと思うが、一面のみを相手にしているのならあれだけ複数の炎を吸収することは出来ないはずだ」

ラングスがそう口にした直後、ロックスは炎の球を同時に飛ばした。ラングスの言葉通り、多角的に攻めようとしているのだろう。正面からだけでなく、上下左右と数十の炎の球が相手に飛来した。

しかし、相手が目を閉じて魔術具を胸に抱くと、女の前に出現していた影が一気に大きくなった。さながら黒いスクリーンだ。結界の中を間仕切りするように黒い壁が出現し、全ての炎がその中へと呑みこまれていく。

「……あれでは、どうしようもないのでは?」

ラングスにそう尋ねると、腕を組んで唸り声を上げた。

「……確かに、この結界内という狭い範囲ではどうしようもないな」

ラングスは冷静にそう呟いたのだった。