軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

金策は大成功だが

ウィンターバレーへの帰り道、エライザは大喜びだった。

「やったー! 圧倒的な勝利ですよ! 合計にして一万三千枚の金貨! もう何でも買えそうです!」

エライザが両手を挙げて喜び、ストラスも浅く頷く。

「これなら、国宝級の魔術具が出ても購入は可能だろう」

二人にそう言われて、ホッと息を吐く。

「そうですか……とりあえず、珍しい魔術具が手に入るなら有難いです」

「……あれだけの魔術具を自分で作れるのに、他の魔術具も必要なんですか? あれだけのお金を手に入れたら一生働かなくて大丈夫ですよ?」

私の呟きを聞き、エライザが不思議そうに尋ねてきた。どうやら自分のことを忘れているらしい。そのことに苦笑しつつ、答える。

「エライザさんも自分のしたいことの為に頑張って鉱石や材料を買いながら教員をされているじゃないですか。多分、同じ気持ちだと思いますよ」

そう告げると、エライザはハッとしたような顔で何度も頷いた。

「確かに! そう言われたらそうでした!」

エライザの素直な態度に微笑んでいると、今度はストラスが質問をしてくる。

「……そういえば、アオイはなんで魔導の深淵を目指しているんだ? 単純な興味か?」

その質問には、すぐに答えることが出来なかった。地球、日本とこの世界を繋ぐことが出来るのか。せめて、日本の、見知った人たちの姿を見ることは出来ないのか。そういった想いもある。しかし、それをどう言葉にして良いか分からない。

「……遥か遠くと遠くを繋いだり、遠く離れた誰かと会話をしたり、そういったことが出来ないか考えているところです。それが、魔導の深淵を目指す理由だと思います」

答えにならない答えだ。しかし、二人は黙って聞いてくれた。

学院に戻り、月末に開かれるオークションを楽しみに講義を続ける。今では生徒数も増え、皆が中級や上級の魔術を次々に習得していく様子が見えて楽しく感じていた。

「アオイ先生! 後で時間があったらもう一度水の魔術を教えてください!」

「はい、構いませんよ。高圧の水は覚えると何でも切れるから便利ですよ」

そんなやり取りをして、生徒達はそれぞれ次の講義へと向かっていく。そんな中、ロックスとコート、シェンリーが残ってこちらに来た。

「……オークションのこと、どうにかなりそうか?」

ロックスがそう口にすると、コートも軽く頷く。

「もしお金が必要でしたら言ってください。出来る限りの準備をいたします」

「わ、私も! 何もできないかもしれないけどお手伝いします!」

ロックス、コートだけでなく、シェンリーまでそんなことを言ってくれた。

「オークションに参加するだけですから、そんな気になさらず」

苦笑しながらそう答えると、シェンリーが眉をハの字にして口を開いた。

「で、でも、アオイ先生がそんなに必死になってお金を稼ごうとするなんて、よほど重要な魔術具なんでしょう?」

心配そうにそう言われて、大きな勘違いをされていることに気が付く。

「いえいえ、単純に私の魔術の研究が少し行き詰まっていて、自分が作ったもの以外の魔術具を分析してみたいと思っていただけですよ。ただ、今回はどうも凄く珍しい魔術具が出るらしく、ロイルさんという凄いお金持ちの人がオークションに参加すると聞いて、出来るだけ資金を準備しようと画策しておりました」

正直に現在の状況を三人に伝える。それにコートとシェンリーは安心したように笑ったが、ロックスは険しい顔のまま首を左右に振る。

「だが、今回は相手が悪い。ロイルと言えば、貴族相手でも争うような恐ろしい男だ。タチが悪いことに、世界屈指の大富豪でもある。下手をしたら、アオイが窮地に立たされるようなこともあるかもしれない。それが不安だ」

「え?」

「そんなに危険な人なのですか」

折角安心しかかっていたのに、ロックスの言葉を聞いてシェンリーとコートが再び表情を曇らせてしまった。

「いえ、本当に大丈夫ですよ。先日オークションに試しに参加したら偶然ロイルさんがいましたが、特に何をされるわけでもなく……」

「会ったのか!?」

安心させようと先日の出来事を話したのだが、ロックスは慌てた様子で聞き返してきた。

「会いましたが……」

「なにか、その時に魔術は使わなかったか……?」

「え? 飛行の魔術と、土のオリジナル魔術を……あ、後は少々珍しいですが睡眠を誘発させる魔術を使用しました」

ロックスの質問に答えていくと、どんどんロックスの表情が曇っていく。

何か、まずいことをしただろうか。

ロックスの反応を見て少しだけ不安になっていると、ロックスが深い溜め息を吐いた。

「……それはまずいな。間違いなく、ロイルはアオイが希少な魔術具を複数所持していると思っているはずだ」

その言葉を聞き、コートもハッとした顔になる。

「そういうことですね。貴族相手でも争うような人物なら、下手をしたらオークションの外でアオイ先生を襲撃するかもしれない、と……」

「アオイ先生を襲撃……!?」

二人の会話を聞き、シェンリーまで顔面蒼白で言葉を繰り返してきた。どんどん話が大袈裟になっていっているような気がする。

「わ、私は大丈夫ですから」

再度そう告げたのだが、三人はもう聞く様子は無かった。

「今度のオークション、我々も参加します!」

「私が先生を守りますから!」

「……一応、王族の俺がいれば手は出せないかもしれん。同行してやろう」

正義感に燃えているのか、三人はどうあっても引き下がりそうにないテンションでそう宣言したのだった。