軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔術具対決4

ロープを解き、結界を解除したフェルターが面白くなさそうに歩いてくる。

「……もう少しやれるかと思ったが、普通の剣士だった。アオイがやれば十秒で終わるだろう」

「いえ、剣の技量は高かったと思います。あの方も身体強化をしていれば、相当な実力だったかと」

「ふむ。なら、魔術具対決の結果としては十分だな?」

フェルターはそう言って、愕然とした様子のロイルを一瞥した。ロイルは悔しそうな表情でこちらを睨み、次に護衛の女たちを見る。ヘザーを連れて帰った女たちに対して口を開いた。

「……もう負けられんぞ。次は団体戦にする。良いな?」

「は、はい!」

ロイルはそう告げてから、こちらに歩いてきた。

「悪いが、次は四人対四人での団体戦とする。こちらはメンバーが決まっているから四人選べ」

「え? いえ、こちらは一対一でないと困ります。魔術具の説明は一人ずつにしか出来ていませんので、連携などが難しいのです」

ロイルの急なルール変更に異議を申し立てる。しかし、ロイルは険しい顔で怒鳴り始めた。

「ふざけるな! 卑怯な真似ばかりしおって! 王家の協力も得られる貴様の方が希少な魔術具を手に入れることは出来るんだ! ルールくらいはこちらで決めさせてもらうぞ!」

と、ロイルは子供が癇癪を起したように文句を言い始めた。どうも私が各国の王家から優遇されているという勘違いをされたままのようだ。

「……分かりました。それでは、少し作戦会議の時間をください。四人選ぶにしても、魔術具の効果を考えて選びたいので」

仕方なくそう答えると、ロイルは腕を組んで鼻を鳴らした。

「ふん……長くは待てんぞ」

「五分で構いません」

そう言うと、ロイルは肩を怒らせた様子で戻っていった。それを見送ってから、皆の方へ振り返る。

「……突然ですが、四人対四人で戦うこととなってしまいました」

次の対決の方式が変わったことを伝えると、話を聞いていたロックスがすぐに怒り出す。

「あんな我が儘な申し出を聞く必要があるのか」

「そうですね。流石に傍若無人過ぎると思います」

珍しく、ロックスの言葉に乗るようにコートが同意した。対して、グレンは苦笑しながら首を左右に振る。

「アオイ君は勝ち過ぎてしまうことを心配しておるんじゃよ。多少は相手にも華を持たせてやらねば、最後に勝負を反故にされてしまうこともありえるからのう」

グレンは大人らしくそんな見解を皆に話してくれたが、残念ながら違った。

「いえ、違います。こうなったら相手が望むルールで対決をして、全て完勝しようと思っています。完膚なきまでに叩き潰してやりましょう」

正直に自分の考えていることをグレンに伝えると、ロックス達から歓声や拍手が起きた。そして、グレンは額に手を当てて項垂れる。

「Oh……アオイ君らしいというか何というか……」

グレンはそんなことを呟いて首を左右に振っている。シェンリーやエライザも苦笑していた。

そこへ、ラングスが目を細めて口を開く。

「とりあえず、やるのならば徹底的にやるという考えには賛成だ。その四人での戦いには私も参加しよう」

前向きなラングスの言葉に頷くと、シェンリーとエライザも手を挙げた。

「あ、私も参加できたら……」

「一対一より勝機がありそうです!」

あまり戦闘になれていない二人も多人数での戦いが良いらしい。この三人が一緒に出るなら、残りはコートが良いだろうか。

「コート君。一緒に行けますか?」

そう告げると、コートは笑顔で頷く。

「はい、もちろんです」

あっさりと四人決まったことにホッとしながら、皆を集めて作戦会議を行う。

「それでは、皆さんの戦い方を説明いたします」

「……五分だ。もう良いな?」

ロイルから声を掛けられて、ラングス達が前に出る。

「うむ、構わない」

ラングスが返事をすると、ロイルは嫌そうな顔をした。

「……エルフか。使って良いのは魔術具だけだからな? 魔術、武器は使用できない」

「分かっている」

エルフの魔術を警戒しているのか、ロイルはしつこくルール説明をする。それにラングスはぶっきらぼうに返事をした。あまり怒らないラングスが少しムッとしている。

ロイルの護衛達と一緒に合計八人でロープで囲まれた範囲に入り、結界を張る。流石に八人で入ると狭いような気がするが、相手も何か作戦を考えてきているに違いない。

そんなことを考えながら見守っていると、左右に分かれて二、三会話をした後、戦闘が始まった。

まず動いたのはロイルの護衛達である。即座に二人が魔術具を発動した。現れたのは大きな石の壁だ。自分たちを守るように壁を作り出している。そして、もう一人の魔術具は細かな粒子を生み出すような魔術具のようだった。白い粒子が霧のように結界内に広がっていく。

「……あれは、もしかして……」

嫌な予感に、思わず結界内の皆に声を掛けた。

「先に水の魔術具を発動してください!」

大きな声でそう告げると、何とか聞こえたのかすぐにシェンリーが指示に従う。

皆の前に水の壁のような物が出現し、徐々に前に向かって前進していく。水の壁は結界内に広がりつつあった白い粒子を呑みこみ、拡散を防いでいく。

異常を察知したのか、石の壁の奥に隠れていたロイルの護衛の一人が魔術を発動させた。人一人呑みこむほどの大きな火球が飛来し、結界内で激しい爆発が起きる。地響きとともに結界内に爆炎が巻き起こった。粉塵爆発か毒かと予想していたが、前者だったらしい。

「……なんだ、今の魔術は?」

「火の魔術か?」

フェルターとロックスがそんな会話をしているのを横目に、次の行動に気を払う。相手は四人だ。もう一つ、何かしらの効果を持つ魔術具があるはずである。

その時、先にコートとエライザが魔術具を使用した。

コートが風の魔術を発動して局所的な竜巻を発生させ、そこにエライザの土の魔術で竜巻は砂嵐となった。風の勢いと通常では舞わないはずの大粒の砂や小石が激しく舞い、殺傷力の高い砂嵐となっている。

すぐさま砂嵐の危険性を理解したロイルの護衛達は防御に力を割こうと動くが、あの謎の粒子を作る魔術も火の魔術も、激しい砂嵐を相手にすると効果が薄い。

そこで、もう一人が魔術を発動した。現れたのは氷の魔術である。大木のように太い巨大な氷柱が地面から二本突き立ち、砂嵐の一部を防いでくれている。これは土の魔術と同じく防御に向いている。四人の組み合わせを見て、恐らく本来なら自分たちを守りながら粉塵爆発を起こし、防御を固めて生き残る者がいたら相手の足元から氷柱を出現させるつもりだったのだろうと予想した。

だが、こちらも負けてはいない。

相手の最後の魔術具が氷であったことを確認してから、砂嵐の裏ですでにラングスは動き出していた。

ラングスは厳重に設置した石の壁で自分の姿が見えないように移動して、ロイルの護衛達のすぐ近くまで迫っている。

それに一人が気が付き、炎の魔術を発動させようとしたが、もう遅い。

激しい破裂音を響かせて、外界と遮断された空間の筈なのに稲光が起きた。ラングスに持たせた魔術具は雷の魔術具である。発動までに少々時間がかかる為、本当は結界内の一部を浸水させて雷の魔術による感電を狙ったのだが、砂嵐で上手く雷の魔術を発動する時間を稼げたようだ。

さきほどの粒子も残っていた為だろうか、瞬く間にロイルの護衛達は感電してしまった。

ばたばたと地面に倒れたロイルの護衛達を見て、ラングスが眉を顰める。

「……流石に、これは危険すぎる魔術具だな」

ラングスがそう言ってから味方を振り向くと、エライザとシェンリーが跳び上がって喜んだ。

「勝ちました!?」

「凄い! 圧勝です!」