軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都入場

空を飛んで半日ほど。途中でドラゴンを捕まえても実質一日の移動時間で王都まで辿り着いた。

朝日が山々のシルエットに白い線で縁取り、空を幻想的な紫色に染めていく。空の多くはまだまだ暗いままで、山の形にそって光が空に帯を引いていた。

「黎明……良い景色ですね」

そう呟いてから、地上を見下ろす。

ウィンターバレーも随分と大きな都市だと思っていた。しかし、流石は大国の王都だけあって、地上に広がる景色は圧巻である。都市の広さで考えるとメイプルリーフの聖都がかなり広かった気がするが、繁栄という意味ではこちらの方が栄えているかもしれない。

巨大な城壁が囲む中にはいくつも大きな塔や建物が並び、街の中心には巨大な城が聳え立っている。城を中心に真っすぐ八本の大通りが伸びており、城壁の先から街道へと続いていた。

「陛下と知り合いでも正式な手続きを通して王都へ入場した方が良い」

「あの城門前に降りましょう!」

景色に目を奪われていると、ストラスとエライザにそう言われた。

「そうですね。それでは、あの街道に降ります」

言われた通りに眼下にある城門前の街道へと降下する。地上を行く人々はこちらにまだ気が付いていないようだ。まぁ、これだけ大きな街ならば様々な品物が集まるだろうし、ドラゴンくらいなら大きな騒ぎにならないかもしれない。

そう思って街道に降り立ったのだが、辺りからは絶叫が響き渡った。

「ど、ドド、ドラゴンだー!!」

「生きたドラゴンが、なんで……!?」

一瞬で王都の前は阿鼻叫喚の地獄絵図と変わる。

「……檻には入れているのですが」

そう呟くと、ストラスが溜め息を吐きつつ城門を指差す。

「どうせ街に入れば間違いなく大騒ぎだ。諦めるとしよう。あそこで受付だから、俺が受付してくる。少し待っていろ」

「分かりました」

結局騒ぎになってしまった。そのことにがっかりしながら素直に返事をすると、ストラスはフッと息を漏らすように笑いながら城門の方へと向かった。何故笑われたのか。そんなことを考えつつ、ドラゴンの周りで周囲の人々に安心するように伝えて回るエライザを眺める。

「大丈夫ですよー! このドラゴンは安全ですからー! ほら、檻に入ってますよー!」

「嘘つけー!」

「あんな檻で安心できるかー!」

健気に安全であると主張するエライザに対して、街道を行き交う人々が口々に否定的な言葉を口にする。仕方ない。せめて、オークションハウスに向かうまではもう少し目立たないようにしよう。

そう判断し、街道のすぐわきに置いたドラゴンの入った檻をもう少し街道から離して設置し直し、更に土の魔術を発動した。

「 土の壁(サンドウォール) 」

四方を囲む土の壁が出現し、ドラゴンの姿を覆い隠す。上部に空気穴はあるので呼吸は問題ない。

「お、おお……!?」

「あんな魔術を一瞬で……」

騒ぎは多少収まったが、それでもまだ少し騒がしい。

「助かりましたー!」

エライザが両手を振りながらそう言って走ってくる。

「いえ、こちらこそありがとうございます」

「この後中に入るのが心配ですね! 王都中で大騒ぎになるかも!?」

何故か楽しそうなエライザにそう言われて、少し心配になった。

「一旦ここに置いておいて、オークションの支配人の方に確認に来てもらいましょうか。そうすれば、騒ぎは最小限にすむかもしれません」

「そうですね。一度オークションハウスに行って聞いてみますか? 生きているドラゴンだと言えば街の外まで来てくれるかも!」

二人でそんなやり取りをしていると、ストラスがこちらへ向かって歩いてきた。

「とりあえず、街の中に入るのは問題ない。だが、ドラゴンに関してはここに置いておく必要があるのと、誰かがそれを見張っていなくてはならないと言われた」

「じゃあ、ストラスさんで!」

ストラスの言葉にエライザがすぐに決定を下す。

「いや、ここは土の魔術が得意なお前だろう、エライザ」

「嫌です! 王都観光したいです!」

「理由はそれか!?」

なんとも言えない言い争いが始まり、どうしたものかと頭を捻る。自分が残れば滞りなくオークションの手続きは終わるだろうが、個人的にもオークションの出品と参加の手続きは見ておきたい。

仕方なく、エライザの方を見た。

「申し訳ありませんが、ストラスさんの言う通り土の魔術が得意なエライザさんに残ってもらっても良いですか?」

「えーっ!? そんなぁ……!」

心底悲しそうな様子のエライザに心苦しい気持ちになりつつ、フォローをする。

「その代わり、ドラゴンを預かってもらえたらお買い物にも付き合いますよ」

「本当ですか!? それなら待ちます! すぐに来てくださいね!」

エライザはあっさりと納得すると、その場で土の魔術を発動した。

いそいそと土でテーブルや椅子を作成し、旅行用に準備していた鞄から飲み物とパンを取り出す。その様子を見て、ストラスは苦笑した。

「……何時間でも待てそうだな」

「早く帰ってくださいね!?」

ストラスの小さな声に敏感に反応し、エライザが睨んでくる。そのやり取りに微笑み、城門を指差した。

「それでは、すぐに行って参ります」