軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化祭後半10 アオイの評価

文化祭も残り僅かとなり、私は他の会場で発表を見学に行くべく移動しようとした。

しかし、そこへ見慣れた集団が歩み寄ってくる。ミドルトンとレア夫妻、アイザック、ディアジオ、グランツである。更にその少し後方にはロレットの姿もあった。ラムゼイ以外の大国の重鎮達が揃って、何故かこちらへと一直線に向かってきたのだ。

面倒な話の予感がして、私は片手を挙げて口を開いた。

「申し訳ありません。これから、他の人の発表も見学に行こうと思っておりまして……」

そう告げると、ミドルトンが声を出して笑う。

「我々を見てそんな対応をする者はアオイ殿かラムゼイ侯爵くらいだろうな」

「生徒達の発表を褒めたかっただけですよ」

ミドルトンに続き、アイザックが苦笑しながらそんなことを言った。生徒達の発表を褒めてくれるのなら、少しは会話をしても良いだろう。

足を止めて、体ごと向き直る。

期待を込めて一同を見返すと、レアが噴き出すように笑いながら片手を振った。

「こういう時はアオイ先生も子供みたいになるのね? でも、本当に生徒達の発表は素晴らしかったわ。やっぱり、教える人の腕かしら?」

笑いながら、レアがそんな感想を述べる。

「生徒達の努力の賜物です。とても素直で勤勉な子たちですから、来年は教員よりも優れた魔術師になっているかもしれませんね」

そう言って胸を張ると、レアはまた声を出して笑った。

「自分のことのように自慢するのね。アオイ先生は魔術師としてだけではなく、教員としても素晴らしい人だと思うわ。でも、どんなに勤勉な子であっても、普通あんなに凄い魔術を使えるようにはならないわね。それこそ、これまでにない魔術をとんでもない速度で習得させたアオイ先生の力によるものよ」

「いえ、そんなことは……」

否定しようと胸の前で手を左右に振ったのだが、ミドルトンが呆れたような顔を見せる。

「そんなことはあるだろう。どう考えても普通の成長速度ではない」

ミドルトンがそう言うと、アイザックも苦笑しながら頷いた。どうでも良いことだが、その表情を見てコートにそっくりだなと思う。

「基礎の魔術を習得して、初級、中級、上級の魔術を学んでいく。これが最も魔術を理解する上で早く、効率的な修練方法とされています。そして、学生の内に習得できるものは上級までです。特級やオリジナル魔術は魔術研究者や宮廷魔術師などが数年かけて習得、開発するものですから」

「まぁ、癒しの魔術においてもそれは同様であろう。むしろ、上級もなかなか習得できないものだ」

ディアジオが複雑な表情で同意に近い言葉を口にする。癒しの魔術以外の分野で遅れていると自覚している故の表情だろうか。先日、メイプルリーフで魔術についての習得のコツを少し話してきたので、今後は学院の魔術水準向上が期待できると思うのだが。

そんなことを考えていると、グランツが眉根を寄せて唸った。

「……正直、これまではあまり魔術の力というものを重要視していなかった……いや、多少はしていただろうが、認識不足だったのだろうなぁ」

頭をガリガリと搔きながら、斜め後ろに立つドワーフの騎士に一言声をかける。すると、ドワーフの騎士は体の半分ほどはある大きな盾を軽々と持ち上げた。グランツはその盾を指さして、口を開く。

「この盾はグランサンズ王国内でも売買していない、最上級の代物だ。炎も水も土も風も防ぐことが出来る上に、組み合わせれば即席の壁を作り上げることも可能だ。戦場に素早く拠点を作ることもできるし、退却時は魔術による追撃の被害を抑えることもできる」

そんな説明をして、グランツは拳で軽く盾を叩いた。

「……だが、この盾では雷は防げない。雷は盾を貫通してしまうのだ。これまでは雷の魔術などなく、天候を操る魔術も伝説上のものだった。だから大して気にしていなかったのだが……まったく、困ったものだ」

グランツは深いため息を吐いて、攻撃的な笑みを私に向ける。

「これで、雷の魔術に打ち勝つドワーフの武具を作らねばならなくなったではないか」

そう言って笑いだすグランツに、思わず釣られて笑ってしまう。新たな課題が発覚したから、すぐに解決の道を模索する。この考え方はとても好ましいと感じた。

ゆえに、雷の魔術について少し教えてみようと思う。

「雷というものは様々なモノを通じて伝わっていきます。特に水などはよく通してしまいます。これは、水の中に小さな不純物がある為、これらを伝わって雷が通ってしまうのです。しかし、その水も不純物が一切なければ、雷は通しません。同様に、幾つか雷を通さない物質もあります。それらを用いれば、雷の魔術も防ぐことが出来るでしょう」

そう告げると、グランツは目を丸くして動きを止めた。それは周りにいた他の人達も同様である。レアだけは面白いものを見たような顔をしているが、大概は唖然とした顔をしていた。

「……なにか?」

仕方が無いのでこちらから尋ねると、いち早く正気に戻ったミドルトンが咳払いをして目を細める。

「ごほん……いや、使える者など数えるほどしかいない雷の魔術だ。その弱点を、そんなあっさりと教えるとは思わなかった。その情報一つがどれほどの価値を持つか、知らぬわけではないな?」

ミドルトンにそう聞かれて、私は思わず微笑みを浮かべた。

「雷を一方向に放つ程度の魔術であれば、防がれたところで問題はありません」

そう告げると、全員の顔が同時に引き攣った。

「……これが、学院の魔女か」

これまで黙っていたロレットが小さくそう呟くと、何故か全員が揃って頷いたのだった。