軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都のオークションへ

中規模ではあるが、オークションハウスとの繋がりもでき、更に金貨三千枚を手に入れた。十分過ぎる成果である。

後は、実際にオークションに参加してみる必要があるだろう。出来たらもう少し何か出品して資金を準備しておきたいという部分もある。

場所は移り、オークションハウスからほど近いカフェでのこと。色々と考えていた私は、雑談しながらお茶を飲む二人に自分の考えを述べる。

「王都のオークションにも行ってみます。やはり、月末までに一度オークションに参加しておいた方が良いと思いますので」

そう告げると、ストラスとエライザの二人は何故か顔を見合わせた。

「次の開催日は、ちょうど来週ですよね?」

「どの街でも基本的にオークションは週末だ」

「じゃあ、私は大丈夫そうです」

「俺は……少し調整してみよう」

二人がそんなやり取りを始めたので、思わず首を傾げる。

「いえ、もう一人で大丈夫だと思います。ちょっとドラゴンをもう一頭くらい狩ってこようと思っていますので……」

あまり二人の時間を奪ってしまっても申し訳ない。そう思っての発言だったのだが、ストラスとエライザは真剣な顔で振り返った。

「一人で行くのは危険だ」

「王都が滅ぶかもしれません!」

「え? 私の心配ではないのですか?」

二人の言葉のニュアンスに違和感を感じて聞き返す。

「一人でちょっとドラゴンを狩ってから王都に行こうなんて考える奴の身に危険などない。どちらかというと危険なのは向かう先の方だ」

「何かの弾みで魔術具対決なんてことが起きたら王都が壊滅してしまいます!」

と、二人はとんでもないことを言いだした。

「失礼ですよ。私はオークションに参加するだけなのですから」

文句を言うと、ストラスは一度温かいお茶を口に含み、ゆっくり飲んでから頷いた。

「……念には念を入れた方が良い」

「そうですよ! 間違えて王城を壊しちゃったら流石にまずいですから!」

ストラスの言葉に乗っかるようにしてエライザもそんなことを言う。二人とも悪気は無いのだろうが、あまりにも自分への信用の無さに凹んでしまいそうになる。小さく溜め息を吐きつつお茶を口に運んでいると、ストラスとエライザは二人で話を進めてしまった。

「では、週末の最後の講義が終わり次第出発し、ドラゴンを狩りつつ王都を目指す。翌日と翌々日のオークションに参加できるように交渉するとしよう」

「あ、それなら出品の方は私が担当しますよ! 馴れてますからね!」

お人好しの二人は勝手に計画を決めていく。

「ドラゴンの状態が極めて良いことを伝える必要があるぞ。希少だと分かればオークションの目玉にしてもらえるかもしれない」

「分かってますよー! 目玉になったら宣伝してもらえますから! ドラゴンの素材丸々なんで間違いなく高値になります! うわぁ、楽しみですねー!」

「王都は確かドラゴンの剥製を集める貴族もいたはずだ。どうせなら無傷のドラゴンを当日オークションハウス前の広間に置かせてもらったら良い集客になるだろう」

「あ、良いですねー! それは支配人も喜びますよ!」

二人がどこか楽しそうに会話する姿を見て、こちらも少し気持ちが明るくなる。

「……それでは、お言葉に甘えます。申し訳ありませんが、お手伝いをお願いいたします」

そう言って頭を下げると、ストラスとエライザは微笑と共に頷いたのだった。

「予定通り、そちらに追い込みます!」

「分かったが、本当に強度は大丈夫なんだろうな!?」

「問題ありません!」

大きな声でやり取りをしながら、岩の巨人を操る。

小山ならば頂上に手が届くほど大きな岩の巨人だ。普通なら作り出すことも出来ないほどの体積となるが、使える関節を最小限にして、その体重や密度を武器に扱う運用ならば消費する魔力も普通のゴーレムと比べて大人しくなる。

流石に自身よりも何倍も大きな岩の巨人が迫ってきたら焦るだろう。地竜の一種である中型のフォレストドラゴンは何度か岩の巨人を攻撃した後、大きく距離をとって離れた。

岩の巨人が一歩近づくごとに同じ距離を離れつつ、唸り声をあげている。

一方、ストラスとエライザはドラゴンの逃げる先で待機していた。

「ほ、本当に大丈夫か!?」

珍しくストラスが若干焦っている。それに苦笑しつつ、岩の巨人を更に一歩進めさせた。ドラゴンもその分離れる。

「よ、予定位置です!」

緊張した面持ちのエライザがそう叫び、位置を確認した私は合図を送った。岩の巨人が右手の拳を空に向かって振り上げたのだ。

ドラゴンはその動作に気を取られて姿勢を低くして上空を睨んでいる。

「発動!」

ストラスが応え、エライザが魔術を解除する。直後、ドラゴンが立っていた場所半径百メートルほどの地面が一気に力を失い、事前に掘られていた穴の中へとなだれ込む。

砂が滝のようになり、ドラゴンは両足を取られて穴の中へと流されていった。

「……少々深すぎたでしょうか。まぁ、念には念をと言いますが」

空から状況を見ながらそう呟き、予定通り、岩の巨人を地面に向けて倒した。岩の巨人の身体で穴を塞ぐような形だ。

地震に似た揺れと空気を伝う衝撃破、そして腹に響くような轟音の末、ドラゴンは地中に無傷で閉じ込められることとなる。

「お疲れ様でした」

地上に降りてそう告げると、岩を椅子代わりにして座るストラスが溜め息混じりに呟く。

「……まさか、一時間程度でドラゴンを生け捕りにするとは」

「吃驚ですよね! でも、大成功です!」

倒れた岩の巨人の側面に沿って走って来たエライザが私の代わりに返事をした。

「お二人とも、ありがとうございました。お二人の助言がなかったら生け捕りなんて思いつきもしませんでしたから」

「……出来るなら、程度だったんだがな」

「そうですよ! まさか、無傷でなんて!」

渇いた笑い声をあげるストラスと、両手を挙げて大喜びのエライザ。

「しかし、ドラゴンをそのままオークションに出して、買い手がつくでしょうか?」

「このドラゴンはブレスは使えないんだろう? それなら、頑丈な檻さえ準備してやれば、間違いなく買い手はつく」

ストラスの言葉に頷いてから、岩の巨人の下で暴れるドラゴンのことを考える。

「……でも、見世物みたいになるのも可哀想ですよね。それなら、いっそのこと食料として……」

そう呟くと、ストラスとエライザが目を丸くしてこちらを見た。

「……まさかとは思うが、ドラゴンが食料として高く売れると思っていたのか?」

「ドラゴンの牙や爪、骨などは加工が出来たら鉄よりも遥かに頑丈ですし、革も凄い素材なんですよ! お肉は、まぁ一部で寿命を延ばす秘薬のような扱いも受けていますが」

二人からそんなことを言われて、腰に手を当てて鼻から息を吐く。

「それくらいは知っています。そんなに世間知らずではありませんよ。それに、ドラゴンの眼や血は魔法陣を描く材料に最適ですからね。一年に一回はドラゴンを狩って材料を準備します。その際に、お肉が大量に余ってしまうので、よく近くの村にお裾分けしていたのです。むしろ、ドラゴンに関しては私の方が詳しいかもしれませんよ?」

非常識扱いされることに不服を申し立てつつ、そう告げる。すると、二人は呆れたような顔でこちらを見た。

「……山に出た大猪の処理じゃないんだが」

「ドラゴンの肉をお裾分けって……」

結局、二人からは非常識な人のような目で見られてしまった気がする。甚だ遺憾だが、色々と手伝ってもらっている状態で文句も言えない。

「とりあえず、ドラゴンの出品の仕方についてはオークションハウスで確認しましょう」

「うむ、それも一つの手だな」

話し合いの末、最終的にはオークションのプロに相談しようということになった。

まぁ、様々な品で溢れ返る王都ならば、生きたドラゴンもそこまで騒ぎにならないだろう。