軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化祭16 約束

もう一人の教員の発表は水の魔術だった。山を作って頂上から湧水を流し、滝を作る。そして、その滝を凍らせて氷の城を作るという内容だ。こちらは私が助言した通りに発表を行っていたが、詠唱に工夫を加えていた。氷の城を最大限大きくする為に、凍らせる範囲を広くしていたのだ。感心すべきは私と一緒に考えた詠唱を正確に自分のものにして、更に昇華させたことだろう。

とても良い発表だった。その証拠に、発表を一緒に見たアイル達はもとより、ティスも大きな音を立てて拍手をしていた。ただ、物凄く真剣な顔で拍手していたので若干怖かったが。

午前中の発表を全て見学し終えた我々は、私の午後の用事の為に東の広場前の出店で食事を買い込み、東屋のような休憩スペースで腰を下ろした。男爵家の方であると聞いたので街の飲食店にしようかと提案したのだが、少しでも話が出来る時間が欲しいというティスの要望で屋台での食事となったのだ。

とはいえ、普段はこんな食事をすることが無いせいか、アイルたちだけでなくティスも全く嫌がってはいなかった。むしろ、楽しそうにテーブルに屋台の料理を並べている。

飲み物を片手に、簡単に昼食の挨拶をしてからティスが口を開いた。

「とても素晴らしい発表でした。流石はフィディック学院の教員の方だと感動しています。アオイ先生も発表をされるのですか?」

「私ですか? 明日の最後の発表をする予定です」

答えると、ティスが返事をするより早くアイル達が騒ぐ。

「グレン学長の代わりに発表するんですよ!」

「凄いことなんですよ」

「そうなのですか」

アイル達の言葉に素直に頷き、ティスが感心した。

「……アオイ先生のお力は分かりました。そのアオイ先生から見て、ディーンはどうでしょうか?」

ティスがそんな質問をしてくる。アイル達の隣に座っているディーンが固まった気がするが、別に悪いことを伝えるわけではないので、気にせずにディーンのことを伝えることにした。

「ディーン君はとても真面目で優秀な生徒ですよ。特に、今勉強しているオリジナル魔術に関しては上級生よりも良い成績を出しています。コツをつかむのが早いので、このまま頑張ったらとても優れた魔術師になることが出来るでしょう」

そう答えると、ディーンがホッと胸を撫でおろすのが視界に入る。そして、ティスは真剣な表情で顎を引いた。

「そうですか……では、努力次第で将来は宮廷魔術師も……?」

深刻な顔でそう尋ねられ、私は思わず首を傾げる。

「それは、努力次第で十分可能かと……なぜ、宮廷魔術師に? もしや、ストーン家は代々宮廷魔術師になっていらっしゃるのですか?」

聞き返すと、ティスは首を左右に振る。

「いえ、そういうわけではありませんが、私はディーンに宮廷魔術師を目指してもらいたいと思っています」

「なるほど」

ティスの言葉に頷いてから、ディーンに視線を移した。そこには顔色を悪くしたディーンの姿があった。何か食べている最中だったのだろう。口にはフォークが咥えられたままになっている。

その様子をアイル達が首を傾げながら見ているが、私は何となく理由に気が付いた。恐らく、ティスは少し教育熱心過ぎるのだろう。

「ティスさん。大丈夫です。ディーン君なら今のまま頑張れば十分ですよ。今でもとても努力をされていますから」

安心させようとそう言ったのだが、ティスは深刻な表情のまま俯く。

「努力をし過ぎる、ということは無いはずです」

「まぁ、それはそうですが……」

とても気休めの言葉では納得しそうにない雰囲気に、私も何と言って良いか分からなくなった。

その時、鐘の音が鳴り響いた。

「あ、発表の時間ですね。それでは、申し訳ありませんが、ちょっと行って参ります」

私がそう口にして立ち上がると、アイル達も慌てて立ち上がる。

「もうそんな時間!?」

「急いで前の方に行きましょ!」

「あ、ごみを捨てないと!」

皆が立ち上がったのを見て、ティスが困惑した表情でこちらを見た。

「これから誰の発表ですか? まさか、皆さんで?」

そう聞いてきたティスに、私は溜め息混じりに口を開く。

「フェルター君の発表なのですが、何故か昨日になって追加の発表者が現れまして、その方に私も参加しろと言われております」

「追加?」

ごみを片付けながら立ち上がるティスに、私は頷いて答えた。

「ブッシュミルズ皇国の、ラムゼイ・ケアンさん。フェルター君のお父さんです」

「ラムゼイ侯爵が……!?」

私の言葉にティスは目を見開いて驚愕する。

どうやら、カーヴァン王国にもラムゼイの名は知れ渡っているらしい。まぁ、他国の王族にも物怖じせずに物申せるような性格なので、嫌でも有名になるというものだろう。

私は苦笑しつつ、一礼をした。

「それでは、申し訳ありませんが少し出てきます。後でまたお時間をとれると思いますので、その時に話の続きをしましょう」

「あ、は、はい。分かりました」

戸惑うティスに軽く会釈をしておき、すぐに私は広場へと向かった。