軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔術具コレクター

「王都のオークション?」

「なんで、王都に?」

急に雰囲気の変わった二人に少し驚きながらも、素直に答える。

「今度、王都のオークションで貴重な魔術具が出品されるかもしれないと聞きまして……しかし、運の悪いことに、ロイルさんという魔術具の蒐集家の方が来るようで」

だからお金がいるのだと言おうとしたが、それよりも早く二人が食いついてきた。

「ロイル!」

「ロイル・ウェット・サルート!?」

二人は同時に反応する。

「やはり知っているのか」

ストラスがそう呟くと、二人揃ってギロリとストラスを睨んだ。

「知っているも何も、あの野郎!」

「ああ、知っているわよ! あの野郎!」

先ほどまでの明るく陽気な雰囲気が一変し、憤怒を滲ませる二人。突然のことに、エライザが「ひぃ!」と悲鳴を上げて私の後ろに隠れてしまった。

ストラスも目を白黒させていると、ヒートアップした二人が何も言わずとも話し出す。

「ロイルは、魔術具の蒐集家なんて良い呼び方をしていい奴じゃないわよ!」

「もし手に入らなかったら癇癪を起してそこかしこで問題を起こす最低な野郎なんだから!」

「問題って?」

二人の言葉にエライザが挙手して質問する。

「え? オークションで競り負けたら競り落とした相手の商売の邪魔したりするのよ? 最近じゃ小さな国を買えるくらいの金持ちになっちゃったからね。下手な貴族が相手でも引かないのよ」

「鬱陶しいわよねぇ。なんであんな性格最悪な奴が大富豪なのよ」

先ほどまでのトーンよりは下がったが、二人はまだまだお怒りのようだった。ストラスはそんな二人を冷めた目で眺めつつ、私を見た。

「……とりあえず、金貨三千枚でドラゴンとグリフォンを売るとして、残りはどうする? もう少し準備しておくか?」

「そうですね……何か売るものがあれば良いですが……」

二人で悩んでいると、エライザが再び挙手して口を開く。

「はい! アオイさんの作った魔術具を売れば良いと思います!」

と、意外にも良いアイディアが出てきた。

「……たまには良い案を出すじゃないか」

「たまには!?」

ストラスも似たようなことを口にして、エライザが愕然とした表情で言葉の一部を復唱する。その様子に、失礼なことを思ってしまったかと心の内で謝罪した。

「アオイちゃん、魔術具が作れるの?」

そこへ、副支配人がさらに身を乗り出して質問してくる。

「えぇ、嗜む程度ですが……」

「何が嗜む程度だ」

謙遜して答えると、ストラスからすぐに突っ込まれた。

「……なるほどね。アオイちゃんの噂を聞いた時に、すぐにロイルと一緒で魔術具を集めてるのかも、なんて思ってたのよ」

「そうそう。魔術具の力でロイルも大金持ちになったからね」

「魔術具の力で?」

二人の会話が気になり、質問する。それに二人は揃って肩を竦めて苦笑した。

「あのフィディック学院で上級教員になっているんだから、ロイルと全く一緒なんて思ってないわよ?」

「ロイルの場合は国宝級の魔術具を幾つも所持していて、その力でドラゴンも何体も仕留めてオークションに出したこともあるのよ。そういったことが宣伝になって、ロイルの商会は高価な魔術具や魔術書、古代の武具みたいなのが飛ぶように売れたの」

そう言って、二人は笑い声をあげた。

なるほど。そうやってロイルは大富豪になったのか。納得しつつ、自分なりの分析を述べる。

「聞いた限り、ロイルさんは相当の魔術具を集めていらっしゃるようですね。確かに、私の魔術の基礎となる部分は魔術具の使用が多く、魔術の研究においても魔術具を用いています。共通する部分はありますね」

その回答に、エライザが深く頷いた。

「アオイさんは魔法陣研究の第一人者ですから、アオイさんが作った魔術具なら絶対高値で売れますよ!」

エライザは胸を張って太鼓判を押してくれた。

「そんなに凄い魔術具が作れるなら、下手したらドラゴンを狩るよりも安定した収入になるわね!」

「ちょっとうちのオークションに出品してみない!?」

二人は金になると踏んだのか、一気にテンションを上げてそんなことを言ってきた。その勢いに押されつつも、オークションの出品に関しては躊躇した。

「魔術具をオークションに出すのは遠慮しようかと……」

「えー!?」

「なんでよー!? 絶対高く売れるわよ!? あ、もしかして自分の作品を他人にあげたくないタイプなの!?」

オークションへの出品を拒否すると、二人はカウンターを跳び越えて迫って来た。驚いて思わず魔術で石の檻を出現させそうになったが、何とか堪える。

二人が鼻息荒く顔を寄せてくるので、少し距離を開けつつ答えた。

「いえ、自作の魔術具は戦闘に使うようなものが多くて、相手を選ばずに市場に出すような形は危険かと……」

「えー? もう十分魔術具は市場に出回っているわよ!」

「どんな魔術具だって言うのよ!」

追及されたので、高く売れそうな魔術具を思い出しながら答える。

「そうですね……特級魔術具による攻撃を受けても防御出来るように作った各属性の特級相当の魔術具や、これまでに見たオリジナル魔術を再現した魔術具が特に危険かもしれません。エルフの最上級魔術を再現したものもありますし、山を砕いてしまうようなものもあります」

指折り自作の魔術具について簡単に紹介していくと、徐々に支配人と副支配人の顔色が変わっていった。

最後まで言い切る頃には、顔面蒼白である。

「……それはいけねぇよ、アオイちゃん」

「とんでもないわね、アオイちゃん……」

二人がどこか疲弊したように呟くと、ストラスが遠い目をして私の肩に片手を乗せた。

「……それらの魔術具は、早急に封印してくれ。やばい奴に渡ったら一国が滅ぶ可能性すらある」