軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化祭1 グランサンズ王

朝になり、私はグレンの執務室へと呼び出された。

文化祭中は講義が全て休みとなる為、発表を行う教員以外は皆休日の筈である。

そんなことを思いながらグレンの部屋に入ると、困ったような目で見られた。

「そう怒らんでくれ」

「まだ何も言っておりませんが」

返事をすると、グレンは苦笑して頷く。

「言ってないが、表情にはしっかり出ておる。おはよう、アオイ君」

「おはようございます。グレン学長」

遅まきに朝の挨拶を交わした。すると、さっそくで悪いがと言ってグレンは何かの書状を取り出す。

「アオイ君の噂は既に各国に知れ渡っておる。特に、六大国にはしっかりとな。しかし、最も遠い場所にあるドワーフの国、グランサンズ王国には少し曖昧な噂として届いておるようじゃ」

「グランサンズ王国? エライザさんの出身国のですか?」

書状を広げるグレンに首を傾げながら返事をすると、曖昧な首肯が返ってきた。

「うむ。まぁ、グランサンズは六大国の中では最も魔術の発展が遅く、代わりに様々な道具を発明しておる国じゃからな。興味が薄いのも理由の一つかもしれんの……と、これじゃ」

書状の中身をじっくりと確認したグレンは、ある一点を指さしながらこちらを見る。

「グランサンズ王が、アオイ君に興味を持っておる。本当にそんな噂になるような実力があるのか、実際に見たいということじゃろう。良い年齢じゃが、子供のように好奇心旺盛でな。わしが学長となった時も実力を見たいといって聞かなかったものじゃ。六大国が共同で出資するという話じゃったから、それを納得する為にも、ということじゃろうがな」

苦笑しながら、グレンはそう言った。

「実力を見せる、とは……発表を見るだけではダメということですか?」

聞き返すと、グレンは顎髭を撫でながら頷く。

「グランサンズ王国といえば最上級の武器や防具の製作で有名じゃ。不思議なことに、そこで作られたミスリルの盾などは様々な魔術を跳ね返してしまうほどの逸品での。全身鎧など着ていたら炎に包まれても簡単には死なん。グランサンズ王は最強の武具や防具を使い、アオイ君の魔術を試すつもりじゃろうな」

「それは……私の魔術を実際に受ける、と?」

正気だろうか。思わず懐疑的な視線でグレンを見てしまう。それに溜め息を吐き、グレンは首を左右に振った。

「アオイ君も聞いておるかもしれんが、グランサンズでは魔術師の価値は他国に比べると高くない。何故なら、魔術大国との争いでも、その強大な武具の力で真っ向から対抗してきたからじゃ。その歴史背景があるからこそ、今回のアオイ君の噂を利用したいと考えているじゃろう」

「私を利用?」

聞き返すと、グレンは深く頷く。

「正直、アオイ君の噂は各国に知れ渡っておる。どの国も実力のある魔術師の所在は重要な情報じゃからの。その各国が注目するアオイ君の魔術を、完膚なきまでに防ぐことができたら……」

「他の国に対して、武器や防具の宣伝になる?」

「その通りじゃ」

やれやれといった様子で答えて、グレンは肩を竦める。私はそれに口の端を上げて笑った。

「それほどの自信がある武具……とても面白いですね。興味が湧きました」

独り言のようにそう呟くと、グレンが「ゲッ」とカエルの鳴き声に似た声を発した。

「ま、待つのじゃ、アオイ君! さっき言った通り、グランサンズには曖昧にアオイ君の噂が届いておるようなんじゃ! まさか、噂よりもヤバい魔術師だとは思っておらん!」

「ヤバいという表現には語弊があります」

「申し訳ない!」

グレンは謝ると、立ち上がって書状を机に置く。

「どの国の王も自国の利益を一番に考えておる。グランサンズ王が学院の行事を通じて各国に宣伝したいという気持ちも仕方がないと言えるじゃろう」

「それは王様の都合です。それなら、私がグランサンズ王国の最高傑作の実力を試しても問題はないでしょう」

「問題があるように思えるんじゃが……!?」

私の意見にグレンがギョッとした顔になった。

「冗談です。さて、グランサンズ王の話はさておき、エライザさんの発表が午後からです。ちょっと様子を見に行ってきます」

「まだ五時間もあるぞい」

「エライザさんのことですから、多分準備物の再確認をしていると思います」

「真面目じゃのう」

そんなやり取りをして、私は学長室を後にする。確か、午前中は私が助言した教員が一人発表をする筈である。

エライザと同じ会場だった気がするので、あわせて見学もしてみよう。そして、夕方のラストはスペイサイドの水の魔術の発表である。こちらはお手伝いを買って出たので、一時間前には行って準備をしなくてはならない。

意外と忙しいぞ。

私はそんなことを思いながら、少し歩く速度を上げたのだった。