軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エルフの国の状況2

結局、ブレストとピーアは完全には納得していない様子ながら、謝罪の言葉を再び口にした。とはいえ、どうにもエルフこそ上位の種族であるという自負が揺るがないからのようである為、王の候補者達が認めてくれるような魔術を披露することが出来たら意識も変わるかもしれない。

そう思って、その日は引き下がることにした。

「……無事に仕事を終えることが出来そうで安心したぞ」

シーバスからそんな台詞を聞かされて、私は静かに不服であるとアピールする。

「ただの話し合いで何故、無事かどうかの心配をされていたのでしょう? おかしくありませんか?」

聞き返すが、シーバスは既にこちらから視線を外してグレンに向き直っていた。

「グレン殿。良かったら当初言っていた宿へご案内しよう。スパイア殿は明日の正午に王城に案内すると言っていたので、その前に迎えに来るとしよう」

シーバスがそう告げると、グレンは嬉しそうに目を細める。

「おお、それは助かるぞい。いや、こんなに親切にしてもらえるとは思わなんだ」

そう言って笑うグレンに、シーバスはそっとこちらを一瞥してからグレンに視線を戻す。

「……いや、こちらも仕事を全うする為にしていること……それでは、こちらへ」

と、シーバスは歯切れの悪い言い方で返事をして先導した。

遠目から見ても建物が白い石造りで綺麗だと感じていたが、通りを歩いていくとそれ以外の部分も綺麗に管理されていることに気が付く。建物に使われているものと同じ素材で出来た真っ白な石畳の道や塀。街路樹や垣根、野草の庭園といった自然豊かな風景もそうだが、なによりゴミ一つ落ちていない清潔な雰囲気も街の雰囲気を良くしているようだ。

とはいえ、その美しい景色の中にあっても何処か街は寂しく見えてしまう。

すれ違うエルフの人々から奇異の目で見られつつ、我々は警護隊に囲まれた状態のまま街の中を移動する。

「……最初に来た時にも思いましたが、街は広くゆとりのある造りをしているのに、住民が少なく感じますね」

小さな小川に掛けられたアーチ状の石橋を渡りながら、街の感想を口にした。すると、シーバスが立ち止まり、横顔をこちらに向ける。

「……こんなことを言ってしまえば不敬罪かもしれんが、我が王国アクア・ヴィーテは、少しずつ崩壊に向かっていると私は認識している。既に十年近く新しい子は誕生しておらず、人口は少しずつだが減少しているのだ。まだまだ先の話ではあるが、このままでは純粋なエルフがいなくなってしまうのではないかと、危惧している」

そう呟いて、シーバスは街の中を切なそうに眺めた。

「……やはり、シーバスさんもエルフという種族に強い自尊心を持っている、と」

そう言うと、シーバスは自嘲気味に笑う。

「どうだろうな……申し訳ない。余計なことを言ってしまった。先を急ごう」

シーバスはなにか含みのある言い方でそう告げると、再度歩き出した。

いったい、何を言いたかったのか。我々は顔を見合わせてから視線を戻し、後についていく。警護隊の面々も色々と感じることがあるのか、複雑な表情をしていた。

その様子に首を傾げつつ、街の中を更に奥に進んでようやく大きな二階建ての建物の前に辿りついた。

「着いたぞ。ここが宿替わりとして使用されている集会所だ。普段は集会所と利用しているだけに、常時従業員がいる宿屋のようなものではない。申し訳ないが、寝床の準備や片付け、炊事も自らで行ってもらいたい」

シーバスがそう告げると、思わずエライザと顔を見合わせる。

「……料理、出来ますか?」

「……多少は」

そんな会話をしていると、ストラスが鼻から息を吐いて片手を挙げた。

「料理なら得意だ。俺が作ろう」

「え?」

「得意?」

予想外な発言を受け、シェンリーを含めて女性陣の目が一斉にストラスに向く。それに不服そうな顔をして、ストラスは腕を組んでそっぽを向く。

「……もう作らんぞ」

「あ、いやいやいや! 是非! 是非作ってもらいたいです! ね? アオイ先生!?」

拗ねてしまったストラスにエライザが慌ててご機嫌取りのような台詞を口にした。何故か私の名前が出たので、一応話に入ってみる。

「ストラスさん、料理が出来たんですか?」

「……それなりには作れる」

こちらを見ずにストラスが答えた。

「……ストラスさんの料理は気になりますね」

「はい! 私も食べてみたいです!」

シェンリーも混ぜようと振り返ると、すぐに同意の言葉が聞こえてきた。ダメ押しのようにエライザがストラスの前に移動して両手を振る。

「お願いします! お恵みを!」

「……馬鹿にしているだろ」

「してませんってば!」

ようやく調子を取り戻してきたエライザがストラスにまとわりついてお願いを続ける。その様子が面白かったのか、シェンリーが笑って頷いていた。

ステイル家から出て肩の力が抜けたのか、皆の雰囲気が日常に近いものへと変化する。それを見ていたシーバスが呆れたような顔で口を開いた。

「……緊張感のないことだ。やはり、自分たちの魔術に自信があるからか? エルフの国だからなどではなく、普通は他所の国の上級貴族と言い争いをして、そんなに笑いながら滞在などできないと思うのだがな」

と、シーバスは深読みして変な発言をした。それにグレンが苦笑して首を左右に振る。

「いやいや、わしとてこの国の中でそんな自信を持つことは出来んぞい。とはいえ、あまり緊張してばかりでもしんどいもんでのう。いや、そこのアオイ君は別かもしれんがな?」

不敵な笑みを浮かべて、グレンがそんなことを言った。それに首を左右に振って否定をしておく。だが、何故か疑惑の視線がこちらに集まるのを感じた。