軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まさかの遭遇

その日は王都に宿泊し、ついにオークション参加当日となった。

「昨日の魚料理、美味しかったですねぇ……果実酒とも良く合っていたし……」

昨晩の食事がよほど美味しかったのか、エライザは朝からそんなことを言いながらオークションハウスへと向かう。

「オークションに行ったら半日近く会場で過ごすぞ。腹が減ったと騒ぐなよ?」

「レディに失礼ですよ!」

「誰がレディだ」

ストラスとエライザは漫才のようなやり取りをしながら歩いている。本当に仲が良いし、人の良い二人である。二人の会話を笑いながら聞いているだけですぐにオークションハウスに辿り着いた。

中に入ると、昨日と同様、クリークが笑顔で立っている。

「いらっしゃいませ。もう参加受付は出来ておりますので、どうぞ会場へ」

「分かった」

「ありがとうございます」

「ドラゴンの宣伝お願いしますね!」

クリークの案内に三人でそれぞれ返事をすると、穏やかな苦笑が返って来た。

「もちろんでございます。本日の目玉として宣伝していますので、ご期待ください」

「やったー!」

クリークや他の受付の男女に会釈をしながら受付前を通り過ぎる。ストラスは悩む素振りなく左手側へ歩いて行ったが、場所を知っているのだろうか。

受付を通り過ぎて、突き当たりにある扉まで真っすぐ進み、扉を開ける。

すると、すぐに多くの人々の賑わう声が聞こえてきた。ストラスの背中から横に顔を出して奥を見ると、そこには多くの多種多様な人がそれぞれ商談のようなことをしている光景が広がっていた。人数の割にそれほど広くはなく、せいぜい幅五メートル程度の通路に所せましと人が歩き回っている。

そして、外側の壁には何かしらの商品が並べられており、その商品を前に皆が話しているようだった。

「オークションに出品される物の一部だ。一時間前までに戻すことを条件にここでオークションの参加者に商品説明をすることが出来る。特に、あまり知られていないような物、希少さが伝わりにくい物はこういった場で多くの参加者に知ってもらい、適正な値で競り落としてもらう必要があるからな」

ストラスが解説をしながら、奥へ奥へと進んでいく。周りを見ていると中々面白い物も置いてあるようで、エライザが都度都度足を止めて話を聞いたりしていた。

「反対側の通路は飲食店が並んでいるが、そっちを通ると食いしん坊が動かなくなるかもしれないと思ったが、どっちでも変わらなかったな」

溜め息混じりにストラスがそう解説し、思わず笑ってしまう。

「エライザさんが喜んでいるなら何よりです。どうせなら私も少し見てみますね」

「分かった」

ストラスに断ってから、通路に並ぶ商品を軽く見て回った。

中には明らかに希少な物もある。重要な魔術具、というほどではないが、小さな効果を発揮する珍しい魔術具なども出品されるようだ。効果はさておき、それに使われている技術などはもしかしたら有用なものかもしれない。そういう観点で魔術具を収集して研究に使うのも良いだろう。

色々と頭の中で考えながら歩いていると、通路の奥で大声を出す小柄な男が目に入った。

「……だから、この魔術具の出所を話せと言うておるのだ!」

「いや、それが旦那……手前も偶然手に入れた代物でして……」

「嘘を吐け! そういった魔術具は殆どの者が使い方を知らないか間違っているものだ! この私が見ても扱い方に長けており、使い方も間違いではない! 貴様、どこで作られたかも知っておるのではないか!?」

小柄な男の怒鳴り声に、近くにいる人々は顔を顰めて視線を送っている。しかし、その男を止める者はいないようだった。

「アオイ。あいつがロイルだ。魔術具蒐集家、ロイル・ウェット。サルート。その周りにいる二人の女は護衛だろうな」

どうしようかと思っていると、ストラスがそう言って小柄な男の正体を教えてくれた。ストラスも顔を知っているとは、やはり相当有名なのだろう。しかし、あんなやり方で魔術具を集めようとしているとは、あまり良いやり方とは思えない。

「あの、ロイルさんでよろしいですか?」

見ていられなくなり、思わず声を掛けてしまった。

ロイルは眉間に皺を寄せた顔でこちらに振り返る。

「あぁ? なんだ、この小娘は」

ロイルは腕を組んでそう言ってきたが、凄んでいるというよりも馬鹿にしていそうな気配を感じた。

「私はフィディック学院の教員で、アオイといいます。先ほどの話ですが……」

「アオイ……!? アオイ・コーノミナトか!?」

行いを咎めようとしたのだが、それよりも先にロイルが私の名を声高に叫んで驚きを表現した。そのせいで、通路にいた多くの人が私の方を向いて口を開く。

「あ、アオイだと?」

「学院の魔女、だったか」

「エルフの魔術も使える天才だと聞いたぞ」

方々からそんな声が聞こえてくるが、それは聞こえないふりをして話を続ける。

「先ほどの魔術具に関してですが、出品者の方にも商売上守秘義務はあるかと思います。それ以上、話を続けても仕方が無いでしょう」

そう告げると、ロイルは片方の眉を上げて通路の奥で魔術具を手に持つ男を指差した。

「これを見ろ! どう考えても新しい、近年の品だ。それに、この魔術具は魔術師でなくても魔術を扱うことが出来るようになるなんて優れ物だぞ!? こんな魔術具はそうそうお目にかかれねぇ! その辺のありきたりな魔術具なら別にどうでも良いが、こんだけ珍しい物を見逃してたまるかってんだ!」

ロイルの口にした魔術具の説明が気になり、怒り心頭で怒鳴るロイルを尻目に、魔術具の確認を行う。最大限に効率化した灯りを発現する魔術具である。

「……これは、私が作った魔術具ですね」

そう呟くと、ロイルは目を丸くして固まった。出品者である男も同様だ。

「……ちょっと待て。この魔術具を、あの学院の魔女が作ったというのか? 最年少で魔術師として上級教員になっているアオイ・コーノミナトが?」

驚くロイルだったが、すぐに気持ちを切り替える。

「なるほど……つまり、その魔術師としての実績は全て魔術具の力だった、というわけか」

ロイルがそう言うと、ストラスとエライザが前に出てきた。

「なんだと?」

「アオイさんは全ての魔術の上級魔術、オリジナル魔術を使えるんですよ!? そんな魔術具がありますか!?」

いつの間にエライザが戻ってきていたのかは不明だが、二人は私の為に怒ってくれていた。感情的になっても仕方が無いと止めなくてはならないところだが、二人が私の為に感情的になってくれていることが嬉しくて感動してしまった。

ジーンとしていると、二人に文句を言われたロイルが鼻を鳴らして私を指差してきた。

「ふん! 貴様らこそ、魔術具の可能性を全く理解していないようだな!? もし、各国の国宝を超えるような魔術具を作ることが出来るようになったら、世界は全く違うものへと変わるのだぞ!」

その言葉に、ストラスとエライザが反論しようと口を開く前に、反射的に口を出してしまう。

「その通りです。魔術具の可能性は無限大ですから」

せっかくストラスとエライザが私の為に怒ってくれたのに、条件反射でロイルの言葉を肯定してしまっていた。

「え?」

「え?」

「え?」

私の言葉にストラスとエライザだけでなく、ロイルまで目を丸くしてしまう。

「……あ、申し訳ありません。思わず正直に……」

一先ず、空気を読めなかった自分を恥じて謝罪の言葉を口にしたのだった。